↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/28

再びの謁見

「ま、またお見えになられたんですね。今度はご自身が、と伺いましたが」


「え、えぇ。まぁ」


 謁見に領主宅へ伺った俺。拠点が城下に出来たから、来るまでの時間がかなり短縮できた。案内をしてくれた騎士団の人は、この間と同じ方だ。俺が期間を空けずに来たものだから、驚きを隠せないでいた。


 前回はパーティー単位で、今回は変異種を倒したことによる功績で、という事になる。


「中央に、こんなにランクの高い方が居ると思うと心強いです」


「あ、ありがとうございます」


 扉前で引き継ぎをしてくれて、笑顔で持ち場へ戻っていった。引き継いだ騎士団の人は、無表情に一礼だけしてくれた。俺が一礼を返すと、扉へ声を掛ける。


「アロガンス様、カイルさんが来られました」


「通せ」


 大きな扉がゆっくりと開かれる。目線の先にある椅子へ、どっしりと構える男性。──領主のセバンタート・アロガンス。彼は、俺を睨みつけるようにこちらを見ていた。な、なんでこんな心象悪いの? 中央に被害を出してる訳じゃないし、流石に意味分からないんだけど。


「またお前か……」


 領主は大きな溜息を吐く。そう、俺です。案内してくれた騎士団の笑顔が恋しいよ……。


「前回もそうだが、定刻通り来るのは冒険者にしては珍しい。褒めてやろう。書状の方は既に書いてある」


「あ、ありがとうございます」


 とっとと受け取って早く帰れってことだな。俺もこの雰囲気は苦手だから、ある意味ありがたい限りだ。俺は前の時と同じく、さっさと取りに来いと言われると思って構えていた。だが、領主からは別の言葉が飛んできた。


「書状を渡す前に、話がある」


「話……ですか?」


 俺はないよぉ、早く帰りたいんだけど。


「南の武闘祭へ招待されたようだな」


「は、はい。そうです」


 ギルドへ共有して大丈夫、と伝えた手紙の内容だ。領主まで話がいくんだな。


「──優勝以外許さん。出来なかった場合、中央(この地)へ帰ってくることは叶わんと思え」


「なっ!?」


 横暴過ぎる! どういう事ですかと尋ねようとしたが、次だと話を進められてしまった。


「お前、城下に家を建てたそうだな」


「……はい」


「シドウに迅速かつ丁寧に建ててもらったと聞くが、一体どんな手を使ったんだ?」


 領主は、シドウさんの名を知ってるみたいだ。そんなに有名だったのかあの人。


「仲間と親しくなったみたいで。俺は関与していないから分かりません」


 そう言うと、領主は盛大に舌打ちをする。あ、貴方領主だよね?


「弱みでも握ったかと思えば……私を前にしてシラを切るか、いい度胸だ」


 領主は、胸元から装飾品を取り出した。十字架の様な形をしたそれは、見たことのない光を放っている。その光に寒気がした。領主はその十字架を前に出し、もう一度同じ質問をしてきた。


「もう一度問う。一体、どんな手を使ってシドウと親密になった?」


「仲間と親しくなっただけで、俺は関与していません」


 そもそも嘘の吐きようがないから、同様の返答をする。すると領主は、眼を丸くして質問を変えてきた。


「お前……出身はどこだ?」


「ここから少し南にある村ですが」


 田舎者が、と言いながら十字架をしまう領主。……なんなんだよ、段々と苛ついてきた。書状をくれるならさっさとくれねぇかな。じゃなきゃ要らないし、さっさと帰りたい。


【──全く、嘆かわしい限りです】


 ふと、そんな言葉が聞こえてきた。この間も聞いた声。今この場には領主と俺しかいない。この間領主の側にいた人も、今日はいないみたいだ。


 この声はどこから? 領主側からしてる気がするんだけど。


【聞こえていますね? 可能性の子よ】


 その声は、やっぱり俺目掛けて話し掛けてきている。


【今、貴方へ使われた力。それは本来、決して個の判断で使用してはならないものです。三代目の領主となるこの男、アロガンスは領主として非常に危うい思想の持ち主です】


 この声を聞く限り、現領主は三代目となるらしい。アニエスに俺も三代目と呼ばれているし、変な所で共通点が見つかってしまった。やだなぁ。


【その力は貴方か、貴方が認める正しき思想の持ち主へ――】


「……ぃ、おいっ! 聞いているのか!?」


「は、はい!?」


 声の方へ意識を割いていた俺は、領主の怒声によって現実へと戻された。


「何を呆けている。話は終わりだ、早く取りに来いと言っている」


 領主が手にしているのは、昇格の書状と思われるもの。俺は慌てて領主の側へ行き、書状を受け取った。


「あ、ありがとうございます」


「ふん……振る舞いは目に余るが、実力があるのは確かなのだろう。どうだ? 私に忠誠を誓えば、今までの事は水に流し眼を掛けてやってもいいぞ?」


 領主は胸元の十字架に手を掛け、口角を僅かに上げた。


「お断りします」


「なっ……!?」


 思わず即答してしまった。領主も、すぐ返事が来ると思ってなかったみたいで、眼を見開いていた。……しまった、端的に答えすぎたな。俺は言葉を捻り出していく。


「えっ、と。お気持ちは嬉しいんですけど。――今の俺は、冒険者です。何事も、一旦自分の力でなんとかしてみたくて、なので……すみません」


 何か裏がありそうではあったが、初めて領主から向けられた好意を拒否してしまった俺。


「……よいのだな? 二度はないぞ」


「はい」


 領主は俺を睨みつけてくる。やめてよ、おっかないんだから。やがて、ゆっくりと視線を逸した。


「分かった、下がれ」


 俺は一礼して、扉まで歩いていく。


「あの」


「なんだ」


 俺は、最後に気になっていた事を確認してみた。


「今日って、ここにいるの俺達だけ……ですよね?」


「見て分からんか? 何を言っている」


「いえ、すみません」


 と、なるとあの声は幻聴、そうでなければ俺しか聞こえていない事になる。アメルも聞こえてなかったみたいだしな。


 ──アロガンスは、領主として非常に危うい思想の持ち主です。


 この言葉が妙に引っかかった。そう告げてくれた声も、今は一切聞こえてこない。


 俺はモヤモヤしながら、領主との謁見を終えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。