改めて、南へ
出来た朝食を食べてる最中に、皆が合流。ヤマトさんも来て、家の中は大人数になった。その時、ジャイの反応はいちいち面白かった。
「お前……よくそれで死ななかったな」
これが、オーガとの戦闘を話した時。
「うわぁ! 何か沢山出てきたぞ!?」
これは、転移陣で皆が来た時。驚いて、椅子から転げ落ちてた。
「は、【運び屋】!? 専従でお前に付いてるのか!?」
「今はね」
これがヤマトさんが来た時。ジャイの奴、こんな表情豊かだったんだな。今まで知ろうともしなかったけど、中々面白い奴だったんだな。
皆が話してる今は、借りた猫の様に大人しくしている。
「じゃあ、今日はこのままディハートへ向かうんだね」
「はい。このまま行くと……時間的にどうですかね? まだ距離はあるかなと思いますけど」
「うーん、歩きだと大変かもね。馬とか、専用の乗り物があると今日中に着くと思うよ」
向こうの運び仲間に、デザートランナーはいいぞ? って自慢されるんだよね。とヤマトさんは苦笑していた。でもそれなら、ライムが月狼になってくれれば大丈夫そうか。いざとなったら、アニエスもいる。
「南へは、今日の夕方から明日に掛けて到着する、と伝えておくね。南からの招待だし、出迎えはしてくれると思うよ」
「どう、なんでしょうね」
俺は、苦笑いを浮かべることしか出来なかった。あの煽り文を書いた領地だぞ? どう出てくるか予想出来ない。一先ずヤマトさんから一報を入れてくれるなら、悪いことにはならないはずだ。
「じゃあ、俺はこれで。ダンガルドさん、でいいですかね。またお伺いする時があれば、よろしくお願いします」
「えぇ、分かりました」
そう言って、ヤマトさんは扉を開閉し姿を消した。
「き、消えた!?」
ジャイの奴、ほんとに良い反応するな。
そこから少し皆で話し、出発の時間が。俺達は支度を整えて外へ。
「南から戻る時は、また寄っていくんだろう?」
「そ、そうなのか?」
じいちゃんが言うと、ジャイも期待したように俺を見てきた。
「……分かったよ、土産と話な。持って帰ってくる」
そう言うと、二人はよしっ! と腕を組み合った。いつの間に、そんな仲良くなったんだ。
「とりあえず行くよ」
「カ、カイル! その、今までのこと……」
「……何のことか忘れちまったなぁ、じいちゃんみたいでいけねぇや。またな、ジャイ」
「……っ!! 帰り絶対来いよな! この村、娯楽なんてものないんだからよ!」
笑顔で手をブンブンと振るジャイと、戻ってきたら覚えとれよとニコッとしているじいちゃん。……やっぱり、戻らなくていいかな。一瞬そんな思いがよぎった。
村と南への分岐点まで戻ってきた俺達。月狼に変化したライムへ俺とイッカク、もう一体にアメルとリリ。アニエスはリクを召喚しそれぞれ向かうことに。割り当てが終わった時に、リリが話しかけてきた。
「カイル、いつの間にかあの男と仲良くなってたわね。まさか……アンタ、あっちの気があるんじゃないでしょうね!?」
「なんの話なの……幼い時に色々あってね」
「へー、どんな?」
「良くも悪くも──俺のスキルを発現させてくれた人って感じ」
ほぇー、とあからさまに興味を無くすリリ。興味への境目が分からん……。
「おう、ライムっていったな。生意気に狼に変化だぁ? どうせ変化するなら俺様にしろってんだ」
出発の間際、リクがライムへ話しかけていた。どうやら月狼に擬態しているのが気に入らないみたいだ。
「これ、速いんだよー!」
「お? 俺様より速いとでも思ってんのか? 勝負すっか、コラ」
「いいよー!」
へッ、とリクが笑った瞬間、その場からリクの姿が消えた。待てー! というライムの声が聞こえたと思ったら、景色がもの凄い勢いで移り変わっていく。俺は振り落とされそうになって、慌てて毛を掴みながら声を掛ける。
「ちょライム! 待て待て!!」
「ハッハー!! その程度かライム、遅ぇぞオイ!!」
「負けないぞー!!」
リクが煽るもんだから暫くの間、俺の声はライムに届かなかった。どんどんと移り変わっていく景色、その視界の隅では、このクソスライムー!! と言いながら、背中から振り落とされ宙を舞っているリリの姿が見えた気がした。




