ついで、おまけで人助け
さて、目の前で依頼がなくなったわけですが、別にそんなに問題はない。
いや、待遇に難ありだけど、迫害覚悟でアルビノの見た目を作ってるのは自分ですし。
緑風メンバーに聞いたとおり、冒険者ギルドは買い取り作業も行っている。つまり、素材持ち込みをすれば普通にお金が貰える。
なんなら、魔道具の買い取りなんかは業者を紹介してくれるから、そっちでも稼げる。依頼があろうがなかろうが、都会だろうが田舎だろうがそこは変わらないはずだ。
てなわけで、街の外の森にやってきたよぉ〜!
私のルート的には引き返すかたちにはなるけど仕方なし。
冷蔵庫のないこの世界では、とれたてほやほやな方が素材としての評価は高いのだ。
さて、素材、と一言で言っても、少し種類があったりする。
お肉とか、毛皮とか、内臓とか、鱗だったり。だから、骨の髄まで活用できるようなやつはマジで貴重で価値が高い。
その貴重なやつがハードル高いんだよなー!なんだよドラゴンって!なんだよデカくなった象の魔物て!!
だから私はちまちま魔物退治をしますよ、ええ。
「…ゆきうさ、カバンから出ないように」
私がそう言えば、「りょーかい!」とでも言いたげに一回震えて、みっちりサイズから少し小さくなった。うん、サイズ変更は良いアップデートだったな。
***
「…ふぅ」
マルキアで解体の授業受けといてよかったな。多少は血に汚れたけど、おかげで部位に分けて、ギルドに提出できる程度にはなった。
…ん?
「ゆきうさ?どうした?」
なんか震えてら。どうした?
アップデートその三、多少のサーチ機能。
この反応的に怯えてはないから、強大な魔物が近くにいるわけではなさそうだな。じゃあなんだ?
改めてサーチの魔道具を出して確認。
うん?なんか群がられてるな。これは…
転生モノあるある、荷馬車を襲う魔物の群れ!?
いやふざけてるけど割とふざけてる場合じゃねーな。人命がかかってるから見逃すわけにもいかんし。
いや、人と人との諍いならまあ見逃してたけど、人と魔物なら人助けるよね。私もこのくらいの差別主義は持ち合わせている。
と、いうわけで!
「ごっきげんよう!!」
「!?」
半ばヤケクソで森から道に飛び出し、狼の魔物のうち一体に仕込み杖を突き立てる。
狼かよ、クソッタレ!しかも群れだし!!上位種じゃないのはまだ幸運だったけど!
魔法は使いたくないけど、私の身一つで敵う相手じゃない。
…ので、新しく作った魔道具の出番だ。
異空間収納に手を突っ込んで、引き出す。
じゃらり、と、分銅のついた鎖が重々しい音を鳴らす。
「『そこの道行く坊ちゃん嬢ちゃん、少々失礼仕る』!」
私の声に呼応して鎖がうねる。唸りをあげて様子を伺う狼の眉間に分銅がぶち当たり、こちらに噛みつこうとするその喉に巻き付いてひねり上げる。逃げようとしたら後ろ足や尻尾に巻き付いてこちらに引きずり寄せ、私が首を落とす。
うーんむごい。一方的な蹂躙って、やってる側も不愉快。私がワンオペで相手してたから大半には逃げられたけど。
にしても、この鎖って意外と使いやすいな。鎖鎌とかあるけど、鎖オンリーでも存外戦えるわ。
同じくマルキアで作った“奥の手”は、まだ当分使わなくても良さそうだな。
「あ…あの!」
「はい?」
馬車から出てきた少女が、私に話しかける。
よく見たら荷馬車じゃなかったわ。家紋っぽいの入ってるし、貴族か何かだったのかな。
「…恩でも売ったつもりかしら?」
「はい?」
なんだこいつ。命助けてもらっといてなんだよ。これも差別のせいか?助けなければよかったかな。
「言っておくけど、貴方が狼をけしかけてこのチープな劇をしているだけという可能性も残っているのよ」
「ああ、なるほど」
「なるほど!?貴方、自分の立場をわかっているの!?」
「いえ、変な意味ではなく」
差別関係なかった。たしかにそんな詐欺ありそう。対象が死んだら死んだで泥棒すればいいしね。なるほど、軽率にお礼を言えないわけだ。
「何を失礼なことを!!謝りなさい!!」
「ぐぅっ」
…そうでもなかった。
「まあ、そうカッカなさらず。お嬢さんのおっしゃることにも一理あるわけですし。私も、冒険者ギルドに売り込む素材を集めていたら見かけただけですし…ただの成り行きなので、そんな、感謝されるようなことでも…」
「そうはいかない!ぜひお礼を…」
「魔物を倒すのが冒険者ギルドに登録した者の宿命です。私ではなく、このような運命を紡いだ神に感謝を!」
お父さんなのか、少し歳をとった男性が出てきたけど、正直ややこしい事態になる気しかしなかったから、咎人みたいにコソコソ逃げた。
面倒ごとはごめんなんでね!!




