新しい、きれいな子
夏休みが終わり、A組の教室には久しぶりの制服の音が戻ってきた。
翔太は、席に座ったままぼんやり窓の外を見ていた。
(……ふられてから、まだ一週間か)
胸の痛みは薄れない。
雫華とは普通に話せるようになったけれど、
どこかぎこちない距離が残っていた。
そんな中、教室の空気がざわつき始めた。
**颯**:「おい、今日編入生来るってよ!」
**日向**:「え、マジ? この時期に?」
**香奈**:「しかも女子らしい」
教室が一気に騒がしくなる。
翔太は興味なさそうにプリントをめくった。
(……別に俺には関係ないし)
しかし、このあと彼の運命を揺らす存在が現れることを、
まだ誰も知らなかった。
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担任が入ってきて、教室が静まる。
**担任**:「えー、今日は転入生を紹介する。新しい仲間だ。
ちょっと時期はずれだが、みんな仲良くしてやってくれ!!」
教室の空気が一瞬で張りつめる。
そして――
扉が静かに開いた。
そこに立っていたのは、
真っ白な肌に、夜のように黒い髪を持つ少女だった。
細い指先、透き通るような首筋。
夏の終わりの光に照らされて、
まるで“季節の境目に迷い込んだ精霊”のようだった。
教室が息を呑む。
**担任**:「じゃあ、自己紹介を」
少女は一歩前に出て、静かに頭を下げた。
**千景**:「黒瀬千景です。 今日から、よろしくお願いします!」
その声は、鈴の音のように澄んでいた。
強さと儚さが同居する、不思議な響き。
教室中が一瞬で魅了された。
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**颯**(小声):「やっべ……がち美人じゃん……!」
**日向**:「透明感すご……」
**香奈**:「あれは……」
雫華も思わず見とれていた。
**雫華**:「……きれいな子」
優里は胸に手を当てて、そっと呟く。
**優里**:「なんだか……儚い雰囲気の人!」
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翔太は、最初は興味なさそうにしていた。
しかし、千景が教室を見渡した瞬間――
彼女の黒い瞳と、翔太の視線がふと重なった。
一瞬だけ、千景の表情が揺れた。
驚いたような、
懐かしさを思い出したような、
そんな微かな色。
翔太は思わず息を呑んだ。
(……なんだ、この感じ)
胸の奥が、ほんの少しだけ動いた。
失恋の痛みで固まっていた心が、
かすかに揺れた。
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担任が言う。
**担任**:「黒瀬の席は……翔太の隣だなっ!!」
教室がざわつく。
翔太は思わず固まった。
千景は静かに歩き、翔太の隣の席に座る。
そして、小さく微笑んだ。
**千景**:「よろしくね、隣の人」
その笑顔は、どこか寂しげで、
夏の終わりの風のように儚かった。
翔太の胸が、また少しだけ揺れた。
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雫華は、翔太と千景が隣同士になったのを見て、
胸の奥がちくりと痛んだ。
(……なんで、こんな気持ちになるんだろう)
翔太は、千景の横顔を見ながら、
自分の心の変化に戸惑っていた。
夏が終わり、
新しい季節が始まる。
そして――
三人の関係も、静かに動き出していく。




