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87話 所詮、勝者は敗者の気持ちが分からないってことだ!

「あ…ああ。」

空の彼方に広がる爆発を茫然とした様子で見上げるラッフェル。

「ちっ。余計なことを。」

ジェイクは険しい顔つきだった。

「ヒッカ、お前は…。」

「うわああああー!」

ジェイクが何か言い終わる前に、ラッフェルが斬りかかってきた。だがその剣を冷静に受け止めたのはヒッカだった。

「師匠。どいて欲しいっス。」

「ラッフェル、落ち着け。」

「いいからどくっス!それとも何スか?邪魔するんスか?」

「そんなつもりは…。」

「うるさい!師匠…、いやもうお前は師匠なんかじゃない!敵だ!」

ヒッカに剣を向けるラッフェル。完全に頭に血が上ったラッフェルに言葉は届かなそうだ。

「…。」

ヒッカはジェイクとライクに目配せした。

「ジェイクさん、ここは俺が引き受けます。ライク、悪いんだけど…。」

「何をごちゃごちゃとー!」

ラッフェルが大振りで剣を振り下ろす。ヒッカは再びその剣を受け止める。


「うん!任せて!」

そう言うやいなや、ライクは駆け出した。

「では任せたぞ。ヒッカ。」

ジェイクは鍔迫り合いをしている横を抜け、ギースの元に向かう。

「待て!逃げるのか!?」

ラッフェルがジェイクの後を追いかけようと、ヒッカに背を向ける。その背中をヒッカは剣の腹で叩いた。

「って!卑怯者!」

ラッフェルはヒッカに向き直った。

「お前…、見損なったぞ!」

「…言うことはそれだけか?」

「何を!?」

「ラッフェル、君は冷静ではない。俺が相手するよ。かかって来い!」

「そんなの!言われなくても!!」

ラッフェルの闘志は凄まじく、纒う魔力が一段と熱を帯びた。

(…成長したな。ラッフェル。)

一方のヒッカはその様子を眺め、静かに魔力を高めた。




ジェイクとギースは激しく剣を打ち合っていた。

「惜しいねぇ。共倒れしてくれたら面白かったんだが。」

「そんなことにはならん。」

「どうだか。少なくともあの小僧はお前を殺す気でいるぞ。」

「それがどうした!」

ジェイク渾身の一撃がギースの鎧を切り裂く。ギースの脚部の鎧の隙間から血が滲み出る。

「痛えじゃねえか!」

傷を負わされたギースも剣を派手に振り回す。

「気に入らねぇ。気に入らねぇ!気に入らねぇー!!」

「…。」

ジェイクはその剣捌きを受け流し、かわした。

「気に入らねんだよ!」

ジェイクに対する憎しみは相当なものの様だ。

「気に入らないのは構わない。だが俺も、お前だけは許せん!」

「へっ。」

ギースは唾を吐き捨てた。


「所詮、勝者は敗者の気持ちが分からないってことだ!」


「…!」

ジェイクは再び思い出した。親友だった二人が決別した時のことを。



ーージェイクの回想ーー

ジェイクは混乱していた。召喚獣に寄生されたとは言え、親友が仲間の亡骸を無碍に扱うなどとは考えられなかった。ジェイクは団の全員が高潔な精神を持っていると信じていたからだ。

「答えてくれ!ギース!」

「…。」

その呼びかけに、心底うんざりした表情をジェイクに向けるギース。

「面倒だな。どうでもいいだろ?」

「ギース、一体何を…?」


「所詮、勝者は敗者の気持ちが分からないってことだ!」


「勝者?敗者?一体何のことだ?」

「あ〜!それ自体が鬱陶しい!」

ギースは荒々しくジェイクに斬りかかる。ジェイクもその攻撃を受け止める。

「昔からそうだよなぁ。お前は?いつもいつもいつも!俺に無いものを手に入れやがって!」

「ギース。何を?」

「お前は強い。俺たちの中で聖騎士になるのも一番早ければ、団長に昇格するのも早かった。」

「そんなこと。お前だって聖騎士だろうが。」

「そんなこと?お前に比べて二年も遅れている俺が同じだとでも言うのか?バカにしやがって!」

その瞬間、ジェイクはギースに寄生する召喚獣が少し脈を打った様に見えた。

「俺がやっと聖騎士になれたかと思ったら、お前はもう団長だ!これが果たして同じだと言えるのか!?」

「それは…。」


ジェイクは少なからずショックだった。ギースは幼少期からお互いを高めるためのライバルであり、親友だった。少なくとも、ジェイクはそう信じていた。ジェイクが聖騎士に昇格するのも、団長に就任するのも、ギースはまるで自分のことのように喜んでくれていた。

(あれは…ギースの本心ではなかったと言うことか?)

ジェイクの心に陰りが生まれる。ジェイクはギースの攻撃に押されつつあった。


「いい気なもんだよな。お前は。俺から全てを奪ったくせに。」

「何を!言っている!?」

「お前は俺からヘレナも奪った!」

「ヘレナ?それは三人で決めたことだろ!?」

「そんなこと…、そんなことー!」

ジェイク、ギース、ヘレナは幼馴染だった。三人は幼少期からよく遊んでいた。将来の夢を語り合い、よく笑っていた。

ジェイクはヘレナに好意を抱いていた。そしてそれはギースも同じだった。ジェイクとギースはお互いに譲れなかった。譲れなかったからこそ、二人は正々堂々と勝負した。

ジェイクとギースが騎士になった年、二人はヘレナに正式に交際の申し込みを行った。そしてヘレナが手を取ったのはジェイクだった。


その時、ギースは『くっそー!負けたぁ!ま、幸せになりなよ!お二人さん!』と快くエールを送った。


「そんな。お前は応援してくれてたんじゃないのか?」

「他人の幸せを応援するバカがどこにいるんだ!それどころか正式に婚約までしやがって!!」

ギースの攻撃が苛烈さを増す。

「もう俺はどうでもいいんだ!全部ぶっ壊れちまえー!」

「ぐっ!」

ギースの鬼神の如き猛攻に、ジェイクは剣を弾き飛ばされた。

「ああ…。今は良い気分だ。体の中から力が湧いてくる。こんな風にな!」

ギースの魔力が熱を帯びる。

(何をする気だ?)

ギースは左手を高々と掲げ、火炎弾を連続で空に放った。

「今の俺にはこんな事もできるんだよ!」

ギースは左手を振り下ろした。その動きに連動する様に火炎弾が地上に降り注ぐ。

「ぐっ!!」

いくら炎属性の扱いに長けているジェイクとは言え、魔導士レベルまでに高まったギースの攻撃になす術はなかった。

ーー


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