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神鬼狂乱~女子高生陰陽師広報・安倍日月と荒覇吐の神~  作者: 杜宮みやび


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第五十五話:玲愛に迫る魔の手

「だーかーらー!うちらはその妖怪を退治に来てるねん!これが陰陽寮の許可証や」

 玲愛(れあ)は厳しい顔で道をふさぐ警官に、何度目かもわからない言葉を投げつけた。

 

 夜刀神(やとのかみ)の復活を目撃し、東北歴史博物館旧館を出た玲愛と麗子は、七北田高校(ななきたこうこう)を目指す日月と陽翔に再会した。

 荒覇吐神(あらはばきのかみ)荒魂(あらみたま)が七北田高校に封じられており、その復活を阻止するのだと、二人は獅子に乗って七北田高校を目指し空を駆けて行ってしまった。


 しかし、残念ながら日月たちは間に合わなかったようだ。

 玲愛は日月たちと別れてすぐに七北田高校のあるあたりからまるで赤い柱のような大蛇が地上に伸びあがるのを見た。

 すぐに日月たちの応援に向かおうと車を飛ばしたのだが……


「見てわかるだろ。なんだか怪獣が現れてここから先の地域への一般人の侵入は制限されているんだ。すぐに避難所に行きなさい」

 このあたりも流れ込んだ霊気の影響で活性化した妖怪の被害が出始めていた。

 田畑の多いこの場所はまだそれほどではないが、いたるところで悲鳴や煙が上がっている。すでに町は大パニック状態のようだ。


「それは妖怪の仕業やねん。うちは陰陽師やって言うてるやろ」

 先ほどから陰陽寮の証明書を提示しているが、下っ端の警官にまで秘密組織である陰陽寮のことが周知されているわけではない。


 警官も初めは上司に確認をとってくれていたが、警察も一度に発生した謎の妖怪事件に対応が追い付かず連絡が取れないようだった。

 そうなれば、いっかいの警官の判断で勝手に許可を出すわけにもいかない。それによって玲愛たちは足止めされることを余儀なくされていた。


「しゃーないな、このおまわりさん、ぶちのめして強引に突破するしかないか……」

 玲愛は強引に突破しようとカバンの中の退魔の槌(たいまのつい)に手をかける。


「だ、ダメですよ玲愛さん!ここは穏便に、私妖怪だから無免許なんですよ、下手なことして逮捕されたらどうするんですか」

 麗子が袖を引いて小声で訴える。

 今にも殴り掛かりそうな玲愛を力づくで抑えて、じりじりと下がって車に戻ろうとする。


「麗子はん、何するねん!早く日月の元に……もがもが……」

 逃れようとする玲愛を怪力で押さえつけ、片手で口をふさいだ。


「わ、わかりましたわ、危険ですものね、では私たちはこれで……」

 暴れる玲愛を引きずり車に戻ろうとすると、警官がおってきて声をかける。


「あー、車はだめだよ。ここに置いておきなさい。災害時は交通がマヒするからね。歩いて近くの避難所に向かうんだ。ここから近いのは――」


「はーっ?!私のかわいいRX8ちゃんをこんなとこにおいていけですって?!そんなこと……もがもが……」

 口裂け女になって襲い掛かろうとする麗子を今度は玲愛が抑えに入る。


「ね、姉さん落ち着きいな」

 そんなやり取りをしていると、周囲に怪しい殺気が広がった。霊視メガネの警告に気づいた玲愛が体を固くする。


「姉さん、囲まれとる……」

「カッパの集団、ですね……」

 七北田川から田んぼの水路を渡ってきたカッパが人の気配を目指して集まってきていた。確認できるだけで五体。

 警官はまだ気づいていない。


「そうだね、公民館が指定避難所になっているみたいだ。ひとまずそこに……」

 近くの避難所マップを開いていた警官はカッパの存在に気づいていなかった。すぐ真後ろにまで迫った一匹のカッパの腕が警官のお尻に差し込まれた。


 警官の体が電気に打たれたかのように硬直しする。

 「シ、シリコダマー」

 引き抜かれたカッパの手には卵ほどの白い球が握られていた。それを引き抜かれた警官は意識を失いその場に倒れる。

 尻子玉を引き抜いたカッパは、一飲みでその球を飲み込むと愉悦の笑みを浮かべて残った二人を見つめる。


「オ、オナゴノ、シリコダマ」

 他のカッパたちも次は自分たちだと言わんばかりに、目の色を変えて玲愛たちににじり寄る。


「お尻の穴に手を突っ込まれるなんて、まっぴらごめんや!」

 カバンの中から退魔の槌を取り出し構えると、手元ダイヤルを回し属性を変更する。


「カッパは水やな、つまりこっちは土が吉兆」

 土克水、五行の理により水の属性は土の属性によって抑えられる。玲愛の開発した機構で退魔の槌は敵対する相手によって属性を変えることができる機能を備えていた。


「どっせーい!」

 土の気をまとった退魔の槌が目の前のカッパを横殴りに打ち付ける。カッパはからだをくの字に折り曲げ近くの田んぼに吹き飛ばされた。

 他のカッパが予想外の攻撃にひるむ。その隙を逃さず駆け寄りさらに二匹を葬り去った。

 振り返ると、口裂け女の姿に戻った麗子もすでに2匹を赤く長い爪で切り裂いたところだった。


「もうそうとう妖怪の力が上がっとる。早く日月たちの応援に行ってやらんと……」

 退魔の槌をしまってそうつぶやいた玲愛のスマホが着信を知らせる。


 すぐに相手を確認すると、それは加茂誓詞からの着信だった。少し悩んだ玲愛だったが仕方なく受信ボタンをタップした。


「あー、現在この電話番号は使かわれておりまへん」

「ははは、玲愛ちゃんはいつも面白いねえ」

 電話の向こうから、いつもの軽薄な声が返ってきた。


「やっぱり、あんさん生きとったんやな。なんやねんこっちは取り込み中やねん」

「まあまあ、そういわずにちょっと手伝ってよ。鹽竈神社の龍脈を封印したいんだ。玲愛ちゃんも手伝ってくれないかな」


 



神鬼狂乱~女子高生陰陽師・安倍日月と荒覇吐の神~


ブシロード小説大賞応募予定のため、7月19日までに完結予定。原稿はすべて書きあがっているので、最終話まで一気に駆け抜けます!


少しでも気に入ってもらえたら、作品フォローと評価、なにとぞよろしくお願いします!

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