12話
子育ては親も成長するものです。
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「パパ~もういっかい!もういっかい!」
そう興奮するのは、寒さでほっぺたを赤くしながらソリに跨る苺だ。
そう、彼女に名前を付けた。いつまでも名無しでは可哀想だしな。
名前の由来は、杏子が書き残していた日記に有った女の子の名前。
この子が俺達の子なのか、そこはまだ…というか調べようもないのだけど、分からない。
それでも、俺が育てると豪語した以上、この子の父親として責任を持つつもりだ。
血よりも濃い、父娘の絆というのも悪くない…と思う。
冬の間、森の依頼をコーン達と受けながら、雪解けを待つ。
コーンは特に待ち遠しいようで、毎朝起きると窓の外を確認するのが日課になっている。
「アイシスさんとの仲、隊長は知ってるのか?」
「それがよぉ…コーヘー手伝ってくれるよな?相棒だもんな?」
説得くらいは手伝えるが、戦いで倒すとなると自信がない。
出来る範囲でな。と答えると、お前なら出来る、信じてるからな。と根拠の無いコーンの言。
折角勇者が居るのだからと、特訓に協力してもらった。
流石勇者というだけあって、今まで相手した中では断トツに強い。人類の最高峰と言われたら、納得してしまいそうなくらいに。
なんだかんだで、セイも面倒見が良く、苺とも遊んでくれるいい奴だ。
監視という面も無い訳ではないかも知れないが、苺と遊んでいる時の笑顔は本物だ。
但しジュレさんの気持ちを察せない、鈍感系主人公のようで、見ていてモヤモヤする場面に何度も出くわした。
頑張れジュレさん。
3月になろうとする頃、今季は雪の始まりが早く、終わりも早かったようだ。
さあ、カリエマに帰ろう。
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「パパぁ、つまんない…」
「ぱぱぁん、俺の「そうだね、もうちょっと我慢してね。」
セイ達を含め、5人でカリエマへ向け馬車を走らせる。
御者は俺で、苺は俺の背中にぐったり抱きついている。
コーンは最近コーヘーが冷たいの。と泣いたふりをしている。
苺が泣かないでと慰めていた。
2ヶ月の旅路、幼児には詰まらない上に辛いのは間違いない。
それでもジュレさんが唄を歌ったり、セイが木を削って人形を造ったりと面倒を見てくれている。
俺とコーンは交代で馬車の扱いの練習中だ。
講師は名も無きおまけの御者のおっちゃん。意地でも名前は聞かない。
今回の曳いてくれている馬は、スイミーに加え、ホーストンの2頭だ。
5人ともなると馬車が一回り大きくなった。
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途中何の事故もなく、カリエマが見えてきた。
強いて言えば、車軸が折れたり、泥濘みに嵌ったりは有ったが、馬車旅には付き物だ。
「ほら苺、あれがカリエマだよ。あそこに住むんだ。」
「わぁ~おっきい。あんなに大きいお家だと迷っちゃう…」
うん、あれは家じゃないんだよ。防壁だからね。
勘違いさせてすまない娘よ。
門をくぐり、スイミー・ホーストン・おっちゃんにお礼と別れを告げる。
コーンは先に隊舎に顔を出すと告げ、走っていった。
頑張れ。
残った俺達は神殿に向かい、今回の報告とカリエマでの事件の詳細確認をする事になった。
「お久しぶりですね、ノトロウ神官。」
「勇者様もご無事でなによりです。コーヘーさんも、ありがとうございました。」
筋肉さん、そういえばノトロウって名字だったか。
シクオか筋肉でしか呼ばれてなかったので忘れてた。
「そちらのお子はどうされましたか?」
「それも含めて奥で。」
そうセイが促すと一室に案内される。
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「そうでしたか…なんとも奇妙な事が…」
「この子はコーヘーが見てくれると言うのでね、任せようと思うんだ。教会もそれでいいよね?」
「ええ、ええ。大丈夫ですとも。我々としても信用の置ける人物に見てもらえるなら、心配ありませんし。」
セイが若干強引に話しを進めるが、筋肉さんの過大評価が逆に怖い。
「それで…魔族の方は何か分かったかい?」
筋肉さん達もあれから色々と調査をしたものの、成果は何も無かったらしい。
セイが一旦引き継いで、調査を開始するとの事。もうあれから随分経ってしまっているけど大丈夫なんだろうか。
「それとコーヘー。君は当分身動きが取れないだろう?奥さんの件、教会と僕の伝手であたってみても構わないだろうか?」
「ありがとう…凄く…凄く…ありがたい。宜しくお願いします。」
可能性の選択肢は間違っていなかった。
セイという人物は俺の可能性の一人だ。間違いない。
セイ達の話しが長かった為、俺に抱かれて眠っていた苺がムニャムニャと起き、衝撃の言葉を口にする。
「パパ、ママさがしてるの?ママね、おやすみしてるよ。」
「苺?ママ?ママって誰だ?杏子なのか?苺?教えてくれ、何処に居るのか知ってるのか!」
あまりの事に気が動転し、苺になりふり構わず詰め寄ってしまった。
「パパいたい、いたいよぉ、うぇぇぇぇん。」
「コーヘー落ち着け、手を離してやれ。」
セイに制止され、苺を掴む手が食い込んでいるのに気がついた。
「ごめん、苺。痛かったな。ごめん…許してくれ。」
苺が泣き止むのを待って、セイが代わりに話しをしてくれた。
「ママね、おやすみなの。…いないけどわかるの。」
「どこに居るのか分かるのかい?」
「ううん。わかんない。」
「ママって杏子さんかい?」
「ママはママだよ…」
「うーん。困ったね。ママは生きてるのかい?」
「うん、おやすみしてるの。」
「そっか、ありがとう。」
「うん!」
「どう受け取ったらいいんだろうね。」
「…セイ、ありがとう。」
落ち着きを取り戻した俺も、苺の言葉の意味を考える。
「母娘の繋がりという物かも知れませんね。昔より、母と子の絆は切っても切り離せない物と言いますし。」
筋肉さんが見た目に反して、如何にも神職らしい事を言う。
「まだ分別の付かない時期の子供の言う事だからね。鵜呑みにするのはどうかと思うよ。」
「けれど、ノトロウ神官の言う事も、あながち間違いではないかも知れないね。」
セイはどう判断するべきか、判断出来ないと言った様子。
「私は苺ちゃんの言う事、信じてあげる。貴方も親なら信じてあげるべきよ。」
今まで口を出さなかったジュレさんが、俺に発破をかける。
「俺は苺ちゃんを信じるぜ。こんな良い子が嘘付くはずねぇじゃん。」
お前はいつから居たんだ、コーン。
そう、鵜呑みには出来ない。さらに苺がママという誰かが、杏子かどうかが分からない。
それでも苺は、お母さんは生きているという。
それなら、苺のお母さんも助けてあげよう。苺に会わせてあげよう。
当分は殆どセイ達に任せる事になるけど、俺が出来る事を苺にしてあげよう。
「よーし決めた。セイ、苺のママも探してくれ。手掛かりは今の所全く無い。それでもセイは勇者だろ?」
「それって僕に丸投げじゃないか。」
「おやぁ?勇者が弱音を吐いていいのか?」
「勇者も万能じゃないんだけどねぇ。」
出来ない事は出来ない。だから出来る事をしよう。
今はまだ何も手掛かりがないけど、いつか必ず。
そう、いつか…必ず…




