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大谷どん吉の超・ソウサク記   作者: 御王礼
第一章『ミラーマンと俺‼』

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第一章4『 パストテレビと俺‼』

パストテレビの画面に、とあるアパートの一室が映し出されていた。


『……もう一度、僕と手を組まないかい。別に、悪い話じゃない筈だよ』


窓のないその部屋で、一人の青年がソファに横たわる女性に語りかけている。

青年は背広を身にまとい、手配書にも描かれている特徴的な灰色の髪をしていた。

ボイスチェンジャーが内蔵された特殊な狐のマスクで顔を覆い、その奥から低い声を発している。


――彼こそが笹倉イカツだ。


笹倉の視線の先には、黒いソファに赤いワンピース姿で身を横たえる松丘ユリナがいた。彼女は片手にワイングラスを持っている。


『私がミラーマンだって証拠を突きつけて脅しているのね?流石は平気で人殺しをする手配犯なだけあるわね。汚い遣り口だわ……』


松丘ユリナは苦笑を浮かべ、そのセリフを言い終えるとグラスの赤ワインを一気に飲み干した。


『汚いなんて心外だな。君だって、これまでに自分の気に入らないアイドルたちを盗撮したうえに被害者ぶって知名度を上げようとしてきたじゃないか。それに今回の作戦は、僕はハンター共を根絶やしにできるし、君は二度目の被害者になって悲劇のヒロインを演じる事によって芸能人として知名度を上げることができるね。これは互いにとってウィン・ウィンの関係だとは思わないかい?』


二人の会話から、笹倉が話している計画の内容が窺える。それは後に、七月三十一日のライブ開催のきっかけとなる犯行声明付き予告状を送る計画なのだろう。


表情一つ変えずに不気味な笑みで詰め寄ってくる笹倉に、松丘ユリナは溜息をついて言い返した。


『いいわよ。また計画通りに私が人質となって、最後に私の鏡の中を自由自在に通り抜けられる能力《ミラーミラー(異空間鏡)》でアンタを逃がせばいいのね』


笹倉から目をそらし、酔いが回ってきたのか頬を赤らめながら、松丘ユリナは気だるげに答えた。


『ハハハッ、話が早くて助かるよ。何度も言っていることだが今は君の迫真のミラーマンの被害者としての演技でハンターたちはできるだけ多く雇っておいてくれよ。じゃあ、また七月三一日に人質として会おうね』


何が彼の笑いの琴線に触れたのか、笹倉イカツは手を叩いて爆笑すると、部屋を後にしようと松丘ユリナに背を向けて歩き出した。


『……ああそうだ、そうだ!』


三歩ほど進んだところで笹倉は足を止め、振り返って問いを投げかけた。


『少し気になっていたのだけれど僕が今回と同じ手口で数年前に殺った中年ハンターのおっさんって、君の義理の父親だったみたいだけど本当に良かったのかな?』


笹倉の問いかけに、松丘ユリナは鼻で笑って応じる。


『ああ、ヒトシ叔父さんのことね。特に、気にしていないわよ。だって、あの人は一応プロのハンターで金持ちそうだったから近づいただけだから。養子縁組で甘えにいって親権を取ると言わせるまでには苦労したけど、結果的に叔父さんの遺産は私のものになるわけだから……むしろ、アンタには感謝したいくらいよ』


一連のやり取りは、過去に二人が共謀して松丘ヒトシを含むハンターたちを殺害した事実を匂わせていた。


しかし、俺――大谷どん吉には、松丘ユリナがアイドルとして売れるためという動機だけで、ミラーマンとして凶行を重ねる理由が腑に落ちなかった。


だが、どん吉の抱いた疑問は、彼女が次に放った一言によって氷解した。


『それに私がミラーマンである証拠をアンタのよくわからない能力?で隠してくれたことにも本当に感謝しているわ。私、昔から顔がブサイクで学校でもいじめられていたの。だから整形を繰り返して周囲を見返してやろうとしていたけど……世の中には生まれ持っての美形のアイドルの子っているわよね。私のように金を使ったわけでもなく、努力もなにもしていないのにチヤホヤされている奴っているわよね!だからね、私は薬を使って力を手に入れて天才肌のアイドルたちに精神的なショックをあたえてSNSに晒してやろうと思ったの‼世の理不尽さを少しでも解消してあげようとしただけよ』


映像の中の松丘ユリナは、時折口調を荒げながらも悪びれる様子もなく、被害者たちを嘲笑っていた。


『なるほど、君も僕と同様に世間には到底理解できない思想を持っているようだね。まあ、どのみち利害が一致しているわけだから協力するしかないわけだけど。じゃあ、決行日までに精々ハンター共を騙しておいてくれ。よろしく!』


――バン‼


突如として放たれた銃弾がパストテレビを破壊し、映像は笹倉の言葉を最後に途絶えた。

俺とエミリーは、破壊されたテレビから視線を外し、慌てて背後を振り向いた。


視線の先には、松丘ユリナが立っていた。彼女は超能力を使い、(※警察署から押収したと思われる)小型拳銃『ルガーLC9s』を手鏡の中から取り出している。


右手に握られた拳銃の銃口からは、発砲直後の薄い硝煙が立ち上っていた。


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