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一年の宝物  作者: ゆみ。
24/37

反省文と、温度差と


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週が明けた月曜日。

翔太は、教室のドアを開ける前から胃が痛かった。


(……絶対、まだ言われる。あいつら絶対忘れてねぇ)


深呼吸して教室に入ると、案の定、颯がニヤニヤしながら寄ってきた。


**颯**:「おっす翔太。週末どうだった? “反省文”ちゃんと書いたか?」


**翔太**:「……書くわけねぇだろ。あれは理人の悪ノリだっての」


**理人**(メガネを光らせながら):「提出期限は今日の放課後だ。逃げられると思うなよ」


**翔太**:「お前、教師かよ……!」


周囲が笑いに包まれる中、翔太はそっと教室の後ろを見た。


雫華が、いつも通りの明るい笑顔で友達と話していた。


――そう、“いつも通り”だった。


(……なんでだよ。なんで普通でいられるんだよ)


翔太が勝手に意識しているだけで、雫華はまるで何もなかったかのように自然体だった。


**雫華**:「あ、翔太。おはよー!」


手を振ってくる雫華。

その笑顔は、事件前と何一つ変わらない。


翔太は一瞬固まった。


**翔太**:「……お、おう。おはよ」


(なんで普通に話せるんだよ……! 俺だけバカみたいじゃん……!)


---



休み時間。

翔太が机に突っ伏していると、雫華がプリントを持って近づいてきた。


**雫華**:「ねえ翔太、これ今日の課題だって。先生が配ってたよ」


**翔太**:「あ、ああ……サンキュ」


雫華はひょいっと翔太の机に身を乗り出す。


**雫華**:「ねえねえ、今日の放課後さ、図書室で一緒にやらない? 数学わかんないとこあるんだよね〜」


翔太は一瞬で固まった。


(近い……! いや、近いって……!)


しかし雫華はまるで気にしていない。


**雫華**:「あ、そうだ。昨日さ、家で問題解いてたらさ――」


翔太の心臓はバクバクなのに、雫華は完全に“平常運転”だった。


そこへ香奈が通りかかり、呆れたように言う。


**香奈**:「雫華、あんたさ……もうちょっと距離感ってものをだね……」


**雫華**:「え? なんで?」


**香奈**:「……いや、なんでもないわ。うん、天然は強い」


翔太は机に突っ伏したまま、心の中で叫んだ。


(なんでだよ……! なんでお前は平気なんだよ……!)


---


放課後。

翔太は渋々、理人に呼び出されて廊下に立たされていた。


**理人**:「反省文は?」


**翔太**:「……書いてねぇよ」


**理人**:「なら今から書け。図書室で監視する」


**翔太**:「監視ってなんだよ!」


そこへ、雫華が走ってきた。


**雫華**:「翔太! 図書室行こ! 数学の質問あるって言ったじゃん!」


翔太は一瞬で顔が熱くなる。


**翔太**:「お、お前……そんな大声で……!」


**雫華**:「え? だって一緒にやるんでしょ?」


雫華は本当に“何とも思っていない”顔で、にこっと笑った。


理人は腕を組んでため息をつく。


**理人**:「……雫華。お前は本当に無自覚なのか、それとも確信犯なのか判断に迷うな」


**雫華**:「え? なにそれ?」


翔太は頭を抱えた。


(……俺だけが意識してるのかよ……!)


---



図書室の静かな空気の中、翔太は反省文を書きながら、ちらちらと雫華を見る。


雫華は真剣に数学の問題を解いている。

昨日のことなんて、本当に気にしていないように。


(……なんだよ。俺だけがバカみたいに意識して……)


雫華がふと顔を上げる。


**雫華**:「翔太、これ教えて?」


その笑顔は、事件前と同じ。

距離も、声も、仕草も、全部。


翔太は胸の奥がきゅっと締めつけられた。


(……なんでだよ。なんでそんな普通でいられるんだよ)


でも、言えない。


言ったら、今の関係が壊れそうで。


翔太はペンを握り直し、反省文に書き始めた。


『自分の感情の整理ができていないことが最大の問題である』


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