20話
里帰りしてますか?
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「おや、あんた!名前はほら…えーっと…」
「コーヘーです。カミラおばさん。お久しぶりです。こっちは娘の苺です。」
「あべ苺です!」
おやまあ。なんて再会の挨拶を済ませる。
「うちの…息子は一緒じゃないのかい?」
聞くのが怖いのか、恐る恐る口を開く。
この世界、恐らく出て行ったきり帰らぬ人になってしまう事は多いだろう。俺の左手を見てしまったのも原因かな。
「ほらコーくん、お義母さんなんでしょ!」
「おう…お袋…ただいま。元気…してたか。」
アイシスさんに袖から引っ張り出されて、バツが悪そうに呟く。
あんたは心配かけてと拳骨を貰ったコーン達を見て、懐かしい場面をまた見れて少し目頭が熱くなった。
続けてアイシスさんとトルンの紹介で、カミラおばさんは驚きと喜びで目を回しそうになった。
しばらく滞在する事を相談すると、近くの空き家を紹介してくれて、ジュレさん達と俺達はそこで寝泊まりする事にした。
流石にアンキド家に、大人数が寝泊まり出来る部屋はなかった為だ。
コーン達は勿論アンキド家だけど。
苺を連れて村を少し回ると、故郷に戻ったような、懐かしい気分になった。
思えばこの世界で目を覚まし、右も左も分からないような人間を受け入れてくれたこの村は、俺にとって掛け替えのない場所かも知れない。
アンキド家に戻り、カミラおばさんにゲイン先生の事を聞くと、まだこの村で元気に暮らしていると分かった。
村に来るまでの時間、ゲイン先生が亡くなっていたり、引っ越していたりしたらと心配もしていたが、ひとまずは安心できてよかった。
「コーン、準備はいいか?」
「やだなあ。行きたくねえなあ。」
駄々を捏ねるコーンを、子供たち3人が引きずって俺の後に続く。
「先生、すいませんでした。」…でした。」
「このバカ弟子共がぁ~、このたわけ者!たわけ者!」
パコーン、パコーンと杖で俺達の頭を叩くも、苺にパパをいじめないで。とお願いされて困った顔をしていた。
娘よ、素晴らしい援護射撃だ。
ゲイン先生に再び修行を付けて下さいとお願いすると、次はないぞと釘を刺された。
「それでお主、左手はどうしたんじゃ?」
ダンジョンで失った経緯を話すと、また俺の頭に杖が落ちた。
自業自得だったし、仕方ない。
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「パパ見て見て~、ガオー!」
苺が怪獣の真似をして口から魔法の炎を吐き出した。
どこでそんな怪獣の知識を拾ってきたんだ。
トルンとカイが苺に追い回されて、割りと必死の形相になってる。
苺はもう少し手加減してあげて欲しい。
先生が苺の魔法を見て、面白い子じゃと関心していた。
俺とコーンは先生の元で猛特訓中だ。
義手を失ったお陰で、片手の状態に戻ってしまったのが辛い。あの義手はかなり便利だった。
トルンとカイも剣の修行を初めた。
体のズレの修正という地味な事はせず、子供達は木の棒でチャンバラだ。
先生曰く、幼いうちは基礎なぞやってもすぐ飽きる。
遊びながら慣れさせる方がいい。という話しだ。
確かにあの半年間は、非常に詰まらなかった。
それでも、あれが有ったからこそ今の俺があるんだと思う。
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セイがドエル村に着いたのは1年ほど前。
西方の街々で手間取り、更に雪で足止めをされ大幅に到着が遅れた。
尚、西方でも杏子の消息は掴めなかったようで、何も手掛かりは無かった。
申し訳なさそうな顔をされたが、苺は未だにママは生きてるから大丈夫と言ってくれる。
判明した事もあった。
セイに感じた既視感。なんとセイに剣を教えたのはゲイン先生だと。
ゲイン先生が凄い人なのは感じていたが、勇者の師匠とは恐れ入った。
そんな人が何故こんな小さな農村に引っ越してきたのかよく分からないけど。
お主も未熟じゃ。と現役勇者に駄目出しをして、今は一緒に修行に励んでいる。
セイは師匠にはまだまだ敵いませんね。と爽やかに返してた。
修行は1年程でという見込みは崩れ、実に2年半が経過していた。
村を抜け出す前に聞いていた、後2年待てという言葉から、村を出た後の鍛錬分を少なめに引いたのが1年だったのだが…
魔族の事、苺の事などを話すと2年。という事になった。
それと山の雪が溶ける7月まで修行の継続だと先生の指示だ。
今は7月。カイは先月4歳になった。
ゲイン先生からは、まあいいじゃろう。という半分おまけで許しを得られた。
「これをカリエマのバーンに持ってけ。きっと役立つじゃろ。」
セイが先生から紹介状を受け取る。
バーンさんは鍛冶屋らしい。3通貰ってたからコーンと俺の分もありそうだ。
「お主への餞別じゃ。これを北のボウムルの神殿で見せい。」
内容は、治癒の奇跡を受ける為の紹介状。
随分前に筋肉さんに聞いた欠損部位の再生方法だ。
もう左手はとっくに諦めていたけど、こうして得られるとは思ってもみなかった。
「…ありがとうございます。」
ゲイン先生にも、何から何までお世話になって、この村は異世界人に優しい。
どこかのダンマスや精霊とは大違いだ。
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次の予定は繭探し。
セイの伝手で各地のダンジョンの捜索は開始されているが、俺達も出来る範囲で手伝おうという事に。
ゲイン先生からの餞別を頂いたため、向かうダンジョンは、方向的にはカリエマの北、ウィバリムでいいだろう。
俺と苺は北の山脈を越えボウムルへ。他は一度カリエマへ。
互いに用事を済ませ、ウィバリムで合流する事に決定した。




