第六十六話 二流依頼
「全員揃ったか?」
「あぁ、準備も終わってる」
ガガルパーティー。
上級四名、準上級七名、中級十四名のパーティー。
ソラニテ王国のギルドでも徐々に名を上げ始めた、
現在全盛期を迎えるお世話になってるパーティー。
リーダーのガガルさんに副リーダーのメグバさんは、
どっちも優秀な戦士で頼れる人らだ。
「ガガル様、一つお願いがあるのですが……」
「なんだグラバのおっちゃん?」
「あの二人を上級に上げたいのです」
二流依頼は基本的に上級の敵が出てくる。
二人はまだ準上級で上級になるには良い機会だ。
「あー、なら全然いいぞ。
俺たちも昇級のサポートするぜ」
昇級には一つ上の級に位置する者の下で、
上級に分類される暴野や兇徒の討伐が必須。
加えて魔法使いはその等級に合った魔法を使い、
実戦で確実に扱えることが条件だ。
グラバさんは等級は上級、
でも実力は準俊級上澄み。
「逆にあの二人、上級じゃなかったんですね」
メグバさんは横目でフリィアちゃんとリルメスを見て、少しだけ苦笑いしたような表情を浮かべてる。
ま、それは俺も思う。
「フリィアーおいら眠いぞ〜」
「ホクホトさんはいつも眠そうですね……」
「ちゃんと寝てないの?」
ガガルパーティーの実力三番手のホクホトさんは、
相変わらず二人が大好きなようでよく背後から抱きつく姿が見られる。あの人は後輩を愛でるタイプか。
「んーおいらは寝てますネ〜でも眠いんだ〜」
「よく戦えますね。私、眠いと動けませんから……」
「フリィは本当に耐性がないわよね」
「にへ〜おいらは眠くても戦えちゃうぞ〜」
あの三人身長が一見同じだからホクホトさんが幼く見える……んだけど普通に二十五歳なんだよな。
ちびっ子お姉さん……ってことか?
「……ま、グラバのおっちゃん任せてくれよ。
あんたらに頼らずとも二流依頼はこなせる。
好きなように動いて昇級しちゃってくれ」
ガガルさんの快諾の意、
てなわけで早速昇級させちゃうぞ。
* * *
ーーーーーーーー二流依頼ーーーーーーーー
推奨等級 上級
報酬金 大金貨60枚 提供ソラニテ商売協会
依頼者 ソラニテ商売協会
場所 ダウラ砂漠境界北西部 水止荒地
内容
ソラニテ川の最南部は商売の終着点。
協会の支部もそこにある重要な場所なんだが、
この時期になると毎年、茸菌族が出ちまう。
奴らは物を胞子だらけにするし凶暴だし強いし、
とにかく邪魔で仕方がないんだよ。
ので、討伐を頼む。(報酬上昇あり)
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とまあそんな依頼を受けて、
馬車で早速目的地に向かっているんだが、
今回の依頼はかなり稀な美味すぎる依頼だ。
ソラニテ商売協会。
王国の領土内で商売をするなら加入が必須、
言わば開業届を出すところってわけだ。
めちゃくちゃ大御所、報酬もめちゃくちゃ美味い。
大金貨はグロワール王国の白金貨より価値は劣るが、
日本円にして3万円、今回の報酬は180万ってこと。
にしても……茸菌族ってのはキノコの怪物か。
基本的に地力を持たない奴ら、だから暴野確定。
大体等級は準上級以上、中々に強い。
「外暑そうね……」
「さすが、ルサナンの夏はバカにできないですね」
ここは大陸北部と言えどほぼ南部。
夏の最高気温は30℃を超える……
今は8月27日、まさに夏って月だ。
それにこれからもっと気温は上がるらしい。
「ケルエタはいいわよね……!!
