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神鬼狂乱~女子高生陰陽師広報・安倍日月と荒覇吐の神~  作者: 杜宮みやび


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第六話:女子高生×陰陽師×広報

「秘密の組織なのに広報、ですか?」

 陽翔は、相反する目的を持つ二つの組織の組み合わせに頭が混乱していた。


「そうなの。すべてを公にすることはできないけれど、その存在を広く知ってもらわなければならない。そこが難しいのよね~」

 驚きのあまり声が裏返る陽翔に、うんうんと、腕を組んで一人納得している。


「なんでそんなこと……」

 陽翔の当然の疑問に日月は優雅な仕草で髪を掻き上げて答える。その頭上では白虎も誇らしげに尻尾を揺らしている。


「陰陽術の力もね、仕組みとしては妖怪の存在と同じなの。人に忘れられたら術師も存在できなくなる。だから陰陽寮では広報部を作って、小説や漫画、ゲームとかのメディアを通じて現代人にも陰陽師という存在の認知を広げ続けてるわけ」

「なるほど」

 言われてみれば確かに、陰陽師が登場するゲームや漫画は定期的に供給されている気がする。


「日月先輩も漫画を描いていたりするんですか?」

「ゔ……、わ、私は絵とか描かないから、そういった方面は本部のメディア担当の仕事ね」

 何だろう、何か聞いてはいけないことを聞いてしまったのだろうか?


「漫画なども大切だけど、今はやっぱりSNSの時代よ。私は若者向けのSNS担当。インスタグラムやティックトックで秘密裏に陰陽師の認知を広げているわ。世界一の陰陽師インフルエンサーになるのが私の夢よ!」

 えへんと胸を張る日月。陰陽師インフルエンサーと言うだけですでにレアな存在なのではないだろうか?陰陽師インフルエンサーなんてものが世界に何人いるのか知らないけど……


「へー、実はもう結構有名だったりするんですか?見つかるかな」

 陽翔はスマートフォンを取り出して「陰陽師」「女子高生」と検索する。


「ああ~まだ駄目よ!」

 慌てて画面を隠そうとする日月だがその前に検索は完了し、『#女子高生陰陽師』のタグが見つかり、そこに登録されたアカウントが提示された。


 アカウント名@sun-moon


 陽翔は迷わずタップする。

 画面には仙台駅前の映えスポットで仙台名物『ずんだシェイク』を片手にポーズを決める写真をはじめ、普通の女子高生の日常シーンが並ぶ。

 

 投稿されている写真を見ると、それは間違いなく日月だった。

 陽翔は画面をスワイプして投稿をさかのぼる。


 古い投稿は、#夜は墓場で運動会のタグがついた墓場で火の球を追いかける写真や、#神様とツーショットのタグで神社をバックに仙人のような白ひげのおじいちゃんと二人で手を合わせてハートを作ってにこやかに笑う写真などが並ぶ。


 だが、最近の投稿に近づくと、どれも仙台のお洒落なカフェや、かわいい小物の紹介ばかり。陰陽師感がどこにも感じられなかった。


 そして陽翔は見てしまった。

「登録者1535人……微妙ですね」


 手を広げて突き出した姿で固まる日月に向けて陽翔が哀れみの表情を向ける。

 陽翔もSNSに詳しいわけではないが、この人数がそれほど多いものではないということはわかる。広報だのインフルエンサーだのと言うにははっきり言って力不足感は否めない。


「わ、悪かったわね!」

 顔を真っ赤にして叫ぶ。


「し、仕方ないでしょ!まだ始めたばかりなのよ!」

 頬を膨らませてプイと横を向いて怒る日月の頭上で、白虎が迷惑そうに耳を伏せた。

「コンテンツの方向性が定まってないような……」

「うるさい!そういう的確なことを言わない!」


 ふたりのやり取りを見ていた花子がくすくすと笑っている。健太も笑っているが表情筋がむき出しなので不気味だ。壁のベートーベンはふたりのやり取りにゲームの戦闘BGMのような歌を歌い始めたが日月ににらまれて口を閉じる。


 「仕方ないでしょ!私だってはじめはちょっと頑張ったわ。地縛霊とツーショットしてみたり、お墓の中で火の玉と戯れる姿を撮影とか、ちょっとは人気出たのよ。

 ほとんどの妖や幽霊は写真に写らないから、状態の安定している何とか写真に写るレベルの幽霊と交渉して一緒に映ってもらったのに、『写真加工はもう少し頑張ったほうがいいですよ』とか『クオリティーが低い合成写真』とか言われて、こっちがいくら本物だって主張してもコメントが荒れるばかり……もう心が折れたの。ぽっきりとね。それからはほかのインフルエンサーさんの投稿を参考にして、人気が出そうなネタを投稿するようになったのよ」


 確かに。今の技術なら心霊写真を作るのなんて簡単だ。逆に本物の写真の方がクオリティ低く見えてしまうのだろう。


「大物妖怪との戦闘シーンを動画にできたら、私をバカにしたアンチたちも文句言えないと思ってたのに、期待外れだったし。何かほかのネタ考えなくちゃ」

 説明していることも忘れ、次の企画を考え一人考え込む。


 日月は整った顔立ちに、黙っていれば愛らしい雰囲気を持っている。そのルックスだけでも十分SNSで注目されそうなものだが、初期のオカルト投稿が「痛い子」というレッテルを貼られてしまったのかもしれない。

 これはもう手遅れなんじゃないかとも思うが、必死な表情の日月を見るととても口には出せない。

 

 過去の投稿や自己紹介から陰陽師の要素を削除すれば普通にフォロワーは増えそうだが、それでは広報としての役割を果たせないのだろう。

 

「そんなことより、今は調査するまで陽翔君をどう守るかって話でしょ!」

 思い出したように日月が強引に話を元に戻す。

 少し考えて日月が提案する。

「陽翔君の家を結界で覆っておくのがいいかもしれないわね」

「結界、ですか……」

 ある範囲を区切って、内側を清浄な空間に保つ。ゲームなどでも知られる術だ。神社の鳥居なども一種の結界と言われている。


「そう。この学校も周囲の悪意ある妖怪や悪霊の類が入ってこられないようにかなり強力な結界が張ってあるのよ。だから学校内にいる限りは安心していいわ」


 学校も霊的なものを集めやすい場所だと言われている。特にこの七北田高校は他の学校と比べても特別に霊的な特性が高く、妖怪が集まりやすいらしい。実際に健太たち覚醒妖怪が多数存在しているのがその証拠だ。


 集まってくるのは、彼らのような友好的な妖ばかりではない。中には昨日のカッパのような危険な妖怪が侵入してくる可能性も十分考えられるのだ。それが排除されているというのは陽翔には安心できる。


「じゃあさっそく今から行きますか」

「え、今からですか?」

「闇が濃くなれば妖の活動も活発になるわ。陽が沈む前に妖怪払いの結界をはってしまいましょう」

 

 



 

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