13話
果報は寝て待てといえど、寝ているだけでは果報は来ない。
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「パパ、また私のオヤツ食べた!」
もうすっかり小うるさくなった娘は6歳になった。
そんなだからプニプニなんだよ。と嫌な事を言う。
中年なんだ、腹回りくらい好きにさせて欲しい。
それにこれでも締まってる方だ。訓練は欠かしていない。
カリエマに戻ってから3年。
進展したこと、そして進展しなかった事、様々だ。
娘の年齢は2年前に、教会が運営している孤児院の子供たちと比べて決めた。
誕生日は、ダンジョンの繭から発見した大凡の日にち。9月2日と定めた。
大凡というのは、ダンジョン内では正確な時間の流れが分からない為。
そして杏子の宿した子も、予定通りなら出産は9月頃だった。
とは言え、この世界では誕生日も年齢もあまり意味を成さない。
そういう風習だからとか、そういう価値観だからというのが結論だ。
ちなみに俺は、32歳になった。この世界に来て、8年が経過していた。
コーンはアイシスさんとの結婚の許可を得るため、コンドビア隊長と試合を申し込んだ。
下馬評では一方的な試合展開を予想されていたが、コーンの意地か、アイシスさんへの想いか、コンドビア隊長の複雑な心境か、それ以外の何かが働いて、惜しくも敗れるという結果になった。
コンドビア隊長は試合の結果に関わらず、コーンを認めていたようだ。
コーンは無事アイシスさんと結ばれ、一昨年5月に長男が生まれた。
名前はトルン。トルン・アンキド。
そういう訳で、コーンは隊舎近くの借家に住んでいる。
俺と苺は未だに隊舎に世話になっているけど。
いい加減どこかをと思うものの、男手一つで娘一人育てるのは中々に苦労が多く、身近に誰かが居る隊舎は助かる事が多い。
苺はすくすくと成長を続け、気の所為かもしれないが、杏子の面影をどこか匂わせる。
あれから何度も杏子…かは分からないが、苺のママの事を尋ねると、ママは絶対生きてるよ!私には分かるのと。
杏子と苺のママが同一人物かの確認をしてみたが、苺が言うにはママを感じるだけで、容姿は分からない。
それでも、パパとママの子供は私だけなの。と俺を父親と確信している。
最近は俺もそれを信じて、苺のママは杏子だ。そう本心から思い始めている。
そして、苺が生きてると言う限りは、杏子は生きている。いつか救い出す事が出来ると。
しかし唯一進展しない物が一番の問題で、杏子の居所について全く手掛かりを得られていなかった。
セイとジュレさんはカリエマを経ちその後の連絡はない。
コーンとは相変わらずの関係で、今も防衛隊の訓練や、魔物退治や採取依頼を共に受ける仲で、俺が外に出る際にはアイシスさんが苺の面倒を見てくれている。
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「コーン、頼みが有る。」
「改まってどうした?金ならねぇぞ?うちも火の車だ。」
雪をかき分け森で採取しながら、相談を持ちかける。
「ダンジョンへ行かないか?」
「よし、乗った。」
景気のいい返事は気持ちいいが、アイシスさんと話し合った上で返事が欲しい。
実のところコーンの所だけでなく、うちも台所事情も火の車だった。
独り身だった頃は依頼報酬や訓練の指導で貰える給金で賄うには十分だったが、子育ては意外にお金がかかる。
それというのも、土地柄カリエマには冒険者としての仕事が少ないのもある。
魔物討伐は、基本的に防衛隊の仕事だ。素材に関しては北のウィバリムから入ってくる為、需要がない。
カリエマは冒険者の暮らしにくい街だった。
そして俺も肉体のピークは過ぎた。苺の為にある程度の蓄えは必要だ。
ファンタジーの世界で、現実的な問題に向き合わなければならない悲しさ。
貴重な物を獲ってきて、お金なんて腐るほどあるぜ。くらいの甲斐性が欲しかった。
コーンの返答次第だが、行くなら南のウィゾクウだろう。
あそこはハイリスクハイリターンで有名だ。
今は2月。
雪解けすぐに向かうなら、今から準備で十分間に合う。
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「パパ、トルン君プニプニで可愛いね。」
「パパもプニプニで可愛いだろ?」
トルンを抱き上げる苺がそれは違う。みたいな顔をする。
「アイシスさん、無理を言ってすまない。」
「も~。気にしないでくださいってば。」
そう、俺達は今ウィゾクウへ向かい馬車を走らせている。
片道2ヶ月、ダンジョンに入れば半年、本腰を入れれば1年以上はカリエマに戻れないだろう。
である以上、苺は置いて行けない。
そしてコーンも同様に一緒に居たいからと、アイシスさんと1歳のトルンを連れてきた。
ウィゾクウにつく頃には2歳になるな。祝ってあげようと思う。
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「やっとだ~。もうあたしゃ駄目かとおもったよ。」
苺はどこでそんな言葉を仕入れてきたんだ。
「私もこんなにしんどいとは思いませんでした~…」
「さっさと宿とって休もうぜ。」
一番元気なのが、意外な事に2歳になったばかりのトルンだった。
「宿には先に行っててくれ、俺は行く所があるからな。」
「おう、大事な事だからな。苺ちゃんは任せとけ。」
そう交わして、俺は酒場を探しに町中心部へと足を向ける。
「いらっしゃい。一人かい?」
「ああ、人を探しててね。」
いつものやり取りを終え主人に尋ねるが、返って来る言葉はいつもと同じだった。
ここもか、という程度の落胆で店を出た時、見知った顔に出会う。
「あれ、コーヘーこんな所でどうしたんだい?」




