幕後2話
セイの息子、カイが話しがあると家に来た。
「今日はどうした?」
「…おじさん!」
「お、おう。」
「いや、お義父さん。娘さんを俺に下さい!」
「やだ。」
ちょっとコーちゃん、と杏子が口を挟む。
苺と杏子がそわそわしていたのは、この事を知っていたんだな。
いつの間にそんな関係になってたの…
前までは姉弟みたいな関係だったのに。お父さん悔しい。
「お願いします!」
真剣な眼差しのカイを、許してあげるべきなんだろうな。
そもそも、本人の問題だ。俺が許す許さないは余り関係ない。
「よし、分かった。外に出よう。」
「俺に勝ったら許可する。」
「えぇ…」
「コーちゃん大人げない…」
「パパのいじわるっ」
外野からのブーイングは気にしない。
これでちょっといい試合をして、俺が負ければいいのだから。
「お~っと、そういう事なら俺も倒して貰おうかな!相棒の娘だ、俺の娘も同然だ!」
コーンはそう言いながら、物凄く楽しそうな顔をしている。
お前も大変だったもんな。
「面白そうだね。僕もカイの成長を見守る親として、立ちはだかろうかな。」
息子に容赦のない勇者。
単に暇だっただけだと思う。
「そんなぁ…」
カイが泣きそうな声で抗議をする。
「も~っ!パパ達のいじわる!ドンちゃんやっちゃって!」
俺達オッサンズは、大きくなったドンちゃんに、押しのけられ退場させられた。
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「いっちゃん……弟…どっち…欲しい?」
杏子と苺の話しが、微かに聞こえた。
不穏な単語が聞こえた気がした。
苺の事はいっちゃんと呼んでいる。
杏子が目覚めたのは丁度誕生日の1月1日。
目覚めて22歳の誕生日を迎えた事になる。
苺も今年22歳だ。
血の繋がった母娘が同じ年とは、なんとも奇妙な感じがする。
二人で街に買い物に行くと、日が落ちるまで帰って来ない。
あの二人に着いて行く勇気は俺には無かった。
なんでも姉妹と思われるらしく、杏子はそれが気に入っているらしい。
今日は珍しく、夕飯の支度前には家に帰っていたようで、アイシスさんの代わりに台所に立っている。
食卓に並んだ豪勢な食事は、精力増強の品ばかりだった。
杏子の顔を見てみれば、沢山食べてねと笑顔で返された。
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元の世界…日本に帰りたくはないかと言われると、そうでもない。
この世界に来て、沢山の人に出会った。
沢山の人に出会って、何度も助けてもらった。
そのお返しが、少しでも出来るのであれば、この世界に骨を埋めてもいいと思う。
杏子にもそれは言ったし、逆に杏子の意見も聞いた。
日本に比べれば、随分不便だ。
電子レンジもないし、冷蔵庫もない。
洗濯機もなければ、シャワーもない。
それでも、苺が育ったこの世界を、好きになったと言ってくれた。
幸せ豊かな暮らしは、人それぞれだ。
不便で、それでいて優しい世界が、このまま続いて欲しいと願う。




