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花道闊歩 -異世界ガイドとして死ぬ運命の少女たちを幸せな老衰エンドへ導きます-  作者: ガリガリワン
第二部 第八章 不骨の札屍族編

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第六十三話 終焉手法


 * *【5年前のケルエタの記憶】* *


 終焉手法(しゅうえんしゅほう)


 魔法使いの技術の 終着点で奥義。

 それは一度の発動でとてつもない魔力を消費し、

 完全オリジナルの魔法を放つもの。


 魔法についての知識は一通り得たが、

 やっぱり必殺技みたいなのはあるんだな。


 大体理解した。


 魔法使いの戦いの中じゃ主に二つ、

 結界魔法による結界構築、終焉手法(しゅうえんしゅほう)での必殺技。

 この二つが極めた者が手にする技術か。


 終焉手法(しゅうえんしゅほう)自体、かなりシンプル……

 それでも扱えない奴が多いってことは、

 シビアなことが多いんだろうな。



 * *【グラバ視点】* *



終焉手法(しゅうえんしゅほう)ー」


「マズい……!!」


 まさかこのシキョンという兇徒(きょうと)が、

 その域に達しているとは想像できなかった!


 剣士として認識していましたが……

 それができるなら魔法使いでしょう!


終焉の流転(クレア・ザンビ)ー」


 頭だけのシキョンはそう言うと、

 切断された首の断面から白い煙が吹き出し、

 胴体の方へと首が煙に持ち上げられました。


 そして、それは首と頭を繋げて再生、

 加えて身体には白い煙を纏い始めたんです。


「おー、攻勢(こうせい)魔法じゃないぞー。

 でもーしんだなーおーまーえーたーちー」


 シキョンの雰囲気が変わった……?

 関節が動いている……まさか……


「必死に怖がっていいぞー。

 今のわたすは柔らかいからなー」


 シキョンは関節を動かして浮く剣を両手で掴み、

 二対の剣で露出した腹部を斬りつけたのです。


 それが意味することつまり──


魔剣化(まけんか)ー」


 シキョンは白い煙を一気に手首へと集中させ、

 髪の毛の末端は緑に光って瞳が赤く光る。


 絶望……ただでさえあの強さの怪物が、

 今こうして一段階か二段階……いえ、それ以上。


 強化を許すに至ってしまった。


「ゴホッ……クッソ……ナルバ、

 一回魔法を解いてくれ……!」

「は、はい!」


「そう言わなくてもころすから大丈夫だぞー」


 低姿勢、その状態からの踏み込みによって、

 前へと飛び出してくるとなると速度は優に、

 ラジャト様の反応速度を上回った。


「っぐぅう!!」

「? 腕、もらうぞー」


 (わたくし)は辛うじて見えた動きに勘で対応し、

 硬質化した腕をラジャト様の前に出しましたが、

 シキョンの剣がじわじわと入り込んでくる……!


「ナルバ毒撃(どくげき)魔法!!」

「っはい!! 絶痺(アブリンニ)!!」


 (わたくし)を起点にナルバ様から毒撃(どくげき)魔法が放たれ、

 それはシキョンの動きを止める麻痺魔法となった。


「あぉぁっぁっぅ!」


 感電するように震えるシキョン、

 すごい威力ですね……毒撃(どくげき)魔法をそこまで……


天帝(てんてい)が下す正義の(いかり)、裁かれし落日(らくじつ)(しもべ)

 無響(むきょう)の雷が今ここへと! あぁ大成(たいせい)(そう)(こう)!」


 完全詠唱、なるほど高火力で潰す作戦ですか!

 ならばこちらもそれに合わせる……!


炎界(えんかい)にて踊ろう三星(さんせい)若火(じゃっか)紅月(あかつき)見えし天空海(てんくうかい)

 楽土(らくど)月淵(げつえん)(その)、天空に見えし陽炎、(まさ)神陽(しんよう)


「っぅく……とめ……止めきれないぃ!」


 ナルバ様が血を目や口、鼻から耳、

 至る所から出しながらも耐えてくれている……


「しかし訪れる悪魔の楽祭(らくさい)雷碇(らいてい)は折れ、

 山上にて見上げよ星空を──

 際限(さいげん)なく訪れる星々の脈動(みゃくどう)

 あぁ、越えし不浄(ふじょう)の世……っ!」


 ナルバ様が血を激しく吐き出した。


「姐様……っやめないでください!

 ここしかないんです……!! 今しかっ!!」


 (わたくし)はそれを聞いて詠唱を続行しました。


炎声(えんせい)歌声(かせい)にて光増す陽光(ようこう)

 七色のその終着点にて見える黒点、

 子は厭世的(えんせいてき)心情、(ただ)し、微笑み絶えずにて」


「……っ今しか……っ今しかぁ」

「うぅううっ!!」


 シキョンがゆっくりながらも動き始めている……

 間に合え……間に合ってください……!!


「……不浄の世界の先で!!」

 今こそ堕ちよ! 雷帝(イグニンドア)ァッ!!」

黒炎界(こくえんか)、死の舞踏!

