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大谷どん吉の超・ソウサク記   作者: 御王礼
第一章『ミラーマンと俺‼』

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9/10

第一章8『 「エミリー‼」と俺‼』

「――正直言って、こんな気持は初めてです。どん吉君……わ、私とお付き合いしてくれませんか?」


「……はぁ?」


 広さ三五平方メートルほどの小さな補修教室。室内にいるのは俺と木村エミリーの二人きりだ。  

唐突なエミリーの告白に度肝を抜かれた俺は、赤点の答案用紙に向かっていた手からシャーペンを取り落とした。


「――ハハッ、何の冗談だ?そんなことよりも早く漫画の続きを描きたいから、この問題の解き方を教えてもらってもいいか?」


 ミラーマンの一件以来、彼女は俺を怖がっているのだとばかり思っていたが、どうやら見当違いだったようだ。


 床からシャーペンを拾い上げ、俺はそれで答案用紙の未解答欄を指し示す。  


 本校では、補修対象となったテストで満点を取るまで再テストを受け続けなければならない。

 創作中の少年漫画を進めたい俺にとって、それはひどくじれったい足かせだった。


「再テストについては、私が上手く藤田先生に手回しをしますので心配しなくても大丈夫です。ですから、今は私の気持ちに答えていただけないでしょうか?」


 エミリーは見たこともないほど顔を赤らめ、真摯な眼差しを俺に注いでいた。やはり、ミラーマンの件で俺に恐怖心を抱いていたわけではなかったのだ。


「おいおい、ちょっと待てよ。俺と木村さんは長い付き合いじゃないよな。ましてはミラーマンの一件で一緒だったくらいの関係だよな。もしかして親父に言われたのか?」


 俺の親父、大谷シロウはブラックリストハンター界隈で知らぬ者のない大物だ。その父親の指示で接近してきたに違いない。


 そう考えると、目の前の少女に対し、どうしようもない嫌悪感が湧き上がってくる。


「確かに……初めて、どん吉君に近づいたきっかけはシロウさんの指示でした。けど、自分でもよく分からないのですが先日のどん吉君の活躍を見て、カッコい……今までにない胸のときめきを感じたんです‼」


 エミリーは珍しく言葉を詰まらせ、自らの胸に手を当てながら心情を吐露した。


「冗談は辞めてくれ!傍から見れば俺みたいな漫画オタク、普通の女なら興味を示すなんてありえないんだよ。あと、俺には既に想いを寄せている人がいるんだよ」


 俺はエミリーから視線を外し、柄にもなく照れながら言い放つ。脳裏に浮かぶのは、文芸部長である佐々木マキの姿だった。


「――だ、誰ですか?その……思いを寄せている人っていうのは‼️既に、付き合っているのですか‼」


 エミリーは俺の肩を両手で掴み、強い口調で問い詰めてくる。俺はその手を乱暴に振り払った。


「付き合ってはいない。俺の一方的な片思いだ。てか、何で俺がエミリーに、そんな大事なことを教えないといけないんだよ!」


「確かに……そうですよね。失礼なことを聞いて申し訳ございません。ですが、どん吉が惚れるほどの相手を知らなければ私は不完全燃焼で場合によっては自害するかもしれません。ですから、誰にも言いませんから、その方の名前を教えていただいてもよろしいでしょうか?」


「ええっ⁉女ってそういうものなのか?俺が原因でなんかリストカットみたいなことされても困るし……」


「あの……ダメですか?」


「……やれやれ、誰にも言うなよ!実は俺、ずっと前から部長……佐々木マキさんの事が好きなんだ」


 時折、泣き出しそうな表情を見せるエミリーに気圧され、俺はとうとう、長年想い続けてきた文芸部長の名前を口にしてしまった。


「へえ~、前から部長さんのこと気になっていたんですね。だったら私は、どん吉君にとって佐々木さん以上の存在に、これからなってみせます!」


 エミリーは俺の目の前で高らかにそう宣言すると、さらに言葉を続けた。


「だから、部長さん!貴方より先に、どん吉君の心を奪います。覚悟してくださいね!」


 エミリーが俺の背後を指差す。慌てて振り返ると、補修室の扉がわずかに開き、その隙間から佐々木マキがこちらを覗いていた。


「――ええ?部長、いつからそこに?もしかして、話を全て聞いていたんですか⁉」


「わ、私は何も聞いていないわよ。ただ、偶然に補修室の前を通りかかっただけ……ああそうだわ、今日は編集者とネームの打ち合わせをする日だったわ!じゃあ、また……部活で逢いましょう。さようならっ‼」


 ひどく動揺した様子の部長は、勢いよく扉を閉めると、足早に去っていった。


「おい、エミリー‼やってくれたな。せっかく、部長とは最近になっていい感じだったのに……これじゃあ、暫くの間は口を利いてもらえないかもしれないじゃね―かよ‼」


 女性経験に乏しい俺は、自分に好意を向けさせようとするエミリーの策略に、まんまと嵌められたことに気づく。


「やっと、私のことを呼び捨てで呼んでくれましたね。少しは気になってくれたと受け取ってもいいですよね❤」


 エミリーはあざとく右目でウインクを寄越し、満足げな笑みを浮かべる。  

この日を境に、俺は木村エミリーを「エミリー‼」と呼び捨てにするようになった。



一応、第一章はここまでです。次にアナザーストーリーを入れてから、第二章に入っていきたいと思います。宜しくお願い致します!

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