表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
花道闊歩 -異世界ガイドとして死ぬ運命の少女たちを幸せな老衰エンドへ導きます-  作者: ガリガリワン
第二部 第八章 不骨の札屍族編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

67/80

第六十二話 ぴょんぴょん跳ねる死に体


 * *【グラバ視点】* *



 俊級(しゅんきゅう)……(わたくし)は戦ったこと自体、

 未だにありませんし未知の領域。


 戦争の時、浮天(ふてん)のウルルドを見て感じた、

 あの鮮烈に浮かび上がる死の一文字……


 また……浮かぶというのですか。


「うあーいでよ剣〜」


 不骨(ふこつ)のシキョン。

 名のある兇徒(きょうと)であり知識は得ていますが、

 三度の討伐記録がありながら未だ生存している、

 不死の怪物……風の魔力を放出して操る剣の群、

 そして……関節は動かず移動方法はとび跳ねるのみ。


 圧倒的なハンデを背負う相手だというのに……


 なぜ(わたくし)は震えている?


 ……捨てるべき感情。

 今はただ生きることだけを考えるべきです。

 そうでしょうグラバ、そうするべきなのですよ……!


「かかってこないのかー?

 じゃーわたすから行くぞー」


 ……っ、息をまだ吸うな。

 まだ……まだまだ……!


「……っは!」


 (わたくし)が息を吸った瞬間、

 超高速で剣の群が眼前に迫ってきた。


 ですが……息を合わせれば攻撃は容易く避けられる!


「おー、やるなー」


 まずは初撃(しょげき)を避けられた……!

 次……次の一手(反撃)をすぐに警戒するんです!


「っぐ!」


 風の斬撃……! ただの魔力放出のみで……!


「腕がカチカチだー」


 身体強化魔法が遅れていれば、

 (わたくし)の両腕は切り落とされていた……


「っふー……」


 言い聞かせて落ち着かせなければ……


 心情ですら打ち負かされては勝てるはずもなし、

 自分自身で鼓舞し続けなければ諦めてしまいそうだ。



雷日(らいじつ)一千(いっせん)の時! 雷十刺(ニルベガ)!」


 魔法……なるほど加勢ですか。


「あー?」


 顔に電撃が直撃して仰け反るシキョン、

 下級魔法をあそこまでの威力できるのならば……


「大丈夫そこのおじさん?

 もうこっからは私たちに任しな!」


 テチラ・レーゼルト、殿堂入りパーティーの、

 リーダー、そして準俊級(じゅんしゅんきゅう)魔法使い。

 短くも切り揃えられた黄色い髪に、

 涼しさを優先したような服装。


 まさに現地の人って感じですね……


 それよりも……パーティーメンバーは少数、

 ですが全員が上級以上であり英級(えいきゅう)二名。

 総メンバー九名の剣士一名、

 ほとんどが魔法使いで構成されるパーティー。


「いえ……一緒に戦わせていただきたい」


 ソラニテ王国の実質的な最高戦力、

 それでも……この相手(シキョン)には実力不足。


「……おじさん強そうだし、戦いたいならいいよ」


「いてて……いーたーいー」


 少しばかりの会話を交わす中、

 シキョンが仰け反った状態から起き上がり、

 魔力放出で発生する風の斬撃に加え、

 浮かぶ剣をこちらへと飛ばしてきました。


 風の斬撃を身体強化で硬質化させた拳で弾き、

 テチラ様の方を向けば一人の男性の剣士が前に出て、

 全ての斬撃と剣を弾いていた。


「ラジャト、ありがー」

「とう。姐さん、あいつめっちゃ強いですよ」


 黒い布を口元に巻く白髪で長髪の二刀流剣士、

 副リーダー、ラジャト・ヨマバワル。


 噂程度に剣の腕は耳にしていましたが、

 想像以上の剣筋……


「……つよいやつがいっぱいだー」


「わかってるってラジャト。ナルバ、いつもの」

「いつものでいいんですよね?」


 ……? 身体強化魔法。

 身体が軽くなって魔力量が増えた……


「ほんじゃ、こっからが″本気″だよ」


 ──

   ──

「あー? ── っぁ?」

       ──

         ──

「斬っ……?」


 シキョンの胴体が真っ二つに斬れた……!?

