↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/44

19話

自己紹介は簡潔に。


----------


「なんだあれ…」

 見慣れない物への警戒心と好奇心が入り交じる。

野うさぎの周りをフワフワ漂う、白い半透明の綿毛のような物を眺めていた。


 その漂うものは1メートル程あり、森の隙間から射す夕日を浴びてキラキラと輝き、得も言われぬ美しさがあった。

 

「自然現象か・・・?」

 磁気や大気の織りなす神秘的な光景は、地球にも数多く存在した。

この世界にも俺の知らない自然現象はきっと数多くあるだろう。


 あまりの光景にもっとじっくり見たいと。

 

 無意識にそして無防備にそれの元へと進んでしまった。




(あら、この子を助けてくれた人だわ。)

 突然の声に驚き、周囲を見渡すが人の気配は感じない。

声がした方向もよく分からなかった。


(クスクス、どうしたのかしらこの人。)

 キョロキョロと慌てる姿が面白かったのか、そうかそうか。

幻聴でもなかったらしい。

 

「おい、誰だ!出てこい!」

 どこから聞こえるかも分からない声に焦りが生じ、声を荒げる。

分かってる。こんな事を言われて出て来るパターンは無い。


(この人、私の言葉が聞こえているのかしら?)

「だから誰だ!姿を見せろ!」


(あら、本当に聞こえてるみたい。ここよ~ほら目の前に居るじゃない。)

「目の前って…えっお前か?」

 目の前に居るのは、こっちをじっと見据え、鼻をヒクヒクさせる野うさぎ。

野うさぎの声が聴こえるって…


 二つ目の可能性が作用したのか。

もう野うさぎは食べられそうにないな…


(違うわよもう!私はこっち!)

 目の前には野うさぎ…と、傍らフワフワ浮かぶ白い半透明の何か。

どうやら自然現象ではなかったようだ。


「すまない、取り乱した。君…でいいのか分からないが何者だ?」

(私の事を知らないなんて、失礼しちゃうわ!)

 若干へそを曲げられたが、知らない物は知らない。

コーン達からこんなのが居るなんて聞いた事ないしな。


(私は雪よ!)

「雪…ね。」

 俺の知っている雪とは随分違う。

雪はしゃべらないし、意思があるとは思えない。水分が凍った気象現象の一つだ。


 この世界は異世界人に優しくない。もうちょっと説明をしてくれ。


「じゃあ俺はこれで。雪さん達者でな。」

(ちょっと待ちなさいよ!人と話したの初めてなんだから、色々お話ししたいの!)

 その割には自分の説明が簡潔すぎだろ。

それに暗くなってしまうし早く戻りたい。


 結局雪と名乗る何かは、馬車まで着いてくる事になってしまった。

害は無さそうだから、諦めよう。


----------


「ただいま。今日の収穫は雪…だ。」

 折角仕留めた魔物は、辺りが暗くなってしまって見失ってしまった。

焚き火の灯りを頼りに、なんとか馬車まで戻ってこれた。


「コーヘー、サボった言い訳にしては苦しいぞ。」

 サボり疑惑を払拭するべく、雪さんを紹介する。


「ほえ~。精霊か。人前に現れるなんて珍しい。」

「私、生まれて初めて見ました。」

「私も間近で見るのは初めてよ。」

 雪じゃなく、雪の精霊という事が判明した。

三者三様の反応が返ってきたが、アイシスさんはこれが精霊なんですねという。


 そこまで有名じゃないんじゃないの?


 案の定、会話が出来るのは俺だけだったようで、晩飯の間ずっと通訳をさせられた。

 

「パパ凄いよ!ユッキー凄い綺麗!」

 苺がユッキーと名付けた雪の精霊に魔法の光を当て、天然のミラーボールが出来上がった。

 

(きゃ~私輝いてる!今とっても輝いてるわ!)

 うんそうだね。意味は若干違う気がするけど、輝いてるね。

 

----------

 

「じゃあ俺達は行くから、元気でな。」

(ちょっと待ちなさい!こんな事、滅多にしないんだからね!)

 ぶわっとユッキーの姿が人の形に変わり、俺の頬に可愛い口づけをしてくれた。

雪だからか、ちょっと冷たい。


「ちょっとパパ!ママに言いつけるんだから!」

 見ていた苺が、頬を膨らませ可愛く怒る。

ただの挨拶だよ。多分そうだと思う。


 やましい事はないけど、…杏子には内緒にしてて欲しい。

 

 


 皆で手を振り、ユッキーに別れを告げながら馬車を進める。

 

 ドエル村までは、まだ距離がある。

雪に埋もれない内に着ければいいなと、手綱を持つ手に力を込めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。