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一年の宝物  作者: ゆみ。
27/37

新しい、きれいな子

夏休みが終わり、A組の教室には久しぶりの制服の音が戻ってきた。


翔太は、席に座ったままぼんやり窓の外を見ていた。


(……ふられてから、まだ一週間か)


胸の痛みは薄れない。

雫華とは普通に話せるようになったけれど、

どこかぎこちない距離が残っていた。


そんな中、教室の空気がざわつき始めた。


**颯**:「おい、今日編入生来るってよ!」


**日向**:「え、マジ? この時期に?」


**香奈**:「しかも女子らしい」


教室が一気に騒がしくなる。


翔太は興味なさそうにプリントをめくった。


(……別に俺には関係ないし)


しかし、このあと彼の運命を揺らす存在が現れることを、

まだ誰も知らなかった。


---


担任が入ってきて、教室が静まる。


**担任**:「えー、今日は転入生を紹介する。新しい仲間だ。

ちょっと時期はずれだが、みんな仲良くしてやってくれ!!」


教室の空気が一瞬で張りつめる。


そして――


扉が静かに開いた。


そこに立っていたのは、

真っ白な肌に、夜のように黒い髪を持つ少女だった。


細い指先、透き通るような首筋。

夏の終わりの光に照らされて、

まるで“季節の境目に迷い込んだ精霊”のようだった。


教室が息を呑む。


**担任**:「じゃあ、自己紹介を」


少女は一歩前に出て、静かに頭を下げた。


**千景**:「黒瀬くろせ千景です。 今日から、よろしくお願いします!」


その声は、鈴の音のように澄んでいた。

強さと儚さが同居する、不思議な響き。


教室中が一瞬で魅了された。


---


**颯**(小声):「やっべ……がち美人じゃん……!」


**日向**:「透明感すご……」

**香奈**:「あれは……」


雫華も思わず見とれていた。


**雫華**:「……きれいな子」


優里は胸に手を当てて、そっと呟く。


**優里**:「なんだか……儚い雰囲気の人!」


---


翔太は、最初は興味なさそうにしていた。


しかし、千景が教室を見渡した瞬間――

彼女の黒い瞳と、翔太の視線がふと重なった。


一瞬だけ、千景の表情が揺れた。


驚いたような、

懐かしさを思い出したような、

そんな微かな色。


翔太は思わず息を呑んだ。


(……なんだ、この感じ)


胸の奥が、ほんの少しだけ動いた。


失恋の痛みで固まっていた心が、

かすかに揺れた。


---


担任が言う。


**担任**:「黒瀬の席は……翔太の隣だなっ!!」


教室がざわつく。


翔太は思わず固まった。


千景は静かに歩き、翔太の隣の席に座る。


そして、小さく微笑んだ。


**千景**:「よろしくね、隣の人」


その笑顔は、どこか寂しげで、

夏の終わりの風のように儚かった。


翔太の胸が、また少しだけ揺れた。


---



雫華は、翔太と千景が隣同士になったのを見て、

胸の奥がちくりと痛んだ。


(……なんで、こんな気持ちになるんだろう)


翔太は、千景の横顔を見ながら、

自分の心の変化に戸惑っていた。


夏が終わり、

新しい季節が始まる。


そして――

三人の関係も、静かに動き出していく。

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