第1章・9幕 闇の貴公子
今回の登場人物
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◎灰谷家
・灰谷 墨子 (はいたにすみこ)
蛭子里の生まれで、朝友と喜朗とは幼馴染。母子家庭だったが、半年前の冬に母と姉が行方不明となり、灰谷家へと嫁ぐ。非力だが賢く、里でも若く美人との噂。
・灰谷 朝友 (はいたにあさとも)
墨子と喜郎の幼馴染みで、墨子の旦那。墨子の境遇を想い、結婚に至る。里に小さいながらも畑を管理している。里でも良好なイケメン男子で通る。
◎里の住人
・三条 勝巳 (さんじょうかつみ)
本編・三条勝太郎の実父。妻と勝太郎を捨てた後、何故か蛭子里へと流れ着く。里では近代的な男前、と評判だが、裏の顔は好色と貪欲の悪人。
・吉田 健右衛門 (よしだけんうえもん)
蛭子里の官人の1人。現状、一番経験が豊富な故、官人所役・神奈備支部からの信用も厚い。紳士的で礼節を知る男として里でも名声がある。
・吉崎 凛 (よしざきりん)
時常の嫁で、吉崎家の令嬢。育ちの良さを醸し出す桜色の着物と、簪で長い髪を結う。豊満な胸元と、口元のホクロが印象的。
・横尾 秀忠 (よこおひでただ)
木細工職人。昨年で親を両方亡くし、一人で逞しく生計を立ててきた。生きるために必死で、里の皆の為にも必死になる熱い男。手拭いを頭に巻く、如何にもな職人。
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【前回までのあらすじ】
蛭子里に住む墨子は、山菜採りに北の森へと向かった、旦那・朝友と幼馴染・喜朗に合流する為、北の森へ、息子・美継と向かう。
森で、朝友と合流するも、喜朗の姿は見えない。
美継の姿も消えてしまうと、墨子は探し回る内に蛭子神社へと辿り着くと同時に美継を発見。
彼は喜朗を見たというも、時間を掛けても神主・神籬すら見つからず、一旦帰宅をする。
墨子らが健右衛門と雅代の関係を疑いながら、帰宅すると、朝友はその件は保留にした。そして翌日に、神社へ喜朗を探しに行くと二人を安心させた。
一方、夜九時に、良からぬ企みをする勝巳は、灰谷家へと向かうが、健右衛門が訪ねてくると、その企みは失敗する。
その頃、雅代の元を訪ねる朝友は、寂しそうな雅代に一線を越えてしまう。
明くる日、黄田組が統治の名目で重税を徴収しに来ると、朝友は、灰谷家の分を出す。
黄田組は、次に向かう先は水戸部家。雅代が襲われそうになるところを助けるが、妙に恋心を抱かれる。朝友は、喜朗・捜索の前に、雅代の家に寄るが、時常と交わる雅代を見る。
雅代の幸せの為にも、喜朗・捜索をしようと心に決めるが、時常は雅代を失うことに堪え切れず、喜朗・殺害を企てる。
朝友より早く、神社へと赴き、喜朗を探す時常に、不気味な息遣いの何者かが迫る。
翌日、時常が帰らない事に、不安を抱く凛。
里の皆、墨子と朝友、勝巳らを交えて話していると、黄田組の重税に苦しむ秀忠が現れる。今直ぐにでも黄田組と神籬に、話をつけたいと憤る秀忠に、健右衛門が、官人として黄田組へ向かう。
秀忠は、勝巳に焚き付けられるように皆の反対を他所に、神社へと向かっていってしまうのだった・・・
「勝巳さん…何故、余計なことを!」
朝友が怒る。
「余計なこと?本当の事を言っただけだ。寧ろ、秀忠が危険に鈍感なだけだろ?」
勝巳は立ち上がる。
「だからって…あんなこと言えば、神社に向かうだろう!」
「あ~うるせえ…!だったらお前も助けに行ってこいや?アホらしい…!!」
勝巳はそう吐き捨てると、吉崎家を出ていく。
「凛、時常さんは明日、俺が探しに行く。」
朝友が凛に寄り添う。
「…秀忠さんが…直ぐにでも探してきてくれると良いけど…」
凛は、涙を拭くと、奥の部屋へと去ってしまう。
「…」
朝友と墨子も、しばらくすると、家へと帰った。
◎和都歴450年 7月14日
置田村・神奈備・黄田組集会所 10時
ーザァァァ…
健右衛門が全身濡れた姿で黄田組集会所の前に立ち尽くしていた。
「さて、どうするかな…」
そう呟きながら、健右衛門はケダモノの様に微笑む。
◎蛭子神社
ーザァァァ…
「…つ、着いた..ぞ。」
秀忠は、雨の中、鳥居と随神門を抜け、神橋を渡り、本殿へと歩み寄る。
「神籬さ~ん…」
ーザァァァ…
「誰も...居ないのか?」
白昼とはいえ、雨音が支配する蛭子神社に、少し不気味さを感じる秀忠。
ーガタッ!
