menu108 ゼロスキルの農業学
本日は説明回。
書籍版の第1巻でも言及していましたが、
その応用版だと思っていただければ幸いです。
今日もどうぞ召し上がれ。
ルーンルッドの農作業の基本は1、2にも『魔力』である。
植物は魔力によって育つと考えられているからだ。
その証拠に山ではたくさんの雑木が生い茂っているが、平地ではそれほどでもなく、実際、平地では背の低い草木しか育たなかった。
魔力の濃い場所だからこそ、植物は育つ。
それ故に、植物は魔力で育つ。
これもまた、異世界ルーンルッドの定説であった。
それ故にルーンルッドには、畑や植物に魔力を送る【植物士】なる職業が存在する。
彼らは植物学に精通することはもちろん、スキルの時に使う魔力量が極めて大きい者たちだ。
小さな村にも1人は、そういうものがいる。
特に免許があるわけでもなく、コミュニティで1番魔力量が高い者がなること多い。
「はははは! 30日だって!? そんなの嘘に決まってるだろ!!」
ディッシュの話を聞いて、1番激昂したのは、村にいる【植物士】だった。
最近、村の中で任命されたという若い【植物士】は、ディッシュの出鱈目だと糾弾した。
しかし、ディッシュは冷静だ。
「言葉で説明してもわからねぇよ。だけど、俺に畑を預けてもらえれば、30日で作物を実らせることができるぞ」
自信満々だ。
村の意見も真っ二つに分かれた。
昔ながらのやり方にこだわる【植物士】派。
自分たちにご飯と感動を与えてくれたディッシュを擁護する派。
侃々諤々の議論の末、最終的には村長の判断に委ねられた。
村長はケネルという【植物士】に尋ねる。
「ケネルよ。お前さんはディッシュさんのことを悪く言うが、お前さんなら、この畑をここまで直すことはできたか?」
「そ、それは……」
「できぬであろう。だから、わしは聖女様に頼んだのだからな」
「…………」
そう言われては、【植物士】ケネルも引き下がらざる得ない。
村長はディッシュの方に向き直って、頭を下げた。
「お願いできますかな、ディッシュ殿」
「お安い御用だ。あっという間に、畑を作物でいっぱいにしてやるよ」
かくしてゼロスキルの農業が始まった。
その名の通り、ディッシュの農業はまさしくノー魔力だ。
「まずは魔草の枯れ葉集めだな」
「魔草の枯れ葉?」
一緒に手伝うことにしたアセルスは、きょとんと目を瞬かせる。
「枯れ葉はともかく、魔草などそこら中に生えてるものじゃないぞ」
「アセルスがいう魔草ってのは、ヨドモギの葉だったり、スピッドの豆のことをいってるんだろう?」
「違うのか?」
「ああいう強い魔草は使わない。俺が使うのは、弱い魔草だ」
「弱い魔草……」
「前に話したろう。土の中では、魔力の引っ張り合いが行われてるって」
「魔獣の死骸の時の話だな」
「そうだ。魔力ってのは、植物にとって要はご飯なんだ。だから、土の中で争う。ご飯を巡ってな」
「なるほど」
「強い魔草だと、どうしても魔力がそっちに行ってしまう。だから、弱い魔草を混ぜるんだ」
おお、とアセルスはポンと手を打ち感心する。
いまいち理解できていないのは、フレーナだ。
難しい話が苦手なドワーフ族の少女は質問した。
「そもそもなんで魔草が必要なんだ?」
「それはぁ、魔力の代わりにするんじゃないかしらぁ」
代わりにエリーザベトが答えた。
ディッシュは「うん」と頷く。
「そうだ。魔草に含まれている魔力を使って、植物を育てるんだよ」
「そんなことをしなくても、あたしたちが魔力を送るぜ」
フレーナは手を掲げる。
そのやる気を見せつけるように、手に炎を纏った。
フレーナも、エリーザベトも、そしてアセルスも、Sランク以上の冒険者だ。
当然、魔力量も多く、ステータスレベルも総じて高い。
田舎の【植物士】なぞ恐るるに足りないだろう。
しかし、ディッシュは首を振った。
「いや、遠慮しておくよ」
「おいおい。何でだよ。さっきの【植物士】をあっと言わせてやろうぜ」
フレーナは炎を消し、口を尖らせた。
「そんなことをしなくても、作物は育つよ。それにな、フレーナ。人から与える魔力ってのは、植物にとってはあまり良くないんだ」
「ん~? どういうことですかぁ、ディッシュくん。魔力を浴びれば浴びるほど、植物は育つのではないですかぁ?」
