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一年の宝物  作者: ゆみ。
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尋問

翔太の部屋での「事件」から数分後。

リビングの大型テーブルを囲み、A組の面々はかつてないほど真剣な表情で座っていた。


中央には、処刑台に送られる罪人のように肩を並べて座らされた翔太と雫華。

その正面には、腕を組み、メガネをキラリと光らせた理人が、まるで執行官のような威圧感で鎮座している。


**理人**:「……さて。まずは優里、体調は大丈夫か? この後の展開は心臓に悪い可能性があるが」

**優里**:「は、はい。……少し動悸がしますが、真相を知るまでは寝込めません……!」

**日向**:「そうよ! 私なんてさっきの連写データ、クラウドにバックアップ三箇所保存したんだから。さあ、被告人・翔太。言い残すことは?」


理人がホワイトボードをガラガラと引き寄せ、マジックで大きく**『健全な学習環境における純潔の維持』**と書き殴った。


**理人**:「翔太。我々はあくまで『宿題合宿』のために集まった。しかし、お前は密室という閉鎖環境を利用し、雫華に対して物理的な圧力を加えた。これは数学的に見て、単なる『事故』の確率を大きく逸脱している。……白状しろ。どこまでやるつもりだった?」


**翔太**:「だから! 違うんだって! 雫華が変なこと言うから、ちょっと黙らせようとしただけで……!」

**颯**:「『黙らせる』の方法が、ベッドに押し倒してキス(未遂)かよ! 翔太、お前、そのテクニックどこで習ったんだよ! 詳しく教えろよ、エロ動画とかか!?」

**日向**:「颯、ちょっと!何言ってんの。 ……でも翔太、あの時の目、本気だったよね。」


日向のストレートな感想に、リビングが一瞬しんと静まり返る。

翔太は顔を真っ赤にして、隣の雫華をチラリと見た。


翔太自身、一番混乱していた。今まで雫華は「距離感が近くて心臓に悪い、厄介な幼馴染のような存在」だった。でも、押し倒した瞬間に腕の中に感じた彼女の体温、驚きに揺れる瞳、そして微かに震える唇を見た時、自分の中の「ただの友達」という境界線が、轟音を立てて崩れ去るのを感じていた。


一方の雫華は、さっきから一言も発していない。

いつもなら「あはは、翔太ったら照れちゃって〜」と冗談で流すはずの彼女が、両手で顔を覆ったまま、指の隙間から耳まで真っ赤に染まっているのが丸見えだ。


彼女の脳内は、今、人生最大のパニックに陥っていた。

「恋愛」なんて、模試の偏差値よりも自分には無関係なものだと思っていた。翔太をからかうのは、ただ彼が慌てる姿が面白くて、彼と一緒にいる空間が何よりも安心するから。それだけのはずだった。


(……でも、あんな顔、見たことない)

押し倒された時、自分を閉じ込めた翔太の腕。そこから伝わる熱。

「俺がどれだけ我慢してるか考えろ」という掠れた声が、今も耳の奥でリフレインしている。

(私、翔太に……あんなこと言わせちゃってたの? 私のせいで、翔太はあんなに……)


**はるか**:「見て、雫華ちゃんが完全に壊れてる……。あんな雫華ちゃん、初めて見たかも」

**香奈**:「これ、天然が突き抜けて『自覚』しちゃったパターンじゃない? 雫華、あんた今の心境はどうなのよ。翔太に押し倒されて、ぶっちゃけ嫌だったわけ?」


香奈の意地悪な質問に、雫華が「ひゃぅっ!」と小さく変な声を上げた。


**雫華**:「う…うう…別に、嫌なわけじゃ…」


雫華の消え入りそうな告白に、野次馬軍団(香奈、日向、颯、健斗)が「キターーー!」とガッツポーズを決める。


### 4. 判決、そして……

**理人**:「……静粛に。被告人両名の供述、および身体的反応から推察するに、これは『相互の感情的昂ぶりによる理性の逸脱』と判断する。よって、本日の合宿はこれにて強制終了。翔太、お前は頭を冷やして明日までに反省文を提出しろ。テーマは『性的衝動の抑制と効率的学習の両立』だ」


**翔太**:「反省文って……お前、先生かよ! 誰に提出するんだよ!」

**理人**:「俺だ。それと、雫華。お前は無自覚な誘惑を厳禁とする。今後、翔太と二人きりになる際は、半径2メートル以内に立ち入ることを禁ずる。……いいな?」


雫華は真っ赤な顔でコクコクと何度も頷く。

解散際、玄関でみんなを見送る翔太。最後に残った雫華が、震える手で翔太の袖をツンと引いた。


**雫華**:「……ねえ、翔太。反省文……一緒に、書く?」

**翔太**:「バカ! 一緒にいたらまた理人に怒られるだろ! ……それに、今は……まだお前の顔、まともに見れねーよ」


翔太がぶっきらぼうに目を逸らすと、雫華はさらに顔を赤くして「……私も。……じゃあ、また明日ね」と、逃げるように走り去っていった。


夜。

自分の部屋のベッドに横たわった翔太は、天井を見上げながら呟く。

「……半径2メートル、か。無理だろ、そんなの……」

一方、雫華も自分の部屋で、布団で顔を隠しながら「翔太のバカ……」と、混乱の中にいた。


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