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新しい拠点で、今後の動きを

 ちょっと長いです。

「や、やっぱりまだ慣れないな」


「そ、そうですね」


 ギルドでの話を終え、新しい拠点となる家に帰ってきた俺達。部屋割りを終えて、食堂へ集合していた。皆で話す時はここが良さそうだ。


 それにしても……あまりに広すぎて、これが俺達の家というのが未だに信じられない。アメルもどこかそわそわしている。村にいた時はあった風習だけど、貴族達は近所付き合いとかあるんだろうか? 近所といっても、一軒一軒相当に遠いけど。だとしたら、何か菓子折りでも持っていかないとなのかな。貴族が食べるお菓子ってなんだ、分からん。


 そんな事を考えている内にお腹が鳴る。窓から外を見ると、日も昇っているし段々と昼か。アニエスが腹の音を聞いたのか本を閉じた。ちょっと恥ずかしいぞ。


「そうだった、ここで過ごす場合は食事が必要になるか。おいで、ホムラ」


 そう言って、ホムラさんを召喚したアニエス。


「ホムラ、買い出しから調理までを任せる。献立は好きに組め、あまり主様を待たせないように」


「ハッ!」


 ホムラさんは、そのまま一人で出掛ける支度をし始めた。


「ホムラさん、俺も行くよ」


 お腹を鳴らしたのは俺だ。それにホムラさんがどんな料理を作るのか気になるしね。


「いえ、私だけで問題ありません。カイル様はこちらでお待ち下さい」


「でも、食材とか買うと荷物もかさばるだろうし、俺とライムが居れば手が空くと思うよ」


「もつー!」


 ホムラさんは女性だ。人手は多いほうがいい。ライムもやる気だし、荷運びなら百人力だ。荷物で遊ばれないようにだけ気をつけないと。


「その辺りに問題は……では、アメル。貴女が付いて来て下さい」


「わ、私ですか?」


 ホムラさんが指名したのは、アメルだった。急に指名されて戸惑っているように見える。ホムラさんはアメルに近付いて、こう告げた。


「――料理が上手な女性は、男性から好まれやすいと聞きます」


 仕入れと調理、私が知っている範囲であれば教えますよ? と言った瞬間アメルは立ち上がり、出掛ける準備を始めた。その表情は、真剣そのものだった。


「行きます」


「と、いうことですのでカイル様。こちらでお待ちに。購入するのは食材と調味料程度ですし、そう荷物にはなりません。お任せを」


「わ、分かりました」


 では、と二人は家を後にした。リリがその姿も見ずに、いてらーと言っていた。私も行こうか? とかはないのね……。



 二人は一時間経たない位で帰ってきた。手には大量の袋を抱えている。あれ、食材と調味料だけなんだよな? ホムラさんは涼しい顔をしているが、アメルは汗だくだ。肩を揺らし息を切らしていた。


「も……戻りました……」


「アメル、大丈夫? 少し休んだ方がいいんじゃ」


 では、調理に入りますよアメル。とホムラさんは調理場へ。どことなくアニエスを感じさせるな、結構なスパルタだ。アメルも俺へ大丈夫ですと告げて、よろよろと調理場へ歩いていく。とても大丈夫には見えない。やっぱり、俺達も一緒の方が良かった気がするぞ。


「アメル、息を整えなさい。カイル様が心配しているでしょう?」


「は、はい。……すぅ……はぁ……。いけます」


 よろしい、これを、とホムラさんはアメルへ調理用の前掛けを渡す。アメルはそれを着用し、ホムラさんに付き従うように二人で調理を始めた。他の皆も各々好きな時間を過ごしている。


 皆が自然体で過ごせる空間、こういうのっていいな。


「ホムラ、調理が済んだら湯を沸かして屋敷内の掃除だ」


「ハッ!」


 アニエスがホムラさんに指示を出しており、ホムラさんもなんだか嬉しそうに返事をしていた。



 俺達は出来上がった料理を頂きながら、今後の動きを話をすることに。にしてもホムラさんが作ってくれた料理……美味すぎないか?


