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花道闊歩 -異世界ガイドとして死ぬ運命の少女たちを幸せな老衰エンドへ導きます-  作者: ガリガリワン
第二部 第八章 不骨の札屍族編

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第六十四話 一騎当千の死体


 * *【ケルエタ視点】* *



 グラバさんを助ける少し前、

 俺はギルドでガガルさんに一つ提案した。


「逃げても結局無駄です……

 ソラニテ王国には殿堂入りパーティー以上に、

 強くそして勇敢な戦士たちはいないんです。

 相手は俊級(しゅんきゅう)兇徒(きょうと)、被害は国全体に及ぶ……」


 俺は全知脳(ぜんちのう)で戦力を把握してる。

 ソラニテ王国には俊級(しゅんきゅう)戦士が滞在していない。


「ガガルさん……戦いましょう。

 殿堂入りパーティーだけじゃ確実に負けます」


 俺のその言葉にガガルさんは顔をしかめ、

 すごく息を詰まらせたあとため息を吐いた。


「わかってる……そうだよな。

 ったくリーダー失格だぜこりゃあ」


 ガガルさんは続けて話した。


「でもケルエタさんよ。俺たちは無駄死に御免だ。

 なにか策とかがあって戦おうとしてんだよな?」


 不骨(ふこつ)のシキョン。

 原因不明の不死の性質を持ついわゆるキョンシー、

 風の魔力を有していながらも剣を多く使う剣士。


 そんな奴と正面から戦っても絶対に勝てない、

 基本的にこの世界は剣士の方が魔法使いより強い。


 だけど集団戦じゃ話は変わってくる。


 ある程度距離を取った中で、

 魔法使いが有利となる距離であれば、

 劣勢は一気に魔法使いに傾くんだ。


 好都合なことにシキョンはそう頭が良くない、

 戦闘に関しては少しは頭が働くようだが、

 記録上、会話は下手くそだ。


 理解までに時間がかかるタイプ、

 ならこっちだってやり方はある。


「町中の魔法使いを集めてください。

 その全員でシキョンに魔法を一気にぶつけるんです」


 集中砲火。

 それは弱者が強者に行うシンプルな定番策。


「できるわけねぇだろ!

 相手はあのシキョンだぞ?

 どうやって魔法が確実に命中する場所で、

 あいつから攻撃されずに魔法を放つってんだ」


 ガガルさんは俺が正気じゃないように見えたのか、

 そう言って狂気を正すように言ってきた。


「えぇですが、今シキョンは戦っています。

 もうぶっちゃけますがグラバさんは準俊級(じゅんしゅんきゅう)上位、

 殿堂入りパーティーのテチラさんも準俊級(じゅんしゅんきゅう)

 言い方悪いですが引きつけ役としては十分です」


 強者同士の戦いにトドメを刺すのは、

 大量の弱者ってことだ。


「相手は結局知力を少し持った死体。

 戦いに集中すればこちらは認識しないはず、

 加えて想定外のことが起きれば動きは止まる……」


 奴の狙いはフリィアちゃんとリルメス。


「俺たちが奴を驚かせます。

 四方八方を魔法使いで囲んで一気に魔法を放つ、

 それで奴が復活したとしても……何回も何回も、

 奴が死に絶えるまで撃ち続けるんです!」


 ハメ技、ゲームとかでよく聞くが、

 あれをされた時はマジでイライラする。


 でもハメ技は意外にシンプル、

 する側とすれば環境さえ完成すれば、

 容易く成功させ一気に勝利することができる。


 不安要素は少ない。

 正直、出来る未来しか見えない。


「ガガル……乗ってみよう。

 新人さんの言うことには僕も賛成だ」

「おいらはなんもできないけどネ」


 メグバさんはまだ俺の名前を覚えてないらしい……

 ま、今はそんなのどうでもいいが、

 波風は俺たちに吹いてる。


「……わかった。魔法使いをできるだけ集めてくる。

 ただケルエタさん。妖精(サルェタ)族のあんたのことだ。

 これで不幸になっちまったら少し恨むぜ?」

「いいですよ。ならせませんから」



 * * *



 そして今に至る。


 ガガルさんの人脈には驚いた。

 魔法使い総勢二百十四名! 属性はごちゃごちゃ!

