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花道闊歩 -異世界ガイドとして死ぬ運命の少女たちを幸せな老衰エンドへ導きます-  作者: ガリガリワン
第一部 第六章 旅立ち編

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第五十一話 旅立ち


 兇徒(きょうと)をグラバさんが一掃したので、

 俺たちは早々に船を手に入れた。


 だがしかし、船の操縦が出来る人がいないのだ。


「あの……これどうやって航海します?」

「……ケルエタ様が航海士が出来るのかと」

「これウチもわかんないよ?」


 操縦というより導く人がいない。


 俺含めた大人側はお手上げだ……


 子供の四人に航海士が務まるとも思えないし、

 ……困ったな。


「グラバ、船の操縦って魔法と同じ?」

「いえ、そんな簡単なものじゃありませんよ」


 この世界の船についての知識は得てある。


 まず帆船(はんせん)が主流で風で動く船だ。

 船には必ず二人の風魔法使いと強い戦士が一人、

 そして航海士と調理師が一人ずつ必須……


 風魔法を動力にして動かすだけなら、

 聞いただけじゃ簡単そうだが……


 そもそも魔法は基本的に威力が高い、

 帆を突き破らないほどの風を当て続ける。

 それを何時間もしなきゃいけないんだ。


 技術もそうだが精神力も要求されるし、

 風魔法使いはそれに加えて航海士からの助言、

 それを頼りに船の方向を変えなければならない。


「風魔法を扱うことは出来ても、

 船の操縦が出来るとは限らないのです」


 グラバさんが言う通り船の操縦はクソゲーだ。


 操縦自体はリルメスとグラバさんでも出来る……

 と思っている、調理だって多少できるさ。

 強い戦士はもちろんグラバさん。


 航海士ただ一人がいない。


「グラバさん……兇徒(きょうと)にいなかったんですか?

 航海士とか……なんかそこら辺に詳しい人

「いましたし捕えようとしたのですが、

 自害されてしまいました」


 覚悟決まりすぎだろ……


「ケルエタ様……航海の知識は?」

「ありますけど……全然理解できないですよ。

 理解にも今からじゃかなり時間かかりますし……」


 確かに航海の知識はすでに全知脳(ぜんちのう)で得てる。

 ただ、知識があっても使いこなすのは別だ。


 俺は知識だけある技術も経験もないド素人、

 スポーツ観戦だけで知識をつけたようなものなんだ。


「……とりあえず、船出してみます?」

「とりあえずって……大丈夫なのかよケルエタ」

「でも……出るしかないですよ。

 霧も晴れちゃってますし、バレたらそれこそ」

「でもこのまま出したら……」


 霧の散布を行ってた兇徒(きょうと)ももういない。

 このままじゃ近いうちに絶対バレる。


「あーもう、ちょっと!! なに揉めてんのよ!

 難しい話ばっか、風魔法で進めればいいんでしょ?

 あーだこーだ言ってるなら言ってなさい。

 あたしが全部解決してやるわ!」


 リルメスがそう言って船の後部に立つ、

 杖を取り出し帆にそれを向ければ魔法陣を展開。


「リルメスお嬢様そんな簡単なことでは!」

「うるさいわね! フリィ! (いかり)を上げなさい!」

「え、あ……う、うん!」


 グラバさんの制止を振り切って、

 リルメスは風の魔力を辺りに漂わせる。


 フリィアちゃんも言われた通り(いかり)を上げ、

 船はいつでも動ける状態になった。


「ちょちょちょ! 無策の航海はマズいですって!」


 俺は止めた。ただもう止まる状況でもない。


「ここ最近ずっと難しいことばっかり……

 失ったものばっかで嫌なことばっかり!

 もううんざりなの!!」


 リルメスの本音が甲板に響き渡る。


「リルメスちゃん……」


「お父様もお母様もお祖父様も!

 城のみんなも、町のみんなも!!

 みんなみんな、もう会えない!!

