第五十五話 三流パーティー
「こんにちは。ギルド証のご提示をお願いします」
ギルド。
全大陸に分布するなんでも解決組織。
ソラニテ王国領土内に入って4日、
俺たちはソラニテ王国の王都、バグラにやって来た。
「その、実はパーティーを作りに来まして……」
ギルドの建物は二階建ての大きな酒場のような、
すごく親しみやすい見た目のところだった。
「すみません……見たところパーティー作成の、
必須項目を満たしていないようです……」
そんな建物の大黒柱を中心に置かれるカウンター、
そこには3人ほどの受付の人がいた。
今、俺たちが話してるのは獣族の女性だ。
「……? いえ……満たしているはずですが」
「もしかして、改訂をご存知ないでしょうか?」
グラバさんは過去、ギルドに所属していた。
パーティー作成の項目は時代と共に変わったのか?
「20年ほど前に項目がガラッと変わりまして……
パーティー作成には最低7名の戦士、
そして四名の準中級以上の戦士が必須になりました」
グラバさんは少し息を吸って吐くと──
「私も歳を取りましたね……」
老いの実感……グラバさんはもうおじさんだな。
「……では、メンバー募集中のパーティーは、
今このギルドにございますか?」
グラバさんはそう言ってパーティーを作るのをやめ、
募集中のパーティーに入ることに話を変える。
「ございますよ。その前に、
等級とギルドに登録するお方を教えてください」
ギルドで働く人選はすでに決めてある。
「グラバ・シャクベルト、等級は上級です」
「フリィア・サタニルドです。等級は中級です」
「リル……ルメス・シャクベルトよ! 等級は中級!」
3人。リルメスは追われる身なので偽名を使う。
設定としてはグラバさんの娘だ。
「なるほど……でしたら三流パーティーの最上位、
ガガルパーティーなどどうでしょう?
人柄も良いですしオススメですよ」
三流か……悪くないな。
ギルドは一般的な等級制度と違って、
別の等級制度がある。
四流・三流・二流・一流・殿堂入り。
ぱぱっとここら辺は知識を整理しよう。
なにせ強さの指標は熟知しておいて損はない。
まず四流。最大準中級レベルの依頼を受諾出来る。
ここが最低ライン、戦う系の依頼は少なめだ。
三流。最大準上級レベルの依頼を受諾が可能。
多くのパーティーがここに分類されるし、
ここまできたら食っていくのには十分なレベル。
二流。最大英級レベルの依頼を受けられる。
英級の暴野とか兇徒を相手にするから、
もちろんだがここまでくるとかなり強い。
一流。依頼の制限が消え全て受諾出来るようになる。
言っちゃえばここが天井。一流パーティーのリーダーは基本的に準俊級とかの戦士が多い。
そして最後に殿堂入り。
そのギルド内で最も功績を持つ一流パーティー、
これは称号として存在してるようなもんだな。
【全知脳発動】
【ガガルパーティーについての知識】
ガガルパーティーは三流のパーティーのわりに、
リーダーは上級……しかも総勢20名以上で、
上位5名は上級、二流クラスのパーティーだな。
そんなパーティーに入れたら最高だ。
こっちとしてもかなり嬉しい誤算でもある。
「ではそのガガルパーティーのお方たちは……?」
「確か……依頼を受けてたはずですが、
そろそろ帰ってくると思いますし、
こちらで待たれてみてはどうでしょう?」
そういうことなので、
俺たちはギルドの屋内でのんびり待つことにした。
「ケルエタ、ウチらは宿で待機か?」
「そうですね。メアラとルダクルをお願いします」
ここはルサナン大陸。
グロワールと違って通貨は変わってる。
だからグロワールの通貨はここじゃ使えない、
にも関わらず俺たちが宿を確保できた理由……
それはレクセト城から貴重品を持って来て、
こっちに着いてから一回売ったからだ。
通貨が変われど物の価値は揺らがない。
数は少ないが高値で売れたので、
ソラニテ通貨は白金貨7枚はある。
と言っても……すぐに消えるだろうな。
7人分の生活費なんて巨額な出費だ。
だからギルドで稼ぐ必要がある。
……シルフさんはおそらく俺たちが依頼でいない時、
2人にあの話のことを伝えるだろう。
頼れる人が出来れば旅から抜けると言ってるが、
そもそも頼れる人なんて出来るのか?
