「実技」の予習(?)(R15要素あり?)
優里が熱中症で倒れたあの日から数日。今日は翔太の家で「宿題合宿」が開催されていた。リビングでは、理人が相変わらず鬼のような顔でプリントを捌き、その横で優里が少し申し訳なさそうにペンを握っている。
**理人**:「優里、顔色は悪くないな。……だが、少しでもクラッときたらすぐ言え。お前の代わりはいないからな」
**優里**:「理人くん、ありがとう。もう大丈夫。あの時は、雫華さんや翔太さん……みんなに本当に助けられちゃって。……ねえ、雫華ちゃん?」
キッチンで麦茶を注いでいた雫華が、ひょこっと顔を出す。
**雫華**:「もー、優里ちゃんたら、まだ気にしてるの? 私たちは『チーム』なんだから、当たり前でしょ。ね、翔太?」
**翔太**:「あ、ああ。……無理すんなよ、マジで」
**香奈**:「そうそう。優里が倒れた時、翔太も雫華も顔真っ青にして廊下爆走してたんだから。愛されてるわねぇ」
そんな軽口に優里が「もう、香奈ちゃんったら!」と頬を染める。和やかな、いつも通りのA組の光景。しかし、この数分後、物語は予想外の方向へ加速する。
「ちょっと自分のノート取ってくる」という翔太の後を、雫華が「私も行く!」と軽い足取りでついてきた。
翔太の自室に入ると、そこはリビングの喧騒が遠のく、少し狭くて、でも涼しい二人きりの空間だった。
**雫華**:「へぇ〜、翔太の部屋って意外と綺麗にしてるんだね。もっと漫画だらけかと思ってた」
**翔太**:「……悪いかよ。ほら、ノートあっただろ。さっさと戻るぞ」
だが、雫華は戻る気配を見せず、翔太のベッドに「ぴょん」と腰を下ろした。
**雫華**:「ねえ、そんなに急がなくてもいいじゃん。……あ、これ、私が貸した参考書。ちゃんと使ってくれてるんだ?」
雫華がベッドに手をついて、ぐいっと身を乗り出す。Tシャツの首元から鎖骨が覗き、彼女の動くたびに、シトラス系のシャンプーの香りが翔太の鼻先をかすめる。
**雫華**:「……ねえ、翔太。さっきからなんでそんなに壁ばっかり見てるの? 私、ここにいるよ?」
**翔太**:「……近ぇんだよ、お前。少しは距離感考えろ」
**雫華**:「え〜? 私は翔太となら、これくらい近くても全然平気だけどな。……それとも、翔太は私とこうしてるの、嫌?」
雫華はクスクス笑いながら、さらに距離を詰める。彼女の瞳はビー玉のように透き通っていて、下心が1ミリもない「天然」だからこそ、その無防備さは凶器だった。
**雫華**:「もしかして……こんな狭い部屋で女の子と二人きりだから、変なこと想像しちゃってる?」
**翔太**:「……お前、マジでいい加減にしろよ」
翔太の喉から、押し殺したような、今まで聞いたこともない低い声が漏れた。
雫華が「え……?」と瞬きをした瞬間、視界がぐるりと回る。
**雫華**:「わっ……!?」
気づいた時には、雫華はベッドのマットレスに押し倒されていた。
頭のすぐ横に、翔太の腕で突かれる。逃げ場を完全に塞がれた、至近距離の「ベッドドン」。
**翔太**:「……いつもいつも、俺がどんな気持ちで隣にいるか、お前はちっともわかってねーだろ」
**雫華**:「しょ、翔太……? ど…どういう…」
翔太の瞳には、冗談では済まされない「熱」が宿っていた。
雫華の白い頬が、一瞬で耳まで真っ赤に染まる。いつもは余裕たっぷりにからかっていたはずなのに、心臓が爆発しそうなほど高鳴り、指先一つ動かせない。翔太の顔がゆっくりと、抗いようのない力で近づいてくる。
二人の唇が触れようとした、その刹那――。
**「おーーーい! 翔太、コーラなくなったんだけど補充……って、うわああああああ!!!」**
ドアを豪快に蹴破るように開けたのは、空のペットボトルを持った颯だった。
直後、後ろから「ちょっと、騒がしいわよ」と続いた香奈、理人、さらには心配そうについてきた優里、はるか、日向までもが、その「決定的瞬間」を網膜に焼き付けた。
**理人**:「…………翔太。お前、微積分の代わりに『実技』を予習していたのか」
**日向**:「ちょっとおぉ!? 雫華を押し倒して、今まさにディープな展開になろうとしてたよね!?(即座にスマホで連写)」
**優里**:「……っ! しょ、翔太さん……雫華さん……。 あわわわ(知恵熱)」
**香奈**:「ちょ…!雫華に何しようとしてたの…!!?」
**翔太**:「ち、ちげーよ! これは、雫華が……! ああもう、お前ら出てけ!!」
**雫華**:「…………(真っ赤なまま、頭から湯気を出してフリーズ)」
押し倒された体勢のまま、雫華は生まれて初めて「恋愛」という名の激流に飲み込まれ、完全にショートしていた。




