第12話 特貸「回転すし」後編
「おっ、ラーメンあるじゃん。俺、取り敢えずラーメンね。それと、ラーメンにはコイツかな。サーモン餃子」
「アタシもなんか頼もっかなー。ウニのクリームパスタとか美味しそーじゃん! あとはサラダかな?」
「私は茶わん蒸しでも貰おうか。少し温かいものも欲しいからな。あとアサリの味噌汁も貰おう」
「フライドポテト。唐揚げ三種盛り。」
サイドメニューは色々研究しておいたよ。やっぱり温かい物のオーダーが多いね。
一応枝豆とか漬物とかも用意しておいたけど今のところ取られてないね。お酒飲む人もいないからかな?裏にいるソルは枝豆好きだからきっと喜んでると思う。
それにしても勇者さん達は注文も息ぴったりなんだよね。タイミングって言うかさ。
そんで私が料理してみなさんが食べて。ターン制かな?そしたら調理は私のターンだね。温かいものは温かくだからね。早速作ってくよ!
「サラダ、これキレイ。うん、鯛の白とトマトの赤と、水菜とアボカドがキレイに飾られて映える感じ?
味付けはシソマヨネーズだ。マヨネーズが鯛の淡白な味と野菜たちにすっごいあってんじゃん。それにさっぱりしてるし。水菜のシャキシャキ感もあってまたお腹が空いてきちゃう魔性の料理だよこれ。
それでウニのクリームパスタは一転してすっごい濃厚! ウニたっぷりで贅沢な味だし、ウニそのままよりウニ感が強いってどうゆうこと?
サラダはちょっとカルパッチョ風で、このパスタ。一気にお寿司屋さんがイタリアンになっちゃったじゃん!」
サラダは色々考えたし用意もしたけど今回は鯛のカルパッチョ風サラダにしてみたよ。生の鯛を薄切りにしてお皿に並べて。
ソースはシソマヨネーズを採用してみた。お寿司もシャリは酢飯だしお酢感が強いドレッシングじゃなくて変化を付けたかったんだよね。
それに水菜とアボカドとトマトと合わせて。お野菜もしっかりと食べられますよ。
ウニのパスタは賢者さんの反応も上々だったし盗賊さんにも受けたみたい。
「茶わん蒸しは2種類か。まずこちらは普通の茶わん蒸しだな。かまぼこ、トリ、しいたけ。三つ葉。シンプルなだけに卵の風味と出汁の風味がダイレクトに味わえる。かまぼこは魚の風味が残ってて、しいたけは肉厚で噛むとキノコの旨味が飛び出してくるジューシーさ。三つ葉の香りもいい。
ウニ茶わん蒸しの具はウニだけだが、これはウニの味がガッツリと飛んでくる。僅かに卵に感じる白ワインの風味とマッチしていて美味しいな。
アサリの味噌汁はもう何も言うことがない。貝好きの私には最高の飲み物だよ」
「フライドポテトは厚切り。ほくほくのジャガイモが美味しい。それと唐揚げはタコと鶏とイカゲソ。
少しニンニクの効いたタコはコリっとした食感。ゲソはショウガ効いてて、それで思った以上に柔らかい。衣も違う。タコは薄めであっさり。ゲソはしっかり衣がついてて違いが楽しい。鶏のから揚げは安定安心。三者三様の味わいが楽しい」
定番の茶わん蒸しと汁物は正統派でいったよ。赤だしや青さもあるから後で試したい人は試してね。
肉厚のしいたけは美味しいよね。色々好みはあると思うけど私は茶わん蒸しのしいたけ好きだよ?
揚げ物も定番と言えば定番。今回は三種盛りで素材や衣の違いを楽しんでもらおうと思ってさ。狙いは成功だったみたい。
「この普通の醤油ラーメンなんだけどさ、そう、こういうのでいいんだよ。ラーメン屋のラーメンは色々進化しちゃってるのも多くてさ。こういうサイドメニューとかにあるラーメンのシンプルさが欲しくなる時もあるんだな、分かる?
鳥ガラのスープに醤油ダレ。メンマとネギとチャーシュー。あー、落ち着くわ。ラーメンとしてはあっさりなんだけどお寿司の途中で欲しくなる油分もしっかりあるし、これイイね。
ん?これは! このチャーシューは魚? マグロか! 角煮じゃなくてしっかりと焼いた感じの歯ごたえがあるぞ。普通のラーメンと思ってたらコレは不意打ちだ。でも、嬉しい不意打ちだ。このちょっとした一工夫が、一気にすし屋のラーメンって感じにしてる。
そして鮭餃子。皮からうっすらと見える鮭の色合いが奇麗だし、生臭みも無くて美味しいよ。マヨネーズと和えたフレーク状の鮭がこっくりとした味で満足感が十分に得られる一品。
ラーメンと餃子なんだけど、すし屋にいる感じは消えてないという色々不思議な感情だ。これも回転すしの楽しみなんだろうな」
ラーメンもね、悩んでシンプルな醤油ラーメンにしたけど好評だったみたいで良かったね。一工夫はマグロチャーシュー。
醤油とみりんに八角と五香紛を少量入れて中華の風味を出して。マグロを焼いてから調味液につけて最後にまたロースト。
これで味も食感もチャーシュー感を出したよ。
それでその後も色々とメニューを楽しんでもらってたんだけど。ここら辺で今日のおすすめの一品も食べてもらおうかな。皆さんそれぞれの、おススメの一品。
「皆様お楽しみいただけているようで私も嬉しいです。それで、皆様におススメの一品をご用意しているのですがご提供してもよろしいでしょうか?」
「そんなの良いに決まってんじゃん。ここまでお寿司もサイドも美味しかったしさ、ねっ? みんなもそうでしょ?」
全員が頷いてくれてる。嬉しい限りだよね。それじゃ今回の特貸の目玉、皆さんそれぞれに食べてもらうよっ!
