表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一年の宝物  作者: ゆみ。
22/37

「実技」の予習(?)(R15要素あり?)

優里が熱中症で倒れたあの日から数日。今日は翔太の家で「宿題合宿」が開催されていた。リビングでは、理人が相変わらず鬼のような顔でプリントを捌き、その横で優里が少し申し訳なさそうにペンを握っている。


**理人**:「優里、顔色は悪くないな。……だが、少しでもクラッときたらすぐ言え。お前の代わりはいないからな」

**優里**:「理人くん、ありがとう。もう大丈夫。あの時は、雫華さんや翔太さん……みんなに本当に助けられちゃって。……ねえ、雫華ちゃん?」


キッチンで麦茶を注いでいた雫華が、ひょこっと顔を出す。

**雫華**:「もー、優里ちゃんたら、まだ気にしてるの? 私たちは『チーム』なんだから、当たり前でしょ。ね、翔太?」

**翔太**:「あ、ああ。……無理すんなよ、マジで」

**香奈**:「そうそう。優里が倒れた時、翔太も雫華も顔真っ青にして廊下爆走してたんだから。愛されてるわねぇ」


そんな軽口に優里が「もう、香奈ちゃんったら!」と頬を染める。和やかな、いつも通りのA組の光景。しかし、この数分後、物語は予想外の方向へ加速する。


「ちょっと自分のノート取ってくる」という翔太の後を、雫華が「私も行く!」と軽い足取りでついてきた。

翔太の自室に入ると、そこはリビングの喧騒が遠のく、少し狭くて、でも涼しい二人きりの空間だった。


**雫華**:「へぇ〜、翔太の部屋って意外と綺麗にしてるんだね。もっと漫画だらけかと思ってた」

**翔太**:「……悪いかよ。ほら、ノートあっただろ。さっさと戻るぞ」


だが、雫華は戻る気配を見せず、翔太のベッドに「ぴょん」と腰を下ろした。


**雫華**:「ねえ、そんなに急がなくてもいいじゃん。……あ、これ、私が貸した参考書。ちゃんと使ってくれてるんだ?」


雫華がベッドに手をついて、ぐいっと身を乗り出す。Tシャツの首元から鎖骨が覗き、彼女の動くたびに、シトラス系のシャンプーの香りが翔太の鼻先をかすめる。


**雫華**:「……ねえ、翔太。さっきからなんでそんなに壁ばっかり見てるの? 私、ここにいるよ?」

**翔太**:「……近ぇんだよ、お前。少しは距離感考えろ」

**雫華**:「え〜? 私は翔太となら、これくらい近くても全然平気だけどな。……それとも、翔太は私とこうしてるの、嫌?」


雫華はクスクス笑いながら、さらに距離を詰める。彼女の瞳はビー玉のように透き通っていて、下心が1ミリもない「天然」だからこそ、その無防備さは凶器だった。


**雫華**:「もしかして……こんな狭い部屋で女の子と二人きりだから、変なこと想像しちゃってる?」


**翔太**:「……お前、マジでいい加減にしろよ」


翔太の喉から、押し殺したような、今まで聞いたこともない低い声が漏れた。

雫華が「え……?」と瞬きをした瞬間、視界がぐるりと回る。


**雫華**:「わっ……!?」


気づいた時には、雫華はベッドのマットレスに押し倒されていた。

頭のすぐ横に、翔太の腕で突かれる。逃げ場を完全に塞がれた、至近距離の「ベッドドン」。


**翔太**:「……いつもいつも、俺がどんな気持ちで隣にいるか、お前はちっともわかってねーだろ」

**雫華**:「しょ、翔太……? ど…どういう…」


翔太の瞳には、冗談では済まされない「熱」が宿っていた。

雫華の白い頬が、一瞬で耳まで真っ赤に染まる。いつもは余裕たっぷりにからかっていたはずなのに、心臓が爆発しそうなほど高鳴り、指先一つ動かせない。翔太の顔がゆっくりと、抗いようのない力で近づいてくる。


二人の唇が触れようとした、その刹那――。


**「おーーーい! 翔太、コーラなくなったんだけど補充……って、うわああああああ!!!」**


ドアを豪快に蹴破るように開けたのは、空のペットボトルを持った颯だった。

直後、後ろから「ちょっと、騒がしいわよ」と続いた香奈、理人、さらには心配そうについてきた優里、はるか、日向までもが、その「決定的瞬間」を網膜に焼き付けた。


**理人**:「…………翔太。お前、微積分の代わりに『実技』を予習していたのか」

**日向**:「ちょっとおぉ!? 雫華を押し倒して、今まさにディープな展開になろうとしてたよね!?(即座にスマホで連写)」

**優里**:「……っ! しょ、翔太さん……雫華さん……。 あわわわ(知恵熱)」

**香奈**:「ちょ…!雫華に何しようとしてたの…!!?」


**翔太**:「ち、ちげーよ! これは、雫華が……! ああもう、お前ら出てけ!!」

**雫華**:「…………(真っ赤なまま、頭から湯気を出してフリーズ)」


押し倒された体勢のまま、雫華は生まれて初めて「恋愛」という名の激流に飲み込まれ、完全にショートしていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