風習
「御仁。その姿はやはり、個人スキルによるものなのだな?」
「えぇ、その通りです。カイルをちゃんと育てるのに、以前の弱々しい身体ではどうしようもならなくて……神に願っておりましたら、この身体を賜りました。いやはや、なんでも試してみるものですな」
はっはっは! とダンガルドは豪快に笑う。
「あ、あの、ダンガルドさん。カイルさんの両親って……?」
「あぁ、居るんだけどね。カイルの奴、黒髪だろう? それに黒眼だ」
「あ、え、そうです、けど……それが、何かあるんですか?」
「……時代だね。薄れていくのは嬉しい所だけど、この村ではまだまだ風習が根強いんだ。『黒は凶兆の証。魔族の生まれ変わりである』というのがね」
「なっ!?」
「そういえば……居たね。闇を扱うものにとって、適正がある黒色が身体に現れる。それがどれ程大きいことか知りもせず、そうやって嫌悪し吹聴する馬鹿者達が」
「アニエスさん……あんた、いくつだい……?」
ダンガルドはアニエスの返答に驚いていたが、咳払いをし話を進めていく。
「カイルの両親も、元々この村に居たんだが……あいつが産まれてから逃げるようにここを去った。魔族の生まれ変わりを産んだ者もまた……そう、言われないようにって所だろう。今はどこにいるかすら分からん。全く、子どもを捨てる親なんぞけしからんわ!」
「そんな……そんなことって……」
アメルが俯く中、ダンガルドは優しい声色で話を続ける。
「この村に居る時は、あいつも塞ぎ込む事が多かったがね。冒険者になるって言った時のカイルは、嬉しそうだったなぁ。今も、こんなに沢山の別嬪さんに囲まれて……」
うらやま、いや、嬉しいことだとダンガルドは語った。
「パーティーの皆さん。これからも、カイルと仲良くしておくれ。年寄りの唯一の願いだ」
「も、勿論です!」
「御仁、私達も主様が居なければ、今ここにはいない者達ばかりだ。貴方が見限らず育てて下さったおかげだ。感謝している」
「いやいや。当たり前の事をしたまで。あいつも今では立派になった、感無量ですわい」
再び豪快に笑うダンガルド。が、その笑いは途中で止められ、ダンガルドは挙動不審な動きを見せる。
「しかし……そうは言ったがカイルの奴、一人で大丈夫なんだろうか? 職業は確か……【従魔士】だったか。肩にスライムがいたのは知っているが、アルミラージの方が強いはずだ。し、心配になってきたぞ……」
やっぱり儂も出るか、と農具に手を掛けたダンガルドを手で制止するアニエス。
「御仁、主様は油断こそすれどアルミラージに遅れを取ることはない。面白いものが見れるかも知れないし、朗報を待とう」
もしもの時は、私が出る。その一言に納得したのか、ダンガルドは腰をおろした。
布団では、ささやかな寝息から、豪快ないびきをかき始めたリリの姿があった。




