27話
借りた物は持ち主の元へ。
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「少し休憩しようか?」
「はーい!」
ウィバリム低層。現在地だ。
2日入って1日休息を繰り返し、2週間過ぎた。
苺もダンジョンに慣れてきたようだが、戦いに参加はさせていない。
先生に剣を教えて貰っていないし、何より俺がさせたくない。
休憩中、苺は例の毛布に包まって、魔法の灯りで周囲を照らしてくれる。
油の用意もしてあるが、苺のお陰で随分と節約出来ている。
ウィゾクウでは周囲に気を配る余裕を持てなかったが、ここは低難度のお陰か他の冒険者もチラホラ見かけた。
すれ違う…と言っても暗黙の了解か遠巻きに接触する程度だが、苺を見られる度に怪訝な顔をされた様に見えた。
まだ小さい子供をダンジョンに連れてくるのは、この世界でも非常識なんだろう。
俺も納得はしたが、進んで連れてきている訳じゃないんだけど。
最初の頃は、そこそこ魔物が見られた。
デカい芋虫の魔物を見た時は、苺だけでなく俺も悲鳴を上げそうになった。虫はやめようよ。
ここ数日は、魔物も随分探さないと見つからない。
今は先へ進めないので、魔物を倒していくのが目的と言ってもいい。
俺はこれでも勇者の弟弟子だ。
思った以上にダンジョンの魔物を駆逐中なのか。なんて少し鼻を高くする。
そんな事は無かったようで、思わぬ人物に出くわす事になった。
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「ヘイヘイヘイ、そこのあんた、あんただヨォ。」
癖のあるリズム感で話しかけられ、目線を移す。
チェケラーとか言い出しそうな、ダボダボな服を着ているのか、体に引っかかってるのか、動きにくそうな格好をした男が立っていた。
「俺のダンジョン、魔素が足りねぇ、あんたの嬢ちゃん、入れさすな。」
ビシィッと伸びた人差し指を俺に向け、決まった。みたいな顔をされる。
「…どういう事だ?」
「いやあのね~、あんた旦那の言ってた例のアレだろ~?困るんだよね~、うち零細だからさ~、ほんと頼むよ~。」
良かった、普通に話せるらしい。
ゾクウから俺達の事を聞いているようで、苺の魔素を吸収する事も把握済みだった。
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彼はここのダンジョンマスター。
名前は聞いてないが、恐らくバリムだろう。
俺達がやってきたのは把握済みだったと。
ダンジョン内部の事は見えるのだとか。女冒険者の着替えも見放題と自慢していた。
念のため苺を覗いてないだろうなと確認したが、たわわに実った女以外に興味はない。と断言していたので、多分大丈夫だろう。
最初のうちは気にもしていなかったが、最近入ってくる魔素が減少の一途を辿り、魔物を生み出す為の魔素の貯蓄を殆ど使い切ってしまったのだと。
心当たりは一つしかなく、苺がダンジョンに流れ込んで来た魔素を横取りする形で吸収しているんだろうと。
「ダンジョンは魔素を失くす為の物なんだろ?魔素が減るのはいい事じゃないか?」
魔素を永続して吸収してくれるならそれでもいい。
でも人の身でそれは出来ないから困るのだと。
更に言えば、魔素不足で魔物が減れば、冒険者も離れる。
一度離れた冒険者が戻ってくる迄に随分掛かってしまう。
その間、魔素の浄化サイクルが滞り、結局運営が破綻してしまうと。
そして今、ダンジョンの最深部に連れてきてもらっている。
移動は例の穴。苺はちょっと怒ってた。
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「ここが魔素の吸収部分なのか?」
「魔吸儀さ!」
ウィコンティや、ウィゾクウでも見た祭壇の上に座る球体。
これが魔素を吸い込む設備だったようだ。
「苺、この球に向けて魔法の…光でいいと思う。撃ってみてくれるか?」
「はーい。」
ここに来たのは試したかった事があったから。
魔法は時間を置いて魔素に還る。その還った魔素をダンジョンが吸収出来るのか気になったので今それを確認中だ。
「う~ん、溜まらないね~…いや、来たよ~来たよ~!」
魔法が魔素に戻るまでには数分掛かる。
しばらく様子を見てみれば、どうにか成功したらしい。
「苺、もっと魔力を込められるか?」
「う~ん、多分?」
うーんと唸る苺の指先から射す光が、徐々に強くなり陽の光のような眩しさで球を、そして室内を照らし始める。
「うぉ~眩しいね~魔法は凄いね~。」
俺も直視出来ない為、もう少し絞ってもらい、10分程魔法を当て続けると、魔素は十分に溜まったらしく、そこで終了した。
「ちなみに、ここの到達者にはどんな物を与えてるんだ?」
「なんだいそれは~?」
ウィゾクウでの事を話すと、それはゾクウの遊びだろうと。
「そうだね~、俺に勝ったらここを進呈ってのも、面白いかもね~。」
聞けばダンジョンマスターの権限は移譲出来るらしい。
「なあそれって、ウィコンティは誰か…恐らく魔族に権限が移ってるのか?」
ウィコンティのダンジョンマスター、コンティは恐らく魔族に害されたと思われる。
ゾクウの強さを知った今、ダンジョンマスターを倒せる存在が居るのか不思議でならないが…ゾクウはそう言っていた。
「簒奪は無理さ。」
合意でのみ権限の移動、つまり移譲以外の方法は無い。
いや、少なくとも知らないという話しだ。抜け道が100%無いと言う自信はないと。
「バリム…だよな?、バリムは誰から譲り受けたんだ?」
バリムは初代。知る限りで代替わりしたダンジョンは無いと。
移譲出来る。というだけで実行者は居ないらしい。
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賢人の作ったダンジョンは無人で管理されていた。
ところがいつの頃か、無人での管理に異常が発生し、魔物がダンジョンから溢れる事態に。
それを食い止める為、当時の冒険者達が機能を止めるべく最深部まで仲間の屍を乗り越え到達。
止めるはずだった管理機能は、有人で実行が可能だった。
それをこの地域で最初に成し遂げたのがゾクウ。
当時最強と言われた冒険者の一人だった。
そこからは、ダンジョンマスターとなったゾクウの手を借り、次々にダンジョンは機能を無人から有人へと切り替えていった。
但し、一人で管理出来るダンジョンは一つだった為、それぞれ選ばれた者がダンジョンマスターとして登録された。
そしてダンジョンの名前は、それまでの名を捨て、ダンジョンマスターの名を冠する事になった。
この地域で決まった事なので、他の大陸などはどうなのか知らないと。
ダンジョンマスターに成る代償として、人の理から外れる。
賢人が仕込んであった、機能の一つだ。
有人で実行中、権限を移譲しないまま寿命が尽きてしまうと、ダンジョンの管理に誰も手が出せなくなってしまう。
その防止措置だろうと。
これが大凡500年程前の話しだそうだ。
つくづく思うけど、賢人って何者だろう。
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「なるほどな。面白い話しだった。」
「ゾクウの旦那は~、化物さ~。」
それは心底同意する。
「魔素もだいぶ返せただろう。魔物も枯れる事無く続けられると思う。」
魔素を返した理由は、苺のせいでウィバリムの冒険者が離れていくのを防ぎたかったから。
最近の魔物の数が激減していたし、迷惑を掛けてしまったようだ。
「それから最後に、旦那から言伝だ--」
「分かった、ありがとう。」
別れを告げ、モグラの気分になりながら、地上へ送ってもらう。
視界が開けた先には、初冬の澄んだ夜空に満天の星空が広がっていた。