 落ちるシキョンの上半身の後ろに立つラジャト様、

 そのレベルの剣士……? いやしかし……


 そんな簡単に倒せるはずがない。


「姐さん!」

痺俎(マデラウ)!」


「あーバレてた〜」


 テチラ様が地面に向けて杖を刺して魔法を発動、

 相手の身動きを制限する中級雷魔法に合わせ、

 突如、地面からシキョンが飛び出てきたのです。


「ひっ、ま、まってごめんなさいぃっ!!」


 ナルバという方に迫るシキョン、

 しかしその前にテチラ様が声を上げた。


「ラジャト!」

「はい姐さん!」


 ラジャト様から投げられた一つの剣、

 それをテチラ様がキャッチして、

 思い切りシキョンに振り下ろしました。


「っ、外した!」


「うああぁあっ!?」

「!?」


 おそらく今の三名がパーティーの上位、

 後方で魔法を放とうとしていた魔法使いたちに、

 シキョンが急接近してしまった。


 全員が動けない中、(わたくし)は地面を踏み込み、

 シキョンの横腹目掛けて拳を放つと──


「……! 召喚体……!!」


 (わたくし)が貫いたのはただの肉塊、

 召喚魔法によって雑に生み出された魔力の塊。


「気、晴れては颶風(ぐふう)との狂宴(きょうえん)

 剣、掲げるは暁月(あかつき)静寂下(せいじゃくか)

 魔、主上(しゅじょう)神園(しんえん)はいつでも、

 晴れよ……気劫滅(グメラテアス)!!」



 咄嗟に(わたくし)は後方に飛んだ。


「……はっ?」


 次の瞬間、血の竜巻が発生。


 それがなにを意味するか。

 (わたくし)を含めた十名中、五名が──


「オマエらぁあ!!」


 一瞬にして木っ端微塵になったのです。


「っひ……!」

「ナルバ、ビビるな……!!」


 壊滅したのはテチラパーティーの魔法使いたち。


 辛うじて生き残った一人も、

 シキョンから距離を取るには間に合わない。


「ラ、ラジャトさん……たすけ」

「いただきまーす」

「っ!!」


 ラジャト様の接近虚しく、

 生き残った方はうなじをシキョンに、

 骨ごと噛み砕かれて絶命してしまった。



 不骨(ふこつ)のシキョンの戦闘での特徴……それは。


 風の魔力による斬撃や剣の浮遊による斬り裂き。

 召喚魔法による囮の作成に加えて圧倒的な素早さ。

 そしてそれらを可能とする絶大な魔力量。


 加えて……風魔法による自身を中心とした、

 破壊的な竜巻の作成。


「クッソ……バケモノが……」

「ん〜おいしー」


 テチラパーティーのメンバーは基本、

 一人で独立してパーティーを作成しても、

 二流ほどにはなれる実力者の集まり。


 決して弱くもなければこれは上澄み、

 だというのにこれほどまでの差があるなんて……


「姐様……ど、どうすればぁ、どうすればぁ!」


 ナルバという女性の魔法使いはパニックだった。

 初めてのことなのでしょう……目の前で、

 仲間の命が一瞬にして尽きる瞬間が。


「……っく、とりあえず……奴から目を離すな。

 一瞬でも油断したらぶっ殺される!」


 ……この方たちに油断は隙はなかった。

 ただ、それはこの三名のみの話。


 後ろの魔法使いは少しばかり安心していたから、

 それであの末路に辿り着いてしまったのです……


 つくづく……怪物、というよりは。


「次は誰から喰わせてくれるんだー?」


 戦士として圧倒的に格上。



「姐さん……ナルバ。

 俺たちが死ねばソラニテは終わりか?」

「おわり……おわりです……国が滅びますぅ!」


「終わる……だから私たちがいんのさ。

 国の軍に所属しなくたって私たちは戦士……」


 シキョンが血を顎から垂らしながら飛び跳ねて、

 こちらへとゆっくり近づいてきました。


「ねぇ……おじさん。あんた強いよね?

