↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/44

17話

忘れ物を気づいた時にはもう遅い。


----------


「全く何が何なのか、訳がわからないよ。」

「同感だ。」

「ゲホッ、死ぬかと思ったぜ。」


 あっという間の出来事で、何がどうなったのか。

分かる事といえば、白ローブが潰されて無かった事。


 そして目の前に、見るも無残な魔族が転がっている事だけだ。

 

 コーンは魔族に一撃を貰っていて、苦しそうだが、見た限り大丈夫そうだ。

俺の義手は使い物になりそうにない。…仕方がない。諦めよう。

 

「ふ~ん、なるほど。それで?」

「そうか、そうか。」

 白ローブはまだ息のある魔族を、ウリウリと虐めながらも何かブツブツと話しをしている。

正直あれを一瞬でも見た以上、白ローブに迂闊な真似は出来ない。


 あいつは規格外だ。

苺に異変が起こった時、斬り掛からなくて良かった。


 白ローブ曰く、苺の命に別状はないと。

ゴーレムが抱き上げ、白ローブが毛布の様な物を掛けてくれた。


「まずこの子、魔素を吸ってるんだ。あまりダンジョンには入れない方がいい。」

 お前が連れてこさせたくせにと言い掛けたが、後から判明した事を言っても仕方ない。

 

 魔族から聞き出(ごうもん)した結果、魔吸緋(まきゅうひ)と呼ばれる魔素を吸収する石が苺には植えられている。

魔族の手によって。


 胎内で石を植えられ、ウィコンティのダンジョンで繭を揺り籠として苺は誕生した。

コンティはその時、又はそれ以前に害された可能性がある。


 石を植えられた異界の胎児は苺以外にもいるそうだ。


 白ローブの推測では、魔族は基本的に直接この世界に干渉出来ない。

よって、別の世界に干渉してこちら側に押し込んだ可能性があると。


 理由の一つは恐らく先程の世界と魔界を繋ぐ穴。

繋ぐ理由は分からない。侵略なのか、インフラ事業なのか、通商締結なのか不明だ。


 世界の共通認識として、魔族と人類は敵対している。

決して良いことではないだろうとセイは言う。


 石が溜め込める魔素の量は膨大で、魔素が溢れ逆流すると、世界の隔絶に綻びが生まれる。

魔素が境界を歪めるのだと。


「なんでダンジョンなんだ?見つかりにくいからか?」

 繭が何故ダンジョンにあったのか?

魔素を吸うからダンジョンには入れるなとはなんなのか?


 以前にも気になった覚えがある。

ダンジョンってなんなんだ?


 ダンジョンだろ。とコーンに言われたっけ。なんて思い出す。

 

「…面倒だがダンジョンの成り立ちから話そう。」

 これまた長い話しかもしれん。失敗だったか。

 

----------

 

 要約すると、世界に漂う魔素は、淀むと魔物に変質する。

形状は擬態なのか、模倣なのか近くに生息する動物に似せられる。


 魔物となった魔素は、死んでも魔素に還る事はなく、土に還る為、魔素の浄化として機能している。


 しかしこれは無秩序で無計画で、人々の手を煩わせた。

どこに生まれるかも分からない。

どれだけ生まれるかも分からない。

成り行きまかせで不安も募る。

 

 そこで賢人が大規模な魔素の浄化施設として、ダンジョンを世界各地に作った。

 

 ダンジョンは魔素を吸収し、魔物を生成する。

魔素の吸収量、内部の構造、魔物の生成量などを、ダンジョンの管理人。

ここの白ローブを初め、いわゆるダンジョンマスターが管理する。


 生まれた魔物は、死んで初めて浄化のサイクルが完了する。

よってより多くの魔物を倒してもらう為、マスターはダンジョン運営に頭を悩ませるらしい。


 ダンジョンのお陰で、野生の魔物は徐々に減り、人の暮らしが安定したという。

 

 ダンジョンにはより多くの魔素が集まる。

その集まった魔素を石に吸収させるため、繭がダンジョンに置かれたのだろうと。


 そして、苺の魔素が溢れさせない為に、ダンジョンには入れるなという事だ。

 

----------


「ここに入って急に苺ちゃんの逆流が始まったのはなんでだ?」

 確かにコーンの疑問は尤もだ。

今までなんの兆しも無かった。ここに何かあるのか?