ディッシュの発言に、エリーザベトも首を傾げた。
「魔力が植物にとって、ご飯だっていったろ。お腹いっぱいになってる時のアセルスを考えてみろよ」
「な! なんで、私なのだ!?」
アセルスは耳たぶまで真っ赤にして叫ぶ。
一方、フレーナとエリーザベトは、お腹をまん丸にしたアセルスを思い浮かべた。
「そうか。たくさん食べ過ぎると、動けなくなるもんな」
「過度に魔力を与えても~、植物さんにとってはあまりいいことではないんですねぇ」
2人は納得する。
「そう。だから、魔力は弱くていい。ただずっと魔力を切らさず、適量を与え続けることが重要なんだ」
「それで魔草の枯れ葉なんて落ちてんのか?」
フレーナは辺りを見渡した。
3人の冒険者、1人の料理人、そして1匹の神獣は、村の近くの森に来ていた。
木々は青々と生い茂っているが、地面に目を落とすと枯れ葉や枯れ草だらけだ。
だが、どれも魔草の枯れ葉ではない。
しばらく探してみたが、それらしいものは見つからなかった。
「ふむ。この辺まで魔獣が来てるから、結構生えてると思ったんだけどなあ」
さしものディッシュも当てが外れてしまったらしい。
蓬髪をガリガリと掻いた。
「よし。作戦変更だ。ちょっと重いけど、この辺の土を持っていこう?」
「「「土?」」」
3人のSランク以上の冒険者が目を丸くする横で、ディッシュはおもむろに地面に鍬を突き立てた。
硬いのかと思ったが違う。
鍬の刃は深々と入る。
触ってみるとふかふかだ。
まるで日向に干したお布団のようだった。
アセルスは柔らかい土を触りながら、ディッシュの方を見る。
「ディッシュ、この土を使うのか?」
「ああ……」
「だが、魔力は?」
「大丈夫だ。この中には、たくさんの魔獣の死骸や風で飛ばされてきた魔草の枯れ草が入っている。この弱い魔力を使って成長させるんだ」
「そんなんで大丈夫か? もっとぶわっと魔力を……」
「ふふふ……。フレーナはなんでも派手なのが好きなのですよぉ」
「おお。悪いかよ!」
「だから、お前が料理当番だと、なんでもかんでも炭にしてしまうのだ、フレーナ」
「う、うるさいなあ。今、そんなことを言わなくてもいいだろ」
フレーナは赤い髪を逆立て、抗弁する。
「ちょっと大変だが、この土を畑の土に混ぜよう」
「なるほどぉ。畑の土と入れ替えるんですねぇ」
「そこまではしねぇよ。そうすると――」
「ああ。なるほど。今度は魔力が強い畑になってしまうんですね~。段々わかってきましたぁ」
エリーザベトは納得する。
「そうそう。何事もほどほどに」
「お腹は八分目がちょうどいいですよぉ。ね~、アセルスぅ」
「だから、なんで私の方を向くのだ!」
今度はアセルスが怒る番だった。
じゃれるSランクの冒険者たちに、ディッシュは次の作業を促す。
「よーし。土を運ぶのは、村の人に手伝ってもらうとして、畑のために次に必要なもんを探しにいくぞ」
「畑のために?」
「必要なぁもの~?」
「それは、魔力ではないのか?」
フレーナ、エリーザベト、そしてアセルスは首を傾げる。
「忘れたのか。前にも言ったろ? 植物には、水も必要だって。特にアセルス」
「おお! そういえば、そんなことを言われたような気がするぞ」
「なるほど~。ご飯を食べる時、汁物も大事ですもんねぇ」
「その通りだ、エリザ。魔力の流れをよくするために、水も必須だ。今から、川で水汲みだ。ウォンも手伝ってくれるよな」
「うぉん!!」
任せろ、とばかりにウォンは吠える。
「よーし。材料は揃ってきたぞ。これなら、間違いなく30日後には収穫だ!」
ディッシュは自信を漲らせるのだった。
そんなディッシュたちを見つめる影があった。
その視線にアセルスが反応する。
影は慌てて物陰に隠れると、その場を後にするのだった。
本日、コミカライズ版『ゼロスキルの料理番』の最新話配信日です。
畑に実るスピッドの豆を見たアセルス。
次なる魅惑の料理についに、あれが……!!
是非チェックして下さいね。
そして『劣等職の最強賢者~底辺の【村人】から余裕で世界最強~』が、
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よろしくお願いします。