「―っ。これは、まさか? ああ、シャリっとした感覚。やっぱり、そうだ――」
「勇者どうしちゃったのよ急に黙ってさ。って私んとこにもきたきた。あっ、この香りはもしかして? さっきと違うよねコレ? やっぱり、コレ。アレじゃん――」
「これは…………ゆっくり味わわせて貰おう。うん、懐かしい――」
「これ好き。昔を、思い出す――」
四者四様、それぞれに出したネタは違うけど。多分、感じたものはみんな同じ。望郷、だと思う。
さっきまでは多種多様なメニューを前に食べたり食レポしたり、次のお皿を悩んだり相談したり。みんなでワイワイ楽しんでもらってたけど、今この瞬間の4人の間には静寂。この沈黙はきっと故郷へと思いを馳せている時間。
きっと、これは――
「――俺は北海道出身でね。ルイベっていう、鮭を凍らせて食べる料理があるんだ。転生してからは初めて食べたけど、久し振りの故郷の味は、格別だったよ」
「アタシも、イクラはさっきも食べたけど塩味だったんだよね、これは味噌漬け。醤油漬けよりメジャーじゃないけど、アタシの実家ではコレが多かったんだ。やっぱり、実家の味っていいじゃん?」
「カツオの塩たたきだ。藁焼きした風味と、ニンニクの香り。ポン酢や他の食べ方でもいいが、この食べ方は懐かしさも相まって、格別だった」
「納豆はあまり異世界では食べられない。昔は毎朝食べてた。それに紫蘇と味噌。納豆巻きは好きだったけど、納豆だけよりこっちの方がお寿司っぽくて、好きかも」
皆さんの出身地とか好みも聞き取りして貰ったんだよね、チャンさんに。それと色々と好みも。楽しさを最大限に味わってもらおうと思ってたけど、やっぱりウチは想い出の味もお届けしたいから。
だから故郷の味を探して、色々とお寿司に合うようにして食べて貰ったんだ。その反応は、皆それぞれだったけど。
それでも、懐かしい味、故郷の味に、感動してくれてたと思う。
「いやこのルイベなんだけどさ。昔は何とも思わなかったんだ。北海道にいた時は普通に食べてた。これ以外にも色々と、故郷の味ってあったけどさ。日本にいた時は東京に出てからも、たまに北海道〇〇、みたいの食べてもそこまではさ、感動しなかったんだ。こういうの食べてたな、くらいで。
でも今、転生してもう20年近く経った今、コレを食べるとさ。あの頃の、日本にいたころのことも思い出して。こっちで毎日楽しく暮らしてるし、帰りたいとか無いんだけど。なんていうか、まとまんねぇけどさ! すげぇ、いいと思っちまったよ」
「私も、高知のことを思い出したよ。こう、味に紐付けられた記憶というのもあるものなんだな。この味は、懐かしかった。
それにだな。美味しいんだ。高知のカツオのたたきはそもそも他県に誇るものでな。そうだ、皆にもコレを食べさせてやってくれ。それで、カツオのたたきの由来はだな、もともと――」
「なら俺も。俺の故郷の味もこいつらに食べさせてやってくれよ。まだあるだろ?あと、俺には刺身の状態で一皿ね」
「アタシも! 味噌漬けだって美味しいんだよイクラ? それにこれさ、イクラ自体が日本にいた時食べたやつより美味しいかも? って感じだし」
「納豆も食べるといい。納豆は身体にいい。美容にもいい。みんな食べるべき」
あらら、みんな自分が食べたやつを他の人にも勧めてるね。どれも美味しいから、故郷の味を抜きにしても楽しめると思うよ。
それで剣士さんは一気に饒舌になったね。料理の味とか地方ごとのこだわりを感じるかも。そういうのあるよね?
故郷の味にちょっとだけ静かでホロっとした空気になったけど。またみんなで仲良くワイワイ食べる感じに戻ってくれたよ。
会話の内容は、それぞれの想い出話が多くなってるみたいだけど。小さい頃から一緒の皆さんだからそういう話もしてたんだろうけど。
懐かしの料理と一緒に語る故郷の話はまた別だよね。剣士さんの言う通り、料理と共にある想い出だって、あるんだからね。
人生いろいろ、故郷の味も色々。そんでもってお寿司もいろいろ、サイドメニューも色々な今回の特貸だったけど。
楽しさも美味しさも感じて貰えたと思うし、想い出の味も届けられたかな。
4人だったしちょっと心配だったけど、今回の特貸も大成功だねっ!!




