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花道闊歩 -異世界ガイドとして死ぬ運命の少女たちを幸せな老衰エンドへ導きます-  作者: ガリガリワン
第二部 第九章 思春期編

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第六十七話 自由と知


 青い炎を纏う大剣を持つフリィアちゃん、

 藤色の髪は末端が少し光っていて神秘的だ。


「……いくよ」

「えぇ」


 一瞬で間合いを詰める踏み込み、動きはまさに手練れの剣士で、大剣とは思えないスピードだった。


「っはぁあ!!」


 青い斬撃の後に爆発するように縦に放たれる青い炎の斬撃、二度の攻撃は菌纏の(バル・)(クルキン)の左腕を切断。


「空の彼方より舞い降りし星々よ。

 唯一なる輝きを地に降ろし顕現せよ!

 水精霊宿し魔の力! 水星(アルシエトラ)!」


 フリィアちゃんの後隙に対して、

 菌纏の(バル・)(クルキン)は右腕で薙ぎ払いを放つ。


 だが、そんなのリルメスが許すはずがない。

 上級水魔法、水星(アルシエトラ)。巨大な水球をぶつける魔法、

 シンプルだが着弾時に破裂して強い衝撃を発する。


「フリィ!」

「っと!」


 フリィアちゃんは地面を踏みつけて跳び上がり、

 その大剣から一気に魔力を放出させ、振り下ろせば巨大な青い炎の斬撃が放てたれた。


「グラバさん」

「えぇケルエタ様」

「……余裕ですね」


 俺は嬉しかった。改めて嬉しかった。

 二人はもう、上級に相応しいんだ。


 菌纏の(バル・)(クルキン)は斬撃を受けると真っ二つに斬り裂かれ、

 ドスンと左右に身体が地面に接する。


「……ふっ〜ぅ」

「やったわフリィ! 余裕だったわね!」

「わ、わっ!」


 リルメスがフリィアちゃんの後ろから抱きつく、

 一発で上級昇級、二人は嬉しそうだ。


 フリィアちゃんは魔剣化(まけんか)を解き、

 リルメスははしゃいだように喜ぶ。


「えへへ……やっぱり私たちなら余裕だね」

「あったりまえよ!」


 ……もうこの大陸でやり残したことは少ない。

 金も集まった。二人の実力だって高い。


 知識の整理も追いついているし、

 ルサナン大陸からそろそろ離れる時期でもある。


「おーい、そっちはどうだ?」


 遠くからガガルさんが走ってきた。

 どうやらあっちも討伐は完了したらしい。


「えぇ無事昇級です。討伐は終えました」

「おっ、そりゃぁ良かったぜ」


 ガガルさんはニコニコとして剣を鞘に納める。

 戦闘は終了、依頼は難なく終わりを迎えた。



【*死のリストが更新されました

 対象 フリィア・サタニルド

    リルメス・レクセト・ボルワール

 追加 堕星の(シエラゴ・)殲竜(ランドリュ)による捕食(緑文字)】


 ……なんとなく思ってたさ。嫌な予感はあった。

 白文字が追加された今でも唐突な更新はある、

 それが今知れただけマシだ。


 緑文字……とは言っても相手がかなりヤバい。


 堕星の(シエラゴ・)殲竜(ランドリュ)……星殲竜(シーランドリュ)の特殊個体。


 龍族の中でも上位の強さを持つ星殲竜(シーランドリュ)が長年生き、

 寿命を迎える寸前に死に場所を探している状態の個体。言っちゃえばこいつは特殊個体ってより老体だ。


 等級は俊級(しゅんきゅう)の中でも上澄み。

 言わば暴野(ぼうや)版準天級(じゅんてんきゅう)、まず勝ち目はない。


 それでも緑文字ってことは生きる術は多い。

 とりあえず、なんであろうと──


「……今すぐにここを離れましょう」


 俺はポロッとそう言うと皆が首を傾げる。


「離れるって……なんでだケルエタさんよ。

 もう敵はいねぇし、強い魔力も感じねぇぜ?」

「と、とりあえず今すぐに離れなきゃヤバいんです!

