最終話
この世界に来て、21回目の元旦。
君を見つけて、11回目の1月1日。
今年も、誕生日は祝えそうにない。
コーンの娘、アーキも随分と大きくなって、数年前から家の事をよく手伝うようになったんだ。
最初は、皿を割ったり、料理を失敗したりと、逆に大変だったみたい。
なんでも最初から上手く出来る奴なんて居ない。
それは俺がよく分かってる。君もそうだったよな。
俺はよく採取依頼を受けて森に入ってる。
冬の森の中は、とても静かで、気分が落ち着くんだ。
本当はアイシスさんに、籠もっていたら駄目になる。
って、家を追い出されてるんだけど。依頼さえ受けていれば、格好は付くよな。
この辺りは滅多に雪は降らないから、カリエマやドエルが、恋しくなる時もある。
他にもこの世界、まだまだ行ってない所は多い。
いつか君と共に、周れたらいいな。と思う。
時々、先生がやってくる。
苺達から連絡が全く無いから、先生にお願いして探してもらってる。
心配か、心配でないか、と言えば心配だけど。
それほど深刻に、悩んでないんだ。
分からないけど、なんとなく分かる。
苺と君との繋がり程じゃないけど、父娘の繋がりって奴なのかもしれない。
先生が来る度に、ドラゴンも来るもんだから、街の人もとっくに慣れた様子だ。
世界を何度も滅ぼせる存在も、慣れてしまうと大きなトカゲと変わらないのかもな。
精霊にはあれ以来、呼びかける事もないから、一度も会えてない。
珍しい存在というのは、本当だったよ。
急激に萎んでいく俺という存在は、この世界に、何を残すんだろう。
何を、残せたんだろう。
これとは別に、いくつか書き溜めた、ノートを隠してある。
21世紀の俺の知識を、苺へ託す為。
大それた物は無い。
簡単な数学や物理、医学の初歩、程度の物だ。
きっと苺の役に立つ。
そう思って少しづつ、書き溜めている。
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そろそろ夕飯の支度の時間だ。
アーキに遅い、と膨れられる前に帰ろう。
帰ると、おじさんおかえりと出迎えてくれる。
最近すっかりアイシスさんに似て、笑顔が眩しい。
きっと数年後にはその笑顔で、男達をチョロく落とすんだろう。
コーンはその時、なんて反応をするんだろう。と考え、少し可笑しくなった。
アイシスさんに、今日取れた森の物を渡して、夕飯に加えてもらう。
それほど贅沢はしていないけど、アイシスさんの手料理は中々の物だ。
そして、あの日、あの時のままの杏子にただいまを言う。
返事はいつも無いけど、毎日ただいまを言う。
食事はいつも3人で取る。
アーキは今日有った出来事なんかを、楽しそうに話す。
おかわりはあまりしない事にしている。
プニってると帰ってきた苺に言われないように。
食事の後は、鍛錬を続けている。
もうダンジョンへ行く訳でもなく、冒険者として世界を旅する訳でもないけど。
元旦も、もうすぐ終わる。
と言っても、この世界に祝う風習はない。
ただの一日が終わるだけだ。
そう、ただそれだけ。
家の中に戻り、暖炉で温まる。
今夜はいつになく寒かった。
アーキは食事の片付けを済ませ、寝る支度を始めた。
「あ、雪だよ。」
アーキの言葉に釣られて、窓の外を見る。
珍しく雪か、通りで寒かった訳だ。
久しぶりに会ってみるか。
そう思って、再び家の外に出る。
「ユッキー、いるのか?」
返事は無かった。
けれど、白いフワフワとした、半透明の固まりが、そっと俺の近くへやってくる。
「久し振りだな。元気だったか?」
俺の耳元にやってくきて囁く。
(もうすぐよ。)
ユッキーはいつも説明が足りない。
けれど、何の事なのかすぐに分かった。
「おじさんっ!」
アーキが慌てて俺を呼びに来る。
そうか…
ありがとう。
おかえり、杏子。
本編は、以上になります。
拙い文章に付き合って頂き、ありがとうございました。
後日談が、細やかに続きます