「ホムラさん、料理上手なんですね」


「恐縮です。アニエス様に不出来な品を出す訳にはいきませんので、日々研鑽を積んでおりました。ですが今回は、ライムが食べる量を把握しきれていませんでした。不覚です」


 今後はこのような事が無きよう、と頭を下げるホムラさんへ慌てて手を振る。


「いえ、これだけ美味い料理を作ってくれただけで十分ですよ。ありがとうございます」


「美味しいー!」


 ライムもそれは本当によく食べる。だけど、食べなくても暫くは大丈夫でもある。スライム特有の体質なのかは分からないけど。


 ライムの感想を聞いたホムラさんは、微笑んだ。


「ふふ……では、私はアニエス様の命がありますので」


 湯沸かしと、家の掃除って言ってたっけ。ひ、一人でやるの? 湯浴み場も見たけど、かなり広かったよ?


「ホ、ホムラさん。私も一緒に」


 立ち上がろうとするアメルを、ホムラさんは手で制止する。


「アメル、私から仕事を取らないで下さい。調理はこれからも二人でやりますよ、いいですね?」


「わ、分かりました」


 では、と一礼してホムラさんは湯浴み場へ向かっていった。その後ろ姿は、なんなら少し楽しそうに見えた。


「主様、屋敷の家事は基本的にホムラへ一任する。何かあれば、遠慮なく言ってあげておくれ」


「召喚しっぱなし……って事だよね、アニエスは大丈夫なの?」


「魔力消費は召喚した時だけだ。後はホムラが自身で供給しているから問題ないよ」


 さらっと凄いこと言ってるよね? 最近はそうなんだー、としか思えなくなってる自分がいた。感覚が麻痺してるってこういう事なんだろうなぁ。


「それより、これからの動きを話すんだろう? 私から話しても良いかい?」


「あ、あぁ。大丈夫、何かあるの?」


「なんてことはないが、南へ行くのだろう? 私も同行するが、南へ滞在してる間はホムラを召喚出来ないと思っておくれ」


「そうなんだ?」


 ちょっと野暮用でね、とアニエスは告げる。南に行っている間、ホムラさんへなにか頼んだり出来ないってだけで、アニエス自身に問題は無さそうだ。


「じゃあ俺からも。明日はギルドで聞いた通り、領主に謁見してくるよ。終わり次第出発したいと思ってるんだけど、いいかな?」


「嫌よ、折角こんなに良い家があるんだから。南でしょ? ギリギリまでここに居て、アニエスの魔法で行けば良いじゃない」


 ひとっ飛びよ! というリリ。アニエスも、苦笑しながら別に構わないが、と俺へ視線を向けてくれている。


「うーん、じゃあリリ達はそれで。俺は折角だし、爺ちゃんに顔出そうと思ってさ。一度村に寄ろうと思ってるんだ」


 俺がいた村は、中央からそんなに遠くない南側へ位置する所にある。ちゃんとした冒険者になってから村へ行く! そう決めてから二年過ぎ。一回諦めて帰りそうになったけど、なんとかちゃんとした形で村へ行くことが出来そうだ。


「私も、カイルさんと一緒に行きます!」


 力強く言ってくれたのはアメル。そういえば、アメルは爺ちゃんに会いたがっていたっけ。良い機会だな。


「あー、もう! 私も行くわよっ!」


 そういうことは早く言いなさいって何回言わせんのよ! とリリは俺を睨みつけてきた。


「いや、無理しなくてもいいぞ?」


 ここは確かに居心地が良いから、長居したい気持ちも分かる。俺だって、今日初めて入って明日出発……なんて思ってもなかったしな。


「なんでよ! アメルがアンタの爺に会うのに、私が会わないのはおかしいじゃない!」


 そうなの? リリがなんで怒ってるかよく分からないけど、一緒に出発してくれるようだ。


 食事を終えた俺達は、明日へ向けて準備を始める。だけど、そもそもの荷物が少なくて、ものの数分で支度が終わってしまった。

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