 ガガルさん早くみんなを集めて!!」


 俺が焦ったように言うと不思議そうにガガルさんは走り、仲間たちに対して帰る準備をさせ始めた。


 そう焦ることじゃないが、もし会ったら死だ。


「ケルエタ様……まさかリストが?」

「緑です…… 堕星の(シエラゴ・)殲竜(ランドリュ)が来ると……」


 グラバさんはかなり驚いた表情だった。


「なるほど……」


 堕星の(シエラゴ・)殲竜(ランドリュ)は存在自体が奇跡レベルの生物。

 討伐記録も史上2回だけだ。


 ただ、少しばかり不可解な点がある。

 堕星の(シエラゴ・)殲竜(ランドリュ)は本来寿命を迎えるために、

 ダウラ砂漠には来ないとされている。


 じゃあなんで……しかも夜行性。


 今は燦々と日が出ているし、

 色々線が繋がらないことが多すぎる。


「……色々おかしな点が多いですが、

 ケルエタ様が言うのであれば今すぐ逃げましょう」


 緑は一応ごく稀に死ぬ運命、

 マジでここで出会ったら洒落にならない。



 そんな時、空から轟音が鳴り響いた。

 ガラスを割った時のようなあの音だ。


「フリィ……あれなにかしら?」

「なんだろう……?」


 皆が空を見上げた。


「は……?」


 そして皆が直様顔を青ざめる。

 場を支配する圧倒的な魔力、一瞬でみんなの耳が潰れた。それほど格上の存在が──


「なんで空が……割れて」


 空に亀裂を作り上げて出てきたのだ。

 俺は自分でもなにを言ってるかわからなかった。


 でも……空が……空が割れたんだ!


「グ……グラバさん!! 二人を!!」


 亀裂から出てくる真っ白な竜。

 翼を広げればそれは空を覆い隠し、白い太陽の如く光り輝いていた。綺麗だなんて感想も出てくる。


 いやいや……なにをぼけっとしてるんだ俺は!


「メグバァ……大丈夫かっ……!」

「ゲホッ……っぐぅぁ、魔力に耐えきれない……!」


 魔法使いは剣士よりも魔力を感じやすい、

 故にこの状況下じゃ魔法使いは苦しいだろう。


「フ、フリィ……っ」

「リルメスちゃん! そ、そんな……」


 フリィアちゃんはこの魔圧の中でも立っており、

 全身を震わせながらもリルメスの手を握っていた。


 まともに動けるのは基本無敵の俺とグラバさんだけ。


「二人と……っ!?」


 また空から轟音が鳴った。同じ音だ。

 亀裂がもう一つできていた。


 その亀裂を見て堕星の(シエラゴ・)殲竜(ランドリュ)は、

 俺たちに見向きもせず焦ったように飛び始め、

 もう一つの亀裂に向かって光の球を口から放つ。


 その光の球は亀裂に直撃。



「グラバさん!」


 その瞬間、グラバさんが地面に膝を着いた。

 ということは、それ以外は──


「マズい……!!」


 気絶している。唯一の残ってるのはガガルさんと、フリィアちゃんのみがギリギリ意識を保ってる。


「リル……メスちゃ……ん!」


 なんだ……なんなんだ! なにが起きてるんだ!

 もう一つの亀裂から何か……強すぎる力を感じる!


「ははっ、なんだオマエちゃん。

 俺ちゃんに向かってよく攻撃できたな」


 小さく聞こえてきた声、ただこの言語は特殊だ。

 なんだ……この言語……全知脳(ぜんちのう)も発動しない。


 これは……これはなん……ぁ……え?