 燃えよ劫火(ごうか)! 陽月黒(フルブアテヤ)ッ!!」


 両者俊級(しゅんきゅう)魔法。

 単体に対して特化した高威力の魔法……


 テチラ様の杖から放たれる青白い電撃に、

 (わたくし)の杖から放たれる赤黒い火の光線。


 二つが混ざり合いながらシキョンへと直撃。

 

 大爆発と共に(わたくし)たちは全員が吹き飛ばされ、

 各々は地面を転がりながらも体勢をすぐに立て直しました。まだ……シキョンの死が確認出来ていない。


「ナルバ大丈夫か?」

「うっく……ぁっ死にそうですけど、

 なんとかまだ……どうにか──」


「……シキョンはっ」


 ラジャト様が辺りを見渡しますが、

 辺りは土煙だらけでまともに見えません。


 もし……もしあの攻撃でピンピンしていれば、

 この状況下ではいつ襲われてもおかしくない。


 火と雷が混ざると爆発が起きますが、

 ここに来てそれが不利を作り上げるとは……



「……ナルバ?」

「え……ぇあ?」


 煙が晴れる時、(わたくし)の目に入るのは、

 ナルバ様が剣にて心臓を背中から刺されている状況。


「んー、効いたぞー」


 右半身が焼き焦げながらも再生するシキョン、

 服が燃えながらも包帯のサラシが見え、その肌は、

 無傷というよりは再生したてのもの。


 ですが……(わたくし)たちの攻撃の証は、

 少しの間に完全にシキョンの身体から消えたのです。


「ナル……バ」

「姐様……まだ死にたく──」


 その次の瞬間にはシキョンは剣を上に向け、

 一気に肉を裂きながら血飛沫を上げさせ、

 ナルバ様はその場で崩れ落ちてしまいしました。


 その瞬間、身体強化魔法が切れ、

 先ほどまでのような身体の状態は消えてしまった。


「……嘘だ」

「っ!」


 立ち尽くすテチラ様に飛び込んで移動させる、

 ラジャト様の目は少し震えていました。


「なぜ……直撃したはずです」

「あー、召喚魔法でちょっと防いだんだー。

 直で喰らってたら上半身吹き飛んでたぞー」


 (わたくし)がそう聞けば親切に答えるシキョン。


 終焉の流転(クレア・ザンビ)の効果はおそらく、

 不死となり如何なる場合でも発動する完全自動再生。


「……そうですか」


 血まみれにならずとも理解(わか)る敗北感。


「ラジャト逃げて……私が止める。

 あいつは私が止めるから逃げて」

「姐さん……それだけは出来ないです」

「……じゃあ、死にたいってこと?」

「逃げて生きて……幸せになんか俺はなれませんよ」


 逃げるとなればそれは国を捨て、

 仲間を捨て家を捨て……何もかも捨てること。



「長く戦ってきたがーお前たちは強い方だー」


 なんて思っていないような言葉が聞こえてくる。


 ……ケルエタ様がいればリルメスお嬢様はきっと、

 安全とは言えずとも生きていけるはず……


 強い戦士など世の中にはたくさんいますし、

 なにも(わたくし)にこだわる必要もない。


「……シキョン」

「なんだー?」


 ボルワール家の執事として……ではなく、

 ここでは一人の戦士としてなにをするべきか。


(わたくし)が貴方に勝てる確率はどの程度でしょうか」

「んー……ないんじゃないか?

 どう考えてもわたすに勝てそうに見えないぞ」


「なら……勝つとは言わずとも、

 その不死の肉体に焼き付けて差し上げます。

 この(わたくし)の死力……生涯の全てを」


 死ぬのならば本望。

 全てを出し尽くしここで命尽くす……


 シキョンさえ倒せば……撤退させるのでも良い。


 ただ、今だけはこの敵を……リルメスお嬢様へと、

 触れさせないために……全てをここで出し尽くす。



「──星水衝(アグタスメア)!!」



「うおー!?」


「……!?」

「なんだ……?」

「水魔法……すごい雑な魔力だけど……」


 この魔力は……この魔法の特徴は……!


「助けに来たわよ!! グラバ!!」


 リルメスお嬢様……!!


「なぜ……なぜ戻ってきたのです!!」

「うるさいわね! あたしが助けたいからよ!」


 道の奥に見えるケルエタ様とフリィア様に加え、

 中央に立つリルメスお嬢様……


「来てはいけません……死にますよ!」

「ふふん。死ぬだなんて言わないで!

 こっちだって格下なりに色々準備してきたの!」


 準備……? なんですか準備とは……


「ケルエタさん、もうみんないけるみたいです」

「よーしならやってやりましょうフリィアちゃん。

 グラバさーん! こっからが反撃ですよッ!!」


 ケルエタ様にはなにか策がある……

 ですが……それでもこのシキョンを相手にしては。


「よくわからないがー獲物が自ら来たなー!」


 マズい……! シキョンが動き出してしまう!


「やったれソラニテギルドーッ!!」


 ケルエタ様のその掛け声と同時、

 突如、四方八方から魔力が一気に立ち上り、

 シキョンへと向けて何百もの魔法が放たれたのです。


「なっぁ──」

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