 悪いけど……手伝って、拒否なし」

「そもそも戦うつもりですよ……」


 この怪物を倒さなければ、

 リルメスお嬢様にフリィア様は……死ぬ。


 ケルエタ様の思いも……だからこそ、

 (わたくし)は勝たねばならないのだ。



魔剣化(まけんか)……!」


 ラジャト様がテチラ様から剣を受け取り、

 再び二刀流の状態へとなれば、腕を薄く刃に当て、

 素早く引けば血が剣へと付着。


 二対の剣が氷を纏えばそれは、

 魔剣化状態へと移行し、白髪の末端が水色に光り、

 こんなにも暑い地域で口元から白い息が出ている。


「ナルバ……強化魔法を限界超えて俺にかけてくれ」

「でも……そんなことしたらラジャトさんが」

「いいんだ! 姐さん……いいよな?」


「……いい」


 その言葉がテチラ様から出れば、

 ナルバ様は今にも泣きそうな表情で、

 身体強化魔法の全てをラジャト様に向け、

 重複させて発動し続ける。


 身体強化魔法は″筋力″に″魔力″と″神経″

 それらを強化するのが基本的な使用用途。


「いつでもいーぞー」

「お言葉に甘えて……!」


 しかし、身体強化魔法には弱点があります。


 それは重複発動を行ったが先にある、

 必然的であまりにも大きい代償。


「ゴフッ……ゥアア!!」

「!」


 力の代償により筋肉は限界を超えて血管を圧迫し、

 魔力は本来の量を上回り溢れ出しては、

 神経は極まり全身は激痛に襲われる。


 血眼となったラジャト様は、

 黒い布に血が滲みながらも超高速で接近し、

 それは一時的に俊級(しゅんきゅう)剣士と同等……


「早いなー……!」


 浮遊する剣たちがラジャト様の猛攻を防ぎながらも、

 シキョンに対して少しずつ傷が入りだしている。


 ラジャト様に魔法を当てずにシキョンにのみ、

 (わたくし)の魔法を当てなければいけない。


「火の静が宿る生花、饗宴飾りゆく彼岸、

 悠々なる時の中で枯れることなし、

 囀りこだませし一雫。華環耀(ガネルフメ)……!」


 しかしそれは、あまりにも容易(たやす)い……!


「っおぁ!」


 (わたくし)の魔法がシキョンに直撃。


 一雫のような極小の火炎球、

 英級(えいきゅう)魔法であるそれに直撃し、

 シキョンは一気に体勢を崩して背中が炎上。


魔雷(ロラングア)雷十刺(ニルベガ)!」


 加えてテチラ様の魔法の多重発動、

 威力は落ちても込められた魔力は多く、

 (わたくし)の火と触れ合ってシキョンは爆発。


「取った!!」


 目から血を流しながらそう叫ぶラジャト様、

 シキョンの首に二対の剣が左右から入り込み、

 一気に切断してみせた。


 今度ばかりは確実に斬っている……!


「あーあー」


 ごとんと落ちたシキョンの頭……


 しかし……相手は不死。

 シキョンが長年生きて名が知られるのには、

 あまりにもわかりやすい理由があったのです……


「タルタさまー。つーかーうーぞー」


「何かヤバい……ラジャト!!」

「俺はいいですから……姐さんたちはっ!!」



「″終焉手法(しゅうえんしゅほう)ー″」



 (わたくし)は目撃することになるのです。

 ついに辿り着けなかった魔法戦においての──


 ″奥義″をこの身に。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