「はっ!?」
社務所の方から何か音がした。
「誰か…誰かいるのか?」
恐る恐る社務所へと近づく秀忠。
ーキィィ…
扉が半開きになったまま、音を立てている。
「おーい、神籬さん?居ないのか?」
秀忠は、社務所の中へと入る。
「時常さ~ん?いないか?」
秀忠は和室に入る。
「…確か…若い2人はここで熊に…」
2人の遺体は裸で見つかり、その最中に襲われたことは、里の誰もが察していた。
「…ちっ…イイ思いしやがった天罰だろうよ…俺だって…墨子さんのような…」
ーガタッ!
「ひっ!?…やっぱり誰かいるのか?」
玄関の方で音がする。
恐る恐る社務所の玄関へと戻る。
「神籬さん…なのか?」
秀忠は玄関から外へ出る。
「ー!?」
◎和都歴450年 7月14日
置田村・神奈備・黄田組集会所 10時前
ーザァァァ…
一方その頃、雨が降る天候の中、黄田組集会所でも、問題が起こっていた。
「そういや、大胡田よ。町田の奴に、蛭子神社にいる神籬、とかいうヤツに、挨拶に行かせたのにまだ戻らんのか?」
黄田 八太郎。黄田組・組長。赤島会から副統括の神籬の監視を命令され、そこに一定の人員を割くよう命令されているが、本人は組の力を付ける事に躍起。昔気質の横柄な崩れ者で、狡猾。生き残るためには家すらも売る薄情さを持つ。
黄田がしかめっ面をする。
「はい、町田のアニキは、昨日から音沙汰無く、今から里の連中に話を聞こうかと。」
大胡田 意満。黄田組の若頭補佐。悪どい手口でも結果を出して出世するタイプ。巨漢で、素手の格闘を好む。黄色の法被に黒の股引きを履く。
「そうか…神籬は神奈備地区・副顧問。儂らと裏で組む方が得策だと分かるくらいの金、送り付けてやったのに…まさか町田の奴、ヤられたんじゃないだろうな?」
「アニキに限って、まさか。」
「これからの赤島会、いや、黄田組を弱小と言わせんように、他にも手を考える。」
「黛村の双子との件、ですね?」
大胡田が尋ねると、黙って頷く黄田。
「お前にも少し動いて貰う。神籬の件は、誰か使えそうなのに任せて、お前は手を空けとけ。神籬を監視するのに手を割け、だなんて、赤島さんも勝手が過ぎる。」
黄田が饅頭を食いながら話す。
「わかりました。新堂に任せます。」
「新堂?あんな拾ってきたガキで大丈夫か?」
「ええ。若いですが、切れ者で優秀です。八俣や神奈備の悪ガキらからは、❝闇の貴公子❞なんて尊敬されているそうですよ。まったく、あの若さで良い身分です。」
大胡田が席を立つ。
「たしかに、あいつはどこか普通のガキとは違う。黄田組でも逸材とはいえるな。わかった、お前、面倒見てやれ。」
「はい。」
黄田がそういうと、大胡田は1つ返事を返し、自分の部屋へと向かう。
「大胡田さん。」
「おお、新堂か、丁度探してたんだ。」
「あ、そうなんですか?私もです。蛭子神社の件で客人が来てまして…通しますか?」
新堂 玲。黄田組の一員。神奈備の貧民の出自。蓮太らと同じ歳でありながら、寺院に行かず、黄田組の使いから活躍し、大胡田の弟分として活動。寺院には行かずとも、書物など独学で知識を学び、知性的でもある。漆黒の装束で、ワイルドな風貌ながらイケメンで、ハスキーボイス。
「あ?客人?誰だ?」
大胡田は身を乗り出す。
「里の官人で、吉田…健右衛門とかいう男でして。」
新堂がそう説明するとーー
「…ここが、黄田組の集会所…か。」
ーー応接間に座る健右衛門は、微笑んでみせる。
次回2026/9/21(月) 18:00~
「第1章・10幕 裏取引」を投稿予定です。
※9/21(月)~9/23(水)はSW・強化月間です。
期間中は毎日18:00に投稿致しますので、御期待下さい。