 ちゃんとみんなの話だって聞いてるのよ。

 あたしたちは託された存在なんでしょ?」


「……そうです。リルメスお嬢様は、

 リアバダ様……いえ、ボルワール家の未来、

 そしてグロワールの未来が託されています」


 リルメスはそれを聞いて苦笑いした。


「演劇だったらあたしが主役ね……

 はぁ……変にみんなあたしに気を遣って、

 もういいのよ、さすがに立ち直るわ。


 もしこの航海が失敗してもいいわよね。

 だってここで立ち止まるなんて──」


 リルメスはずっと戦争から気を落ち込ませてた。

 なんて思ってたのは俺たちの勝手な予想……


 リルメス自体立ち直っていて、

 自分なりにこれからのことに頭を悩ませていたんだ。


「そんなのボルワールの名に似合わないわ!」


 リルメスなりの結論。

 それがこれなんだろう……なんというか、

 色濃く血を継いでるんだろうな。


 あまりボルワール家の人と関わりはなかったが、

 全知脳(ぜんちのう)の情報からしてかなり前向きだ。


「リルメスお嬢様……」


「今のがあたしなりの答え……

 ダグンドの奴らは絶対にあたしが許さない。

 あたしは魔法の天才よ。いつか……いつか、

 あたしなりに復讐してやるんだから……!」


 リルメスの目がギラついてた。

 フリィアちゃんと同じギラつきだった。


 故郷を戦争で壊されて、

 色んな人も物もたくさん失った。


「……ケルエタ」

「わかってますよシルフさん」


 こうなればもう言うことはない、

 確かにここ最近難しく考えすぎてた。


 100%の安全を求めすぎてたな……

 全部が全部上手くいくわけじゃない。


 改めて実感したよ。この世界はゲームじゃなくて、

 俺が元いた世界と同じ一つの現実なんだ。


「これで大失敗したら運命ってことですね」

「ちょっとケルエタ! 変なこと言わないでよ!」



 * * *



 さて船を出すわけだが、依然問題は未解決。


 航海士はいないし、勘頼りの航海になる。

 となると重要になってくるのは操縦士の技術力だ。


 だけどその心配はあまり要らないかもしれない。


「こうすれば良いのよね……!」


 リルメスはずば抜けて魔法の操作が上手い。


 それに加えて魔力量もめちゃくちゃ高いし、

 魔法使いとしては本当に天才の類だ。


 帆に風魔法を当て始めたリルメス、

 普通ならこの時点で威力を誤って帆を破る。


「すごいですね……本当に出来てる」

「案外簡単よ……! あたしからすれば余裕ね!」


 ……すご、一発でそれ出来るものなの?


「……ねえグラバ、聞きたいのだけれど、

 これってどこに向かうの?」


 リルメスがそう顔をグラバさんに向けて言えば、

 グラバさんは地図を取り出して少しして話し出す。


(わたくし)が指を向ける方向が目的地です。

 交代しながら頑張りましょうリルメスお嬢様」

「……ふふ、えぇ任せなさい!」


 リルメスの調子が戻ってきた。

 そんなリルメスを見れて俺は嬉しい。


「フリィア様、嬉しそうですなの」

「ん、そうかな?」

「このルダクルから見ても嬉しそうな顔でした」


「……えへへ、バレちゃった?

 いつものリルメスちゃんが帰ってきて嬉しいの」

「メアラもそう思いますなの」


 なんだか活気が戻ってきたな……

 次のルサナン大陸でもこの活気のまま行きたい。


 よし、俺も頑張ろう。

 今のうちにルサナン大陸の情報を整理しておく、

 そしたらあっちに着いた時スムーズに過ごせる。


「……グラバ、水族(すいぞく)って大丈夫なの?」

「ご安心を、(わたくし)がいる限り心配は不要でございます」

「さすがグラバね!!」



 * *【万凍(ばんとう)大陸のとある場所にて】* *



「なるほどねぇ……早い者勝ちか」


 東西南北に分かれる天級(てんきゅう)兇徒(きょうと)

 その一角である孤独のニュクス・マユレミアは、

 ある一つの紙を眺めながら思考を巡らせていた。


「いよいよ物騒なこと言い始めてきたね。

 ま、私は物騒な方が好きだからいいんだけどさ」


 孤独のニュクスは軍勢を持ち得ない。


「さて、待たせちゃったかな? 

 手紙は放っておっけない性格でさ」

「不意打ちは俺に似合わんからな」


「おー良い性格だ。最近刺激不足で困ってたからさ、

 助かるよ、君みたいな未知なる刺客はさ……」


 極寒の地にて放浪する性別不詳のニュクスは、

 四人の天級(てんきゅう)兇徒(きょうと)の中で、

 最も残虐であり孤独な存在である。


「それにしても、ゴチャゴチャとよくそんな話せるな」


 そんなニュクスは今、ある戦士と対峙していた。


「あぁそう? なに緊張してんの?」

「いいや全く」


 準天級(じゅんてんきゅう)と呼ばれる剣士、

 加えて彼は蒼剣(そうけん)流の次期トップ、頂点に近しい存在。


「名を教えてよ。覚えておきたい」

「バラス・ジャレンダだ」


 バラス・ジャレンダ。

 彼についた異名は蒼月(そうげつ)


「良い名前だね」

「そう思ってるのか?」

「ふふ、思ってないよ」

「はっ所詮、戯言(ざれごと)か」


 孤独のニュクスは軍勢を持ち得ない。

 しかしそれは、他に依存した軍勢のことである。


「一対一は嫌いなんだ。

 おいで、″僕たち″」

「それがお前の固有魔法か?」


 孤独のニュクスは自身のみで構成される軍勢を持ち、

 その圧倒的な質と量で完全無敗を誇る。


止めどない欲望(ニュグランカディア)


 無制限の分身、それが孤独のニュクスの持つ、

 ″一つ目″の固有魔法である。



「ごめんね。これはただの気まぐれさ。

 ただ、退屈で君に死んでもらいたくて……」

「はは、そうか。殺される心配もしておけよ」


 後日、蒼剣(そうけん)流の次期トップのバラス・ジャレンダが、

 万凍(ばんとう)大陸で非業の死を遂げた事実が広まるのは、

 また少し先の話である。

第一部 第六章 旅立ち編 -完-


次章

第二部 第七章 ギルド編


* * *


ここまで読んでいただきありがとうございます!

明日の投稿から第二部へと突入!

一気に世界観が広がりはじめますので、

ぜひお楽しみに!!

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