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39話

念願成就


----------


「苺…ちょっと待つんだ!」

「ん?……これは…ちょっとマズいんじゃないかい?」


「エヘヘ。」

 苺は俺達が壁に集中している間、魔素消費の為の魔法の炎をドンちゃんに当て続け…

10メートルはゆうに超える、ジャイアントドンちゃんに変貌を遂げていた。


 これは野良ドンちゃんになってもらうしかなさそうだ。

 

 

 

「あら、あれはもしかしたら…」

 キヌアさんが麓の方を見て、指差す。

指先に視線を移すと、こちらに向かって猛烈に土煙あげる何かが迫る。


 あの超合金合体ロボのフォルムのあれは…

 

 

 

----------


「やっと見つけたぞ、異界人。」

 ゴーレムに合体した姿は後ろ姿を一瞬見た事があるだけだった。

ヘソの部分に顔だけ出しているとは…


「どうしてここへ?」

「ドエルに言われてな。方角しか分からなかったから探し回ったぞ!」

 先生に援軍として呼ばれたらしい。

ドンちゃんが遠くから見え、気になって来てみたら俺達だったと。


「このゴーレムは中々見事だな。良い趣味だ。」

「ドンちゃんって言うんだよ!」

 そこは意気投合して欲しくない。

それにゴーレムじゃない。土人形だ。違いは分からないけど。


----------


「ほう、壁があるのか、そうかそうか。魔族の奴らめ小賢しい。」

「こんな物、こうだ!」

 ゴーレムの体を大きく捻ると、右ストレートを壁に叩き込む。


 ドンッという衝突音と共に巻き上げられた突風を、苺を抱えドンちゃんにしがみつき耐える。

 

 

 

 風が治まれば、目の前には赤黒い世界が広がっていた。


「相変わらず突き抜けてますね。」

 ニッコリ微笑むキヌアさん。目が笑ってなかった。

 

 

「エダとコンティとバリムの敵討ちだ!」

 バリムは健在だったはずだ。


 超合金合体ゴーレムは猛烈な勢いで、カルデラの中に現れた赤黒い世界に飛び込んでいった。

 

「俺達も行こう。」

「そうだね。杏子さんを助け出そう。」

 ドンちゃんの手に乗り、俺達は砦を目指し、赤黒い世界に飛び込む。




 空から魔物が襲って来るのを、セイと俺で必死に応戦して食い止める。

ここの魔素が濃いせいか、苺の魔法の炎は、火炎放射器の様に広がる。



「流石に数が多いね。」

「それでももう直ぐ砦に着く。」

「着いたら私の結界で守りますよ。」

 結界が張れるのは助かる。むしろ今張って欲しい。

動けないとか制限があるんだろうか。




「ゴオオオオオオオオオオ」

 この咆哮は援軍だ。

先生も到着したらしい。

 

 後ろを振り返れば、超合金ロボとドラゴンが大暴れしている様で、特撮映画の様相だ。



「苺ちゃんは私に任せてね。」

 砦に着くと、ドンちゃんにおろして貰い、セイと二人内部に突入する。

キヌアさんは結界で、苺を守ってくれる。


「ハァッ!」

 セイはここぞとばかりに、魔族相手に戦いを挑む。

俺は杏子の捜索に手も頭も一杯だ。


「あんずー!俺だ、康平だ!返事をしてくれ!」

 捜索に夢中で、入り組んだ内部の手伝いもあり、セイともはぐれてしまった。



「ギャオー。」

「ここも違う。」



「グルルルルルル。」

「ここも違う。」



「こっち、おまえ。」

「ここも違う。」



 んん?


「こっち、こっち。」

「お前、何者だ。」

「てきちがう。おやこっち。」


 どう見ても魔族だ。

それなのに言葉は『二つ目の可能性』を介していない。


「魔族がどうして助ける?」

「まぞくちがう。」

 二度目になるけど、どう見ても魔族だ。

このままでは埒が明かない。




「…案内しろ。」

 いつでも斬り掛かれる態勢で、案内される方へ進む事にした。

 

 

「ここ。」

「先にいけ。」

 案内する魔物が入った部屋には、氷の柱が12本。

中には女性が閉じ込められ、眠っているかのようだ。


「これは…生きてるのか?」

「しぬ、ちがう。」

 死んでないと言う事か。

柱を一つ一つ見て確認していく。


 そして





 俺は遂に、

 

 彼女を見つけた。

 

 

 

  杏子

  

  杏子

  

  杏子


 逢いたかった。

 

 やっと、やっと、君を見つけ出せた。

 

 

 氷の中の彼女に縋(すが)るように崩れる。


 随分、待たせたな。

 

 一緒に帰ろう。

 

 

 

「いそげ。こっち。」

「ありがとう…、ありがとう…」


 運び出す為の装置があったようで、それを使い外に全て運び出した。

 

 

「お前、どうするんだ?魔族じゃないんだよな?」

「おれ、まかい、いく。」

「そうか、事情は分からないが、ありがとう。感謝する。」

 そこで謎の魔族とは別れ、柱をドンちゃんに載せる。

 

「ママだ!」

 苺も杏子の柱を見て、喜んでいる。

もうとっくに確信していた。今更安心するまでもない。苺は俺の娘なんだから。



「セイ!見つけたぞ!」

 セイを回収して、赤黒い世界を脱出する。


「終わったようだな!こんな物こうしてこうだ!」

 ゾクウは再び拳を振るい、赤黒い大地に突き立てる。

ガラスように、放射状にヒビが広がり、一気に弾けると、本来のカルデラの姿を取り戻した。


 取り残された魔族も、ドラゴンに次々呑み込まていく。


 あいつは無事に、魔界へ行けたんだろうか…


「これ、ただの氷じゃないねえ。」

 セイが柱を観察してそう呟く。

簡単に溶かせる物でもないと思っていたけど、どうしたものか。


「貸してみなさい。」

「あんたは粉々にしそうで…」

 失礼な、とゾクウが触れると氷の柱は、杏子を残して跡形もなく消え去った。

 

 立っていた柱の支えを失い、杏子が倒れるのを両手で抱きしめ、そっと横にする。

眠っているようで、目覚めはしなかった。


「ママ起きないね。」

「そうだな…」



 ゾクウが他の柱も同様に消し去り、用事は済んだから帰ると言い残し、慌ただしく走り去っていった。

 

「あの人も先生と同じで底が知れないな。」

「あやつは突き抜けすぎじゃ。魔王だって倒しかねんわ。」

 魔王か…勇者が戦う相手だと思うんだけどな。

 

「ワシらも帰るか。他の母親は、子供の居るボウムルへ送ってやるでの。」

「お願いします。」

 俺達も帰ろう。コーン達の元へ。

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