 だが威力がこれだけ重なれば俊級(しゅんきゅう)魔法以上だ!


 集中砲火で火葬されちまえよキョンシー!!



「っかは……」


 効いてる……!

 いける……もう一回ぶちかませ……!


「もう一回だみんなァーッ!!」


 ソラニテ王国がギルドの活動を停止したおかげで、

 生憎大量の魔法使いが町にはいたからな……


 自分の仲間がお前の足を掴んだんだ。

 いつも通りのギルドならこんな人はいなかった。


「ぅぁああっ!」


 シキョン……お前がなんで俺たちを狙うのか、

 それが気になってしょうがない!


「もう一回!!」


 シキョン、お前の討伐を証として、

 世界中の俺たちを狙う奴等に警告してやる!


「もう一回ッ!!」


 様々な属性の魔法が絶え間なく浴びせられ、

 シキョンは煙の中で身体を崩壊させながらも、

 踊り狂うように攻撃に直撃し続ける。


 再生してるんだろうが、

 この量の魔法の中で再生がいつまで続く?


 万物は魔力に依存してるってんなら……!

 その魔力が空になればいい!


 その不死だって、完全無欠じゃないんだろう!


「もうッ一回ッ!!!」


「ケルエタさん……! ちょっと待って!」

「もッ……? なんですフリィアちゃん」

「……やっぱり、シキョンがいません……!」


 は?


「消えた……?」

「どういうことなの!?」


 グラバさんもリルメスも驚きだ。


「メグバ! シキョンの魔力は!?」

「ない……完全にない!」

「どういうことですかネ?」


 あり得ない……!

 生命が死ぬ時は必ず魔力が爆散するような、

 あの衝撃が少しでも感じ取れるはずなんだ。


 シキョンは一切それがなく消えたってことなのか?

 ……違う、まだどこかに隠れている可能性だって!


「グラバさん……本当にシキョンは?」

「消えました……おそらく隠れてもいませんし、

 死んでもいない……消えたのです」


 なんで……どういうことだ。

 全知脳(ぜんちのう)、使ってもなんにもわからない。


 それだけ謎な現象なのか……?


「ケルエタ様……逃げられましたが、

 ひとまずは安全ではないでしょうか……」


 ……そうだな。確かに安全ではあるのか。

 そうだ。死のリスト……!


「リストからも文字が消えている……」


 黒文字は消えていた。

 てことは、俺たちは運命に勝ったんだ。


 捻じ曲げてやったぞ……よし……よし!


「ふふ……今回はあたしの活躍もあるわね」

「魔法使えないから何もできなかったよ……」


 白文字……他人の干渉で変わる文字。

 軽々しく黒になるのはやめてほしいぜ……



 * *【タルタ視点】* *



「やーらーれーたー」

「あいーまーけーたー」


 ビゾンとシキョンの魂が帰ってきた。


「……無茶をさせてしまったな」


 ビゾンはわかるが……シキョンがまさかな。

 (それがし)は奴等を侮っていたのか?


 二人に終焉手法(しゅうえんしゅほう)を使わさなければ、

 どちらも死んでいたということ……


 なんとも解せぬ事実よ。


「タルタ様ービゾンさむいですー」

「タルタさまーわたすもー」


「帰ればすぐにでも身体を作り直してやろう」


 ……機会は失ったか。

 ここまで派手に動いたことで帝国軍が介入してくる。


 デエス帝国を敵に回すとなると、

 (それがし)だけではいずれ敗北する……


「……少し明日からはのんびりと過ごそうか」

「はーいー」

「あいー」


 砂獣(さじゅう)族が復興するまで何年かかるだろうな。



 * *【記録】* *


 星断暦(せいだんれき)844年4月23日。

 壊刀(かいとう)のタルタにより砂獣(さじゅう)族壊滅。


 武祭(ぶさい)のケケラはダウラ砂漠を離れ、

 砂獣(さじゅう)族は間も無くして縄張りを失い、

 各地に生き残りたちが散らばるのであった。


 元の縄張りは腐食が激しく、

 もうまともに住める地ではない。


 ダウラ砂漠の勢力図は龍族と(デダ)族の、

 一対一の拮抗状態へと移り変わる。

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