「聞きたい?いやぁどうしようかな?教えようかなあ?」

 白ローブは人をイライラさせる天才だ。

 

「私のダンジョンは優秀だからな!魔素の量も桁違いだ!」

 自慢か。

ここの膨大な魔素を吸ってしまい、許容量を超えてしまったのだと言う。


「それと君、君はもしかすると異界の人なのか?」

「この世界とは別の生まれだ。」

 結局白ローブにも洗いざらい聞かれてしまい、話すしかなかった。

あの魔族を見た後じゃ、全部話す以外になかった。


 魔族の言葉が少し分かった事について、白ローブから答えは得られなかった。

人間には分からない言語であること。

ダンジョンマスターは人の理(ことわり)から外れ、言語の概念がなくなる事。

言語の概念がなくなり、相手の思考に乗るとか理解しにくい事を言っていた。


 その条件で考えれば、俺は人の理から外れた存在になってしまう。

いつの間にか人間を辞めていた説が浮上しそうになるが、俺には心当たりがある。


 恐らく俺の二つ目の可能性。

気持ちを伝えるための言葉。


----------


 俺の事を一通り聞いたあと、私の名前はゾクウだと教えてもらった。

なんとなく予想はしてた。

ウィコンティのマスターはコンティ。

ウィゾクウのマスターだからゾクウなんだろうと。


「しかし参ったね。苺ちゃんの様な子が他にもまだ居るって事だろう?」

 そうだった。他にも異界…地球を指すかは分からないけど、胎児がこの世界に送られているんだ。

 

「しかも話しを聞く限りじゃ、ダンジョンの中って事だよねえ…」

 セイは心底困った様に呟く。

 

「世界にダンジョンっていくつあるんだ?」

「無数にあるよ。だから困るのさ。」

 わらの中から針を探すか。途方もないな。

 

「私は知り合いのダンマス(ダンジョンマスター)に、連絡をとって色々聞いてみるとしよう。」

 ダンジョンマスター組合みたいな物があるんだろうか。

 

「僕はそうだね…西の街々の伝手を使って各地に呼びかけるよ。」

 個人でどうにか出来る話しじゃなさそうだしな。使える伝手は使うべきだ。

 

 ゾクウに外まで送ってやると言われ、セイ達は青ざめた表情のまま天井に押し上げられた。

そして俺と苺も送られる。


「この毛布はある程度の魔素を弾くから使うといい。」

「娘は魔法を学びなさい。魔法を使えば体内の魔素は減る。」

 やけに親切なゾクウが逆に怖い。

 

「ありがとう、助かる。」

「なに、二人分の望みを叶えてないからな。」

 そういえば、と思い出したときにはモグラになっていた。


----------

 

 地上に出てみれば、フラフラの二人が待っていた。

 

「コーヘー達はどうするんだい?カリエマに帰るのかい?」

 実のところ、これからの事はまだ決めてなかった。

ここに来たのも、生活費の為という情けない事情だったわけで。


 ただ今回の一件で、自分の力の足りなさを心底味わった。

魔族には手も足も出ない。そんな状態だ。


 魔族はセイに任せればいい。

以前はそんな気持ちも何処かにあった。

 

 だけどあの魔族は苺を探していた。

また魔族が現れる事もあるかも知れない。


 その時、セイが傍に居るとは限らない。

その時俺しか居ないかも知れない。


 その時俺は…

苺を守れる強さが欲しい。





 強さを乞う宛ては一人だけ。

俺とコーンの師匠、ゲイン先生。


 俺達はあの頃から比べれば、十分強くなった。

だからこそ分かる、ゲイン先生は間違いなく一流の冒険者だ。


「先生の元に戻り、鍛え直そうと思う。」

「げぇ、まじかよぉ…」

 コーンが酷い顔をする。先生もそうだが、カミラおばさんも居るしな。

 

「ジュレとカイも連れて行ってもらえないかな?」

 西方各地へ移動するとなると、一人の方がいいと俺達に託す事に。

1年くらいはドエル村に滞在すると伝えると、滞在中にはドエル村に行くと約束をした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。