なんにせよ……旅から抜けられるのは、
心情的には少し辛い話だ。
「今日も楽勝な依頼だったな〜」
「呆気ないですよネ〜」
2時間くらいか?
みんなで座ってガガルパーティーの帰りを待ってると、何やら入口方面がガヤガヤとし始めた。
「おかえりなさいませ、ガガル様」
「余裕に圧勝してきたぜ」
受付のカウンターの前に立つ男。
そいつは見た目からしてただの人知族だった。
「ガガル様、メンバー募集をかけていましたよね。
3名ほどお待ちですよ」
「マジ? どこどこ?」
ガガルって奴は受付の人の手の方を向き、
俺たちを見つけた。
「子供……?」
「中級2名に上級1名です」
「……とりあえず話しかけてくるわ」
ガガルがこっちにやってきた。
それに伴ってシルフさんとメアラにルダクルは、
俺たちから離れていき宿に向かう。
「よぉ、あんたらがパーティーに入りたい人か?」
「そうです」
「俺はガガル・レクレシオ。
このパーティーのリーダーだ」
そう言って手を差し出してくるガガル、
グラバさんはそれを握って握手した。
「歓迎する。パーティーに入ってもらうのは、
俺たちとしても大歓迎だからな」
ガガルは依然として嬉しそうな表情だった。
「あんたらが稼ぎたいのも理解してる。
早速依頼に行きたい、とは思うんだが……
もう今日の分の依頼は終わっちまってな。
ただまあ、明日も俺たちは依頼を受けるし、
明日、あんたらの力を俺たちに見せてくれよ」
ガガル・レクレシオ。三十五歳の男性。
人知族で地剣流の剣士、等級は上級。
全知脳の知識では得られなかったが、
ここまで良い奴だとは思ってなかった。
グラバさんも少し驚いてる。
新入りというのはこの世界じゃ、
良い扱いを受けることもない。
完全実力主義、それがこの世界。
だってのにこの人は俺たちをここまで考え、
ちゃんと他のメンバーも歓迎ムードだった。
大当たりだ。こんなパーティー中々いない。
「ありがとうございます。親切なお方で……」
「ハハハッ! 好きでやってんだから気にすんな。
明日も朝から依頼に出るからな。遅れず来いよ?」
そう言ってガガルさんとパーティーの人らは、
ギルドから去っていった。
「なんか……上手くいきましたね」
「ふふ、あの人たち見る目があるわよ」
「……昔と違ってああいう人もいるのですね」
どうやら昔のギルドと今は雰囲気が違うらしい。
……やっぱ野蛮な人が多かったのか?
* *【ガガル視点】* *
「なあ、メグバ。あの3人どう思う?」
「赤髪の女の子が凄まじい魔力量だった。
青髪の女の子は大剣使い……そんでもって、
長身のあのおっさんは魔力を抑えてる」
俺は今日出会ったあの3人について、
相棒の魔法使い、メグバに聞いてみた。
「特に赤髪の女の子が特殊だ……
魔力がダダ漏れだってのに魔力切れしてない。
あんな魔力……中級とか上級のレベルじゃないぞ」
「オマエがそこまで言うなんてな……」
俺も何かあるんじゃないかとは思ったが、
まさかそこまでの逸材がいたなんてな……
「リーダーぁ、あの3人入れたら、
例の依頼も行けるんじゃないですかネ」
そう言ってくるのはホクホトって剣士。
うちで俺を除けば最強の剣士だ。
「……わからん。明日の依頼でどこまでやれるか、
それ次第で決める。ただ……期待通りだったら、
十分その依頼を受けたって良いな」
俺には目標がある。
それは二流パーティーになること。
ただ、二流パーティーになるには、
二流依頼を3回こなさなきゃいけない。
俺らはもうすでに2回やり切ってる。
ただ……今回の依頼は危険度が高いんだ。
情報が不確定な部分が多く、
思わぬ接敵があり得る。
ギルドのパーティーが全滅する原因のトップ、
それは依頼にはなかった暴野や兇徒の乱入。
戦力を厚くしてそれに対抗出来なきゃ、
二流になってもすぐ全滅してお終いだ。
「今年中には必ずあの依頼を終わらせる。
そのためにも……決意を固めるために!
今日は酒場で一杯やるか!!」
「はぁ……また飲みかよ。
ま、付き合うけどさ」
「おいら飲み大好きですネ〜」
明日が色々と楽しみだ。
強い戦士に対すると何歳になってもワクワクする!




