揺らぐ記憶と、笑顔の君
チャイムが鳴り、教室がざわつき始めた頃。
理人は、翔太と日向、そして颯・健斗・香奈・優里・雫華のグループに近づいた。
理人:「なあ、今日さ……翔太の家、行かない?」
翔太は驚いたように目を丸くした。
翔太:「え、なんで俺ん家?」
理人は肩をすくめ、
あくまで“自然に”言った。
理人:「中学の卒アル、翔太の家にあるだろ?
ちょっと見たいんだよ。
みんなで見たら面白いかなって」
颯がすぐに食いつく。
颯:「あー! それいいじゃん!
俺、翔太の中学時代の黒歴史見たい!」
健斗:「お前の方が黒歴史多いだろ」
女子たちも盛り上がる。
香奈:「見たい見たい! 翔太の中学時代!」
優里:「日向ちゃんのも気になります……」
日向:「ちょ、やめてよ……!」
雫華は少し笑いながらも、
翔太の方をちらりと見た。
翔太は苦笑しつつも、
断る理由がなくなっていた。
翔太:「……まあ、いいけど。
散らかってても知らないぞ」
こうして、
“自然な流れ”で翔太の家に行くことが決まった。
理人は、心の中でそっと息をついた。
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翔太の家のリビングは、
放課後の高校生たちの声でいっぱいだった。
颯と健斗はお菓子をつまみながら騒ぎ、
香奈と優里は日向の中学時代の髪型を見て盛り上がり、
雫華は少し照れたように笑っている。
理人は、みんなの輪の中にいながらも、
どこか静かに様子を見ていた。
(……この流れなら、自然にいける)
そう思いながら。
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翔太が卒アルをテーブルに置くと、
みんなが一斉に身を乗り出した。
**颯**:「翔太、1年の時の髪型ダサっ!いまのイケメン男子の面影もないなー」
**翔太**:「うるせぇ!」
**香奈**:「日向、昔からおしゃれだよね」
**日向**:「やめてってば……!」
ページをめくるたびに、
笑い声が弾ける。
翔太も日向も、
みんなの楽しそうな声に釣られて笑っていた。
そのとき――
理人が、ふとテーブルの端に目を向けた。
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少し古びた薄い冊子が挟まっていた。
表紙には、
「○○幼稚園 思い出アルバム」
と書かれている。
理人は、あくまで自然に言った。
**理人**:「あれ、翔太。 これ……幼稚園の写真集?」
翔太は「ああ、それか」と軽く笑った。
**翔太**:「母さんが勝手に置いたんだよ。
懐かしいけど、もう見てないな」
颯がすぐに食いつく。
**颯**:「見ようぜ! 絶対おもしろいって!」
**香奈**:「見たい見たい!」
**日向**:「えっ……幼稚園……?」
日向の声が、ほんの少しだけ揺れた。
理人は、その揺れを見逃さなかった。
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翔太が写真集を開くと、
ページいっぱいに小さな子どもたちの笑顔が広がった。
砂場で遊ぶ子。
運動会で走る子。
泣いて先生に抱きつく子。
そして――
翔太:「……あれ?」
翔太の指が、ある写真の上で止まった。
そこには、
砂場で泣いている黒髪の女の子と、
その手を握っている小さな男の子、
そして、
その前に立って誰かをかばうように腕を広げている
小柄な女の子が写っていた。
日向:「……これ……」
日向の声が震えた。
胸の奥が、
熱くなるような、痛むような感覚。
翔太も、
写真の中の“黒髪の女の子”から目を離せなかった。
(……誰だ?
でも……知ってる気がする)
心の奥がざわつく。
雫華がそっと呟いた。
雫華:「……千景さんに、似てる……」
その瞬間、
翔太と日向の胸が、
強く脈打った。
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二人の表情の変化を静かに見つめていた。
(……気づき始めた)
千景の涙も、
幼い頃の約束も、
二人の胸の奥に眠っていた記憶も。
すべてが、
ゆっくりと繋がり始めている。
理人は何も言わない。
ただ、そっとページをめくる翔太の手を見守っていた。
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