14話
冒険者だけでなく勇者だって、生きていくにはお金が必要なんです。
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見知った顔の人物は、どこかバツが悪そうな爽やかさに陰りの見える笑顔だった。
「セイこそ、こんな所でどうしたんだ?」
俺達はダンジョンに稼ぎに来たんだと説明すると、彼の目がキラリと光った気がした。
「そういう事なら僕と一緒に行こうよ。僕も丁度手が欲しかったんだ。」
「セイは今一人なのか?ジュレさんはどうした?」
「いやぁ、それがねぇ…」
キレの悪い返事をする。
鈍感主人公は愛想をつかされて逃げられたのだろうか?
「実はね、…僕達結婚したんだ。」
「それは喜ばしいことじゃないか、おめでとう。いつ結婚したんだ?」
聞けば、結婚したのは昨年。
結婚したきっかけの方が問題だった。
それとセイとジュレさんの間には子供が生まれていた。
昨年の6月に生まれたというので、もうすぐ1歳。
おかしいなぁ、計算が合わないですなぁ。なんてゲスい思考が頭を過る。
いわゆる「できちゃった結婚」だ。
勇者がデキ婚という、なんとも世間じみた世界だなぁ。
勇者といえど、一人の男だしな。そういう事もあるよな。
この世界の貞操観念が分からないけど、このバツの悪そうな感じはそういう事だろう。
セイがここに来ていた理由は、ダンジョンの最深部の調査。
ジュレさんと二人でやってきて、攻略を進めていたが、ジュレさんが妊娠、そして出産。
セイはそれでも一人で進めていたが、限界を感じて攻略が頓挫していた。
苺達はセイの借家に住まわせてもらう事に。
借家住まいの勇者。もう何も言うまい。セイも苦労してるんだ。
セイの息子はカイ。カイ・シュビアイウス。
カイもトルンもまだ小さい為、苺が私がお姉さんだからと張り切ってた。
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「大船に乗ったつもりで俺に任しとけ!」
コーンも交えて3人で作戦会議だ。
最深部ということは、前回同様マスターが不在なのかも知れないな。
最悪のパターンは、また繭がある場合。
中から出てきた子供にパパと懐かれた場合が一番困る。
苺を疑う訳ではないが、俺の積み重ねた仮定がひっくり返ってしまう。
元より仮定の上に重ねた仮定だ。客観的に見れば信憑性は怪しいのだが。
「買い出ししなきゃな。」
「油のストックは多めに頼む。」
「そう…だな?」
真意は分からなくていい。オッサン3人の裸は誰も見たくはないだろう。
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「ここは今までより魔物が多くないか?」
「ダンジョンはこんなもんだよ。」
「冒険してるって感じでいいじゃねぇか。」
まだそれほど進んでいない低層でも魔物との遭遇頻度が高い。
高難度ダンジョンはこういう物なのか。前回はダンジョンが死んでいたみたいだし。
それでもセイのお陰か、俺達の足を止められる魔物は居らず、駆け足で突き進む。
今日の晩御飯はダチョウっぽい魔物の肉だった。
魔物は近くに生息する動物に似せて生まれるという話しだったけど、ダンジョンの魔物はその規則の外らしい。
今更だけど、馬頭や牛頭の動物なんか居ないもんな。
「このペースなら3ヶ月くらいで辿り着けるかもね。」
「このペースでも3ヶ月も掛かるのか。ダンジョンは奥が深いな。」
「上手いこといってんじゃねぇよ。ダハハハハハ。」
上手いこと言ったつもりはなかったけど、コーンが満足したならそういう事でいいか。
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「だいぶ魔物の質も上がってきたんじゃないか?」
「そうだね、無理はしないように頼むよ。」
「まだまだこれくらいどうってことねぇよ。」
セイとはウィコンティで少し共闘の経験があったけど、それだけでないと思える程に息を合わせやすかった。
そう、以前も感じた既視感。
はっきりこれだと言えるような物はないが、動きが分かる。
不思議な感じがした。
「おっ、あそこにあるぜ。」
「これで5つ目だな。」
ダンジョンの中は魔物だけじゃない。ちゃんと報酬が備わっている。
宝箱だ。誰が置くのか、誰が入れるのか、何の為なのか分からない。
だが、俺もコーンもこれが目的で今回ダンジョンを目指したのだ。
意図など中身さえ貰えれば、どうでもいい些細な事だ。
家庭を持つ働き手にとって、大事なのは謎の意図より養っていく為の生活費なのだから。
ファンタジーなのにドリームがない。
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「そろそろ最深部だと思うよ。前も言ったけど、いつでも逃げられるようにね。」
「いつでも掛かってこいってんだ。」
体感で3ヶ月半ほどか、太陽が見えない以上、一日が分からないので合ってるかは怪しい。
「この先だ。間違いない。」
ゴクリと、本当に音がでるほど唾を飲み込んだ。
蛇が出るか鬼が出るか。興味半分、恐怖半分でセイの後に続く。
「おめでとう!」