「″日本語″……?」


「おい竜、オマエさっき俺ちゃんに不意打ちしたんだ。べつに良いよな? もう死に場所を探してるだけの個体って⬛︎⬛︎⬛︎(聞き取り不可)ちゃんが言ってたからな」


 なんだあいつ……眩しい……眩しくて見えにくい。

 でも……あいつなんで日本語を? 転生者?

 だとしてもあんな強さの奴なんか……


「……▲▲▲▲(聞き取り不可)……▲▲▲▲(聞き取り不可)


 俺が困惑してる中、一瞬辺りに赤い閃光が走った。

 魔力じゃない……この力は魔力じゃない!!


 何かべつの圧倒的な……謎の力!


「ルゥゥルルァアアッ!!」


 堕星の(シエラゴ・)殲竜(ランドリュ)の悲痛な叫び声、

 それが聞こえた時には眩しい光は消えていて、

 堕星の(シエラゴ・)殲竜(ランドリュ)が地面に落ちてくる瞬間だった。


「……え?」


「……老体じゃなきゃもうちょっと戦えたかな」

「ちょっと……! ⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎! 何してるんですか!」


 声の種類が増えた……?


「あれ、なんでいるの……?」

「貴方がここに入れたんでしょう!」


 小さく会話してる声が聞こえる……

 眩しい光が消えて一瞬姿が見えた。


 緑髪の男と水色の髪の女……見えたと思えば一瞬にして消えていて、亀裂もなくなってた。


 なんなら魔力の圧も消えてる。


「……終わった?」

「ゴホッゴホッ……ケルエタ様……一体何が」

「わからない……わからないです……!」


 全知脳(ぜんちのう)が一切発動しない。

 なんで……なんで日本語を使ってたんだあいつら……


「……そ、そうだ」


 堕星の(シエラゴ・)殲竜(ランドリュ)はどうなった!?


 俺は身体を浮かばせて辺りを見渡し、

 地面に倒れている堕星の(シエラゴ・)殲竜(ランドリュ)を見つけた。


「なんだ……これ」


 俺が見た堕星の(シエラゴ・)殲竜(ランドリュ)は胴体が消し飛んでた。

 真っ赤な光が断面にまだ残ってる……


「え……あぁちょっ!」


 見ていたらいきなり断面から塵になり始めた。

 待て待て、そいつの素材だけでも……!


「あぁ……ぁ〜」


 消えちゃった……塵になっちゃった。

 クッソ〜! 素材を売れたら億万長者なのに!


「……はぁ」


 残念ではあるがそんなことより状況整理、

 この量の人が気絶してるのはちゃんとマズい。


 とりあえず、意識のある人を集めて、

 今すぐにでもこっから離れたい。


 もう怖すぎる、何が起きてもおかしくないんだ。


「ん……んん、フリィ?」

「あれ……身体が軽くなって……」


 と思っていたら、次はみんな一斉に目を覚ました。

 フリィアちゃんとかの意識を保ってた人たちは、

 身体の重さが一気に消えたらしい。


「ガガル……なにが?」

「わからん……わからねぇ……でも一つ言えんのは、

 俺たちは、この世のものじゃないような、

 特異な超常現象に遭遇したんだ」


 ガガルさんは酷く震えながらメグバさんにそう返し、

 メグバさんはそれ以上聞く気にもならなかった。


 ガガルさんに同感だ。俺だってそうとしか思えない。


「リーダー……不気味ですネ。帰りましょうよぉ」

「あぁ帰る帰る!! もうここにいたくねぇよ!」



 考えても考えても謎、謎、謎……

 ひたすらに謎ばかりが残る今回の出来事。


 もしかしてこの謎は後に……

 俺たちにとって大事なことになるのか?


 ……予想すらできない。なんだったんだあれは。

 あいつらはなんだったんだ?


 俺たちは謎に包まれたまま、足早にその場を離れ、

 馬車を使って王都へと(みな)、一応無事に帰った。

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