外いても暑くないんでしょ? 羨ましいわ!」
そう、俺は暑さとか寒さとか感じません。
悔しそうなリルメス、そんな目で俺を見るなって。
「う〜……外が暑いと困っちゃうなぁ」
この大陸の気候は日本じゃない。
砂漠とかの乾燥した気候、湿度はほぼない。
だから日陰にいればかなり涼しいのが救いだ。
「アディラン大陸はもっと暑いそうですよ」
「えぇ……?」
世界地図を広げれば西側に描かれる大陸で、
クソデカくてめっちゃ治安が悪くてマジで暑い。
この世界、宇宙はあるし太陽もある。
だから自転して季節が変わるわけなんだが……
北極と南極に当たる部分が特殊。
北極は極寒の大地で南極は灼熱の大地。
そのせいで自転しても大きく季節は変わらない。
太陽の当たるタイミングで気温が少し変わるだけで、
気温の上下は一年を通して少ないんだ。
1年間の風の吹き方で季節が変わる。
アディラン大陸はルサナンと同じ南半球、
今じゃあっちは本来冬の季節だが──
「どのくらい暑いんですか……?」
「今だとおそらく……40℃以上かと」
「あっつわいね!?」
冬でも40℃超え。夏になったらそりゃヤバい。
「まぁ、多分行くことはないですけどね」
俺が言う通り行く予定はない。
普通に危険で行く意味がない大陸だ。
「……あたし暑いの嫌いなのよね」
「私は……水浴びとかできるなら」
意外だ。フリィアちゃん水浴び好きなのか?
昔……川で死にかけてたってのに……
「着いたぞ〜」
適当に雑談しながら2時間程度。
ガガルさんが馬車の布を退けて顔を出す。
ローブのフードを被ったガガルさん。
絶対暑いんだろうな……
目的地の水止荒地、
確かに砂と草混じりの地面で荒れてはいる。
「茸菌族って準上級が多いですよね……?
上級の敵とかいるのかな……?」
俺にそう聞いてくるフリィアちゃん。
「茸菌族は特殊個体の発生率が高いんです。
菌纏の茸という個体は上級ですよ」
そう言われて不安が消えたフリィアちゃん。
今まではずっと準上級程度の敵としか戦わせてもらえず、戦闘に不満足していたが今日は暴れられる。
それにたとえ上級と戦えても、
昇級には同じ等級の者一名のみ共闘が許され、
それ以外の場合では昇級できなくなってしまう。
これのせいでずっっと準上級だったんだ。
「フリィ、あたしたちで一掃しちゃいましょ」
「うん……!」
フリィアちゃんも嬉しそうに頷いた。
「……ガガル、近い。多分いる」
数十分歩けばメグバさんのその言葉で、
全員の足が止まり臨戦体勢に皆移る。
「了解メグバ、刺激して誘い出せるか?」
「余裕、光余……!」
メグバさんは白い魔法の杖を空に向け、
光の球を何個か作り出して遠くの地面に着弾させる。
すると地面がモコモコと盛り上がって、
辺りに魔力が充満して大量の茸菌族が出てくる。
キノコのバケモノご登場。
フォルムはなんというか……人の子供並みの大きさ、
茎の部分に円形の口みたいな歯が六本見える。
「めっちゃ出てきましたネー」
「よし、んじゃあ狩り開始だお前らァ!!」
ガガルさんの声に反応して、
皆が声を上げて剣士は前に魔法使いは詠唱を始める。
剣士の中でも先頭を走るのはホクホトさん。
ダガーって呼ぶかはわからないが小さな剣を持って、
次々と茸菌族を斬り裂きまくってる。
鬼族の固有魔法は種族一の筋力強化。
「……防御だなー」
そのせいか馬鹿力がノーマル。
茸菌族の傘は表面が鉄以上に硬い、
本来ならフリィアちゃんの大剣でやっと斬れる。
ただ、ホクホトさんはこちらに傘を向けてる奴に対して、止まることもなく一気に接近して回転すると、ダガーはチェーンソーみたいに茸菌族を斬り裂いた。
「にへ、ありがとなメグバ〜」
「はぁ……無茶な斬り方が多すぎなんだよ」
ダガーが壊れなかったにはメグバさんの強化魔法。
無機物に硬質化を付与する高等技術だ。
「なーに突っ立ってんだホクホト」
離れたメグバさんを見て、ニコニコしてたホクホトさんの横に迫る茸菌族を斬るガガルさん。
「リーダーがやってくれるんですもーん」
「ははっ俺に頼りすぎだろ!」
三人合わせて英級上位……
連携力が凄まじいし隙のない三人だ。
さて……目移りはここまで。
フリィアちゃんたちもそろそろ接敵してる。
「お二人とも、あれが特殊個体です」
「デッカいわね……的が大きいのは好きよ」
「リルメスちゃん、いつも通り行くね」
「ええ、わかってるわ」
菌纏の茸……大きさは中木程度。
まあ目に見えて特殊個体ってわかる。
「……魔剣化」
フリィアちゃんは魔剣化を完璧にものにしてる。
大剣の刃に指を当ててなぞり血をつければ、
青い炎が大剣を纏い始めた。
「ではお二人とも、ご武運を」




