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一年の宝物  作者: ゆみ。
32/37

揺らぐ記憶と、笑顔の君

チャイムが鳴り、教室がざわつき始めた頃。


理人は、翔太と日向、そして颯・健斗・香奈・優里・雫華のグループに近づいた。


理人:「なあ、今日さ……翔太の家、行かない?」


翔太は驚いたように目を丸くした。


翔太:「え、なんで俺ん家?」


理人は肩をすくめ、

あくまで“自然に”言った。


理人:「中学の卒アル、翔太の家にあるだろ?

ちょっと見たいんだよ。

みんなで見たら面白いかなって」


颯がすぐに食いつく。


颯:「あー! それいいじゃん!

俺、翔太の中学時代の黒歴史見たい!」


健斗:「お前の方が黒歴史多いだろ」


女子たちも盛り上がる。


香奈:「見たい見たい! 翔太の中学時代!」


優里:「日向ちゃんのも気になります……」


日向:「ちょ、やめてよ……!」


雫華は少し笑いながらも、

翔太の方をちらりと見た。


翔太は苦笑しつつも、

断る理由がなくなっていた。


翔太:「……まあ、いいけど。

散らかってても知らないぞ」


こうして、

“自然な流れ”で翔太の家に行くことが決まった。


理人は、心の中でそっと息をついた。



--


翔太の家のリビングは、

放課後の高校生たちの声でいっぱいだった。


颯と健斗はお菓子をつまみながら騒ぎ、

香奈と優里は日向の中学時代の髪型を見て盛り上がり、

雫華は少し照れたように笑っている。


理人は、みんなの輪の中にいながらも、

どこか静かに様子を見ていた。


(……この流れなら、自然にいける)


そう思いながら。


---


翔太が卒アルをテーブルに置くと、

みんなが一斉に身を乗り出した。


**颯**:「翔太、1年の時の髪型ダサっ!いまのイケメン男子の面影もないなー」


**翔太**:「うるせぇ!」


**香奈**:「日向、昔からおしゃれだよね」


**日向**:「やめてってば……!」


ページをめくるたびに、

笑い声が弾ける。


翔太も日向も、

みんなの楽しそうな声に釣られて笑っていた。


そのとき――


理人が、ふとテーブルの端に目を向けた。


---


少し古びた薄い冊子が挟まっていた。


表紙には、

「○○幼稚園 思い出アルバム」

と書かれている。


理人は、あくまで自然に言った。


**理人**:「あれ、翔太。 これ……幼稚園の写真集?」


翔太は「ああ、それか」と軽く笑った。


**翔太**:「母さんが勝手に置いたんだよ。

懐かしいけど、もう見てないな」


颯がすぐに食いつく。


**颯**:「見ようぜ! 絶対おもしろいって!」


**香奈**:「見たい見たい!」


**日向**:「えっ……幼稚園……?」


日向の声が、ほんの少しだけ揺れた。


理人は、その揺れを見逃さなかった。


---


翔太が写真集を開くと、

ページいっぱいに小さな子どもたちの笑顔が広がった。


砂場で遊ぶ子。

運動会で走る子。

泣いて先生に抱きつく子。


そして――


翔太:「……あれ?」


翔太の指が、ある写真の上で止まった。


そこには、

砂場で泣いている黒髪の女の子と、

その手を握っている小さな男の子、

そして、

その前に立って誰かをかばうように腕を広げている

小柄な女の子が写っていた。


日向:「……これ……」


日向の声が震えた。


胸の奥が、

熱くなるような、痛むような感覚。


翔太も、

写真の中の“黒髪の女の子”から目を離せなかった。


(……誰だ?

でも……知ってる気がする)


心の奥がざわつく。


雫華がそっと呟いた。


雫華:「……千景さんに、似てる……」


その瞬間、

翔太と日向の胸が、

強く脈打った。


---


二人の表情の変化を静かに見つめていた。


(……気づき始めた)


千景の涙も、

幼い頃の約束も、

二人の胸の奥に眠っていた記憶も。


すべてが、

ゆっくりと繋がり始めている。


理人は何も言わない。

ただ、そっとページをめくる翔太の手を見守っていた。


---

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