黒いアルミラージ討伐.2
「畜生! 速ぇなアイツ!」
(まてー!)
ライムはなんだか楽しそうだ。こっちは追いかけるので必死だってのに、いいな畜生!
黒いアルミラージは、フォレイトスの道なき道を駆けていく。暗くて視界も悪い中、かろうじて俺達は後を追えている状態だ。一瞬で追いつくことは出来ると思う、が、剣に魔力を通わしてない今では、傷はつけれるだろうけど倒しきれないかもしれない。手負いの獣、それが一番マズい。
ということで、つかず離れずの位置で追いかけっこをしていた。反動もきてない、まだまだいける!
「ジャイの野郎、タイミング最悪だっての! あいつの介入さえなきゃ、一振りで終わってたはずなのによ!」
少し考え事を巡らせた瞬間、アルミラージが反転し俺へ向かって突進してきた。
「うおっ!?」
慌てて愛剣で、向けられた角を受け止める。アルミラージとは思えない力に押され、体勢を崩してしまった。そのまま、アルミラージは再び森へ駆けていき、ついに姿を見失ってしまった。
流石に地の利を取られちゃ、これ以上追いかけるのは難しい。というか、ここ……どの辺だ?
「……最悪だ」
──迷った。
迷いの森。その代名詞を全力で発揮されてしまっている。どこを見ても同じ景色。来た道すら分からん。
「アニエス、呼ぶか……」
(鬼ごっこ終わりー?)
ライムはつまらなそうに聞いてきた。うん、このままだと俺も終わっちゃうからね。
アニエスという手段がある俺には、まだ救いの手があるけど。でも、呼ぶのは気が引ける。それこそめっちゃ笑われるか、苦言を言われそう。油断しないようにと言ったはずだけど? みたいな。
まぁ、ここで立ち往生しててもどうにもならない。連絡を取ろうと思った時、上の方から声が掛けられた。
「──そこの君、止まりなさい。この時間に森に入っちゃ危な……あれ、カイル?」
「その声……カドリィか?」
近くまで降りてきたのは、見覚えのあるエルフの子供。カドリィだった。
「カイル、この時間森へ来ちゃ危ないよ。それも一人で、何してるの? もうっ」
カドリィは両手を腰に当て、頬を膨らませていた。怒ってるんだろうけど、その仕草は頭を撫でたくなる衝動に駆られてしまう。
「いや、ごめん。実は、黒いアルミラージを追いかけてたら道に迷っちゃってさ。どうしようかと思ってた所なんだ」
「黒兎の事? カイルも追いかけてるの?」
「も……って事はカドリィも?」
「うん」
聞けば、黒いアルミラージは一月前位から現れたらしい。やっぱり、クロと何か関係がありそうだ。
「エルフの集落も被害を受けてね。ホントは就寝時間なんだけど、私達狩人衆は見回りをしてるんだ。黒兎はグルメみたいで、野草とかはあんまり食べないの」
暗くなった集落によく現れるらしい。村と同じだな。
「うちの村もやられててさ、そこで仕留め損なっちゃって。ここまで追いかけてきた感じ」
「南の方にある村?」
「そうそう」
カドリィは俺の返答に驚いた様子だった。
「嘘……その村からここまでかなりあるよ、そこから黒兎と併走してきたってこと?」
「いつでも攻撃は出来たんだけど、ちょっと溜めが要るもんだから。油断してたら逃げられちゃったよ」
苦笑しながら状況を説明すると、カドリィは口に指を当ててうーん、と唸り始めた。その後俺の方を向いて、ゆっくりと口を開く。
「ねぇカイル、ものは相談なんだけどさ」
「うん?」
「私達と一緒に……黒兎、倒しちゃわない?」
カドリィはウィンクをしながら、人差し指を立ててそう提案してきた。




