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神隠し ~蛭子神社の怪異~  作者: 船橋新太郎
第1章・和都歴450年 7~8月 ~灰谷 墨子編~
12/23

第1章・10幕 裏取引

今回の登場人物


■ ▢ ■ ▢


◎黄田組


・大胡田 意満 (おおこたおきみつ)

黄田組の若頭補佐。悪どい手口でも結果を出して出世するタイプ。巨漢で、素手の格闘を好む。黄色の法被に黒の股引きを履く。


・新堂 玲 (しんどうれい)

黄田組の一員。神奈備の貧民の出自。蓮太らと同じ歳でありながら、寺院に行かず、黄田組の使いから活躍し、大胡田の弟分として活動。寺院には行かずとも、書物など独学で知識を学び、知性的でもある。漆黒の装束で、ワイルドな風貌ながらイケメンで、ハスキーボイス。


ーーー


・吉田 健右衛門 (よしだけんうえもん)

蛭子里の官人の1人。現状、一番経験が豊富な故、官人所役・神奈備支部からの信用も厚い。表向きは、その役職から紳士的で礼節を知る男として里でも名声があるが…



■ ▢ ■ ▢




【前回までのあらすじ】


蛭子里に住む墨子は、山菜採りに北の森へと向かった、旦那・朝友と幼馴染・喜朗に合流する為、北の森へ、息子・美継と向かう。

森で、朝友と合流するも、喜朗の姿は見えない。

時間を掛けても喜朗の姿は見えなかった。神主・神籬すら見つからず、一旦帰宅をする。


明くる日、黄田組が統治の名目で重税を徴収しに来ると、朝友は、灰谷家の分を出す。

黄田組は、次に向かう先は水戸部家。雅代が襲われそうになるところを助けるが、妙に恋心を抱かれる。

朝友は、喜朗・捜索の前に、時常と交わる雅代を見る。その際に、雅代の幸せの為にも、喜朗・捜索をしようと心に決めるが、時常は雅代を失うことに堪え切れず、喜朗・殺害を企てる。

朝友より早く、神社へと赴き、喜朗を探す時常に、不気味な息遣いの何者かが迫る。

翌日、時常が帰らない事に、不安を抱く凛。

里の皆、墨子と朝友、勝巳らを交えて話していると、黄田組の重税に苦しむ秀忠が現れる。今直ぐにでも黄田組と神籬に、話をつけたいと憤る秀忠に、健右衛門が、官人として黄田組へ向かう。

秀忠は、勝巳に焚き付けられるように皆の反対を他所に、神社へと向かっていってしまう。

秀忠は、神社へと着くと、社務所の和室まで入るも、入り口に気配を感じると、その後、行方不明となる。

その頃、健右衛門は、黄田組へと赴き、重税の件で交渉に来ていた・・・



「あ?客人?誰だ?」

大胡田は身を乗り出す。

「里の官人で、吉田…健右衛門とかいう男でして。」

新堂がそう説明するとーー


「…ここが、黄田組の集会所…か。」

ーー応接間に座る健右衛門は、微笑んでみせる。

◎和都歴450年 7月14日

置田村・神奈備・黄田組集会所・応接間 10時


「お待たせ致しました。どうぞお掛けのままで。」

大胡田が座って待っていた健右衛門に気を遣い、応接間へと入ってくると、続いて新堂もやってくる。


「さてと。私は黄田組の大胡田といいます。新堂から聞きましたが、何でも蛭子里の官人の方だそうで?」

大胡田が挨拶を交わす。

「これはどうも。蛭子里の駐在官人かつ住人の、吉田健右衛門と申します。」

健右衛門は丁寧に返す。

「ご用件は、蛭子神社の事とお聞きしました。」

「はい。」

「我々も蛭子里へ手を伸ばすのは初めてでして、若い者に挨拶をと、里へ行かせたんですが。」

「ええ。見ヶ〆(みかじめ)料に、食料から名品を要求されて、官人としてはメンツ丸潰れでしたよ。」

健右衛門は、首を横に振る。

「ハハハ、そうでしたかー」

優しく笑うも、一転して険しい顔をする大胡田。

「ーでも、うちらもナメられちゃいけない商売だ。健右衛門さん、アンタならわかるだろ?」

大胡田は、健右衛門の視線を逃がさない。

「僕も本置田で研修を受けた身。野蛮組織が何たるか、は理解しています。」

「ほう。ならばその上で、本題に入ろうか。」

大胡田が、湯呑みの茶を一気にのみ干す。

「実は、里とは別に、神社へは私の兄貴分、町田という男に挨拶へ向かわせましてね。」

「ほう、その町田、という方は、今は何処に居られますか?」

「…」

健右衛門の話に、大胡田と新堂は顔を見合わせる。

「その聞き方は、里でも何かあの神社について問題が?」

新堂が返答する。

「ええ。」

「吉田さん?アンタの神社についての相談の中に、副顧問の神籬に会う方法も、こちらからは追加したい。」

大胡田が鋭い視線で話す。

「…それはこちらからも願ってもない。久しく神籬さんと話した者はいない。」

健右衛門も微笑んで返す。


「ーよし、決まりだ。」

大胡田は立ち上がる。

「先程、組長と話し、その件を含め、里、神社に関する事は、この新堂に任せることになった。何かあれば、この新堂に伝えて下さい。」

大胡田が新堂の肩に手を置く。

「宜しくお願いします。」

新堂が頭を下げる。

「フフ…こちらこそ、宜しく頼みますよ?」

健右衛門も頭を下げる。

「新堂、後は頼むな?」

「はい。」

そう言って、大胡田は応接間を出ていく。


「さて、先程の質問に答えます。神社へ挨拶へ向かった町田のアニキは、足取りが掴めません。今から我々も何人かで神社へ向かうところでして。」

新堂が状況を説明する。

「そうでしたか。もし、それが事実であれば、黄田組の名誉を、僕が里で広めます。」

「貢献的ですね?何か見返りを?」

「フッフッフッ…まぁ…ねぇ?その代わりと言っては難ですが、見ヶ〆料の方を少し…」

「…まあ、広告費として考えておきましょう。」

「あぁ…ワガママついでに1つお願いがございましてね?」

「…何でしょうか?」


ー…


「別に、うちとしては構いませんが…」

「ありがとうございます。」

そう言って健右衛門は席を立つ。

「あ、送りますよ。ところで吉田さん?貴方、官人でしたよね?」

新堂が引っ掛かる言い方をする。

「何か?」

「いえ。玄関へ参りましょう。」


ーザァァァ…


依然、雨が降り続ける中、玄関で健右衛門を見送る新堂。


「では、よしなに…」

そう言って笠を被り、雨の中を歩いていく健右衛門。

その後ろ姿に、頭を下げて見送る新堂。

(あの男、ケダモノの香りがスゴいな。)

新堂は、頭を下げながら、そう感じた。

次回2026/9/22(火) 18:00~

「第1章・11幕 羽芝霞の偵察任務」を投稿予定です。

   

※8/21(月)~8/23(水)はSW・強化月間です。

期間中は毎日18:00に投稿致しますので、御期待下さい。


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