19話
自己紹介は簡潔に。
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「なんだあれ…」
見慣れない物への警戒心と好奇心が入り交じる。
野うさぎの周りをフワフワ漂う、白い半透明の綿毛のような物を眺めていた。
その漂うものは1メートル程あり、森の隙間から射す夕日を浴びてキラキラと輝き、得も言われぬ美しさがあった。
「自然現象か・・・?」
磁気や大気の織りなす神秘的な光景は、地球にも数多く存在した。
この世界にも俺の知らない自然現象はきっと数多くあるだろう。
あまりの光景にもっとじっくり見たいと。
無意識にそして無防備にそれの元へと進んでしまった。
(あら、この子を助けてくれた人だわ。)
突然の声に驚き、周囲を見渡すが人の気配は感じない。
声がした方向もよく分からなかった。
(クスクス、どうしたのかしらこの人。)
キョロキョロと慌てる姿が面白かったのか、そうかそうか。
幻聴でもなかったらしい。
「おい、誰だ!出てこい!」
どこから聞こえるかも分からない声に焦りが生じ、声を荒げる。
分かってる。こんな事を言われて出て来るパターンは無い。
(この人、私の言葉が聞こえているのかしら?)
「だから誰だ!姿を見せろ!」
(あら、本当に聞こえてるみたい。ここよ~ほら目の前に居るじゃない。)
「目の前って…えっお前か?」
目の前に居るのは、こっちをじっと見据え、鼻をヒクヒクさせる野うさぎ。
野うさぎの声が聴こえるって…
二つ目の可能性が作用したのか。
もう野うさぎは食べられそうにないな…
(違うわよもう!私はこっち!)
目の前には野うさぎ…と、傍らフワフワ浮かぶ白い半透明の何か。
どうやら自然現象ではなかったようだ。
「すまない、取り乱した。君…でいいのか分からないが何者だ?」
(私の事を知らないなんて、失礼しちゃうわ!)
若干へそを曲げられたが、知らない物は知らない。
コーン達からこんなのが居るなんて聞いた事ないしな。
(私は雪よ!)
「雪…ね。」
俺の知っている雪とは随分違う。
雪はしゃべらないし、意思があるとは思えない。水分が凍った気象現象の一つだ。
この世界は異世界人に優しくない。もうちょっと説明をしてくれ。
「じゃあ俺はこれで。雪さん達者でな。」
(ちょっと待ちなさいよ!人と話したの初めてなんだから、色々お話ししたいの!)
その割には自分の説明が簡潔すぎだろ。
それに暗くなってしまうし早く戻りたい。
結局雪と名乗る何かは、馬車まで着いてくる事になってしまった。
害は無さそうだから、諦めよう。
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「ただいま。今日の収穫は雪…だ。」
折角仕留めた魔物は、辺りが暗くなってしまって見失ってしまった。
焚き火の灯りを頼りに、なんとか馬車まで戻ってこれた。
「コーヘー、サボった言い訳にしては苦しいぞ。」
サボり疑惑を払拭するべく、雪さんを紹介する。
「ほえ~。精霊か。人前に現れるなんて珍しい。」
「私、生まれて初めて見ました。」
「私も間近で見るのは初めてよ。」
雪じゃなく、雪の精霊という事が判明した。
三者三様の反応が返ってきたが、アイシスさんはこれが精霊なんですねという。
そこまで有名じゃないんじゃないの?
案の定、会話が出来るのは俺だけだったようで、晩飯の間ずっと通訳をさせられた。
「パパ凄いよ!ユッキー凄い綺麗!」
苺がユッキーと名付けた雪の精霊に魔法の光を当て、天然のミラーボールが出来上がった。
(きゃ~私輝いてる!今とっても輝いてるわ!)
うんそうだね。意味は若干違う気がするけど、輝いてるね。
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「じゃあ俺達は行くから、元気でな。」
(ちょっと待ちなさい!こんな事、滅多にしないんだからね!)
ぶわっとユッキーの姿が人の形に変わり、俺の頬に可愛い口づけをしてくれた。
雪だからか、ちょっと冷たい。
「ちょっとパパ!ママに言いつけるんだから!」
見ていた苺が、頬を膨らませ可愛く怒る。
ただの挨拶だよ。多分そうだと思う。
やましい事はないけど、…杏子には内緒にしてて欲しい。
皆で手を振り、ユッキーに別れを告げながら馬車を進める。
ドエル村までは、まだ距離がある。
雪に埋もれない内に着ければいいなと、手綱を持つ手に力を込めた。




