74話 大丈夫、俺が必ず助けるから
タイトルをちょっと修正しました。
主人公像が伝われば良いなって思ってます。
これからもよろしくお願いします!
ヒッカの『治癒魔法』にその先生は反応した。
「治癒魔法?君はそんな高等魔法が使えるのかね?」
「できるはずです。やってみます。」
「それは一体どう言う?」
「ごめんなさい。俺行かなきゃいけないところがあって。」
「行かなきゃいけないところ?」
先生の質問にヒッカは答えなかった。いや、耳に入らなかった、と言うのが正確な表現だろう。先生はいたく混乱していた。
「フィリー!ライク!俺、少しだけ席を外すけど頼んだよ!」
「え?え?」
それだけ言うとヒッカはそのまま部屋を飛び出した。
「ヒッカくん!?」
ライクが声をかけるも、ヒッカはどこかへ飛び去ってしまった後のようだ。
「一体…、どうなっておるのだ?」
「あはは。ヒッカくん、ああなると聞かないとこあるもんね。」
「ですね。でも今は…。」
「そうね。頑張ろ!」
「はい!」
フィリーとライクは【ヒーリングミスト】で包帯を剥がす作業に取り掛かった。
「やめてやめて!痛いよ!やめて!!」
アーシェが叫ぶ。血で滲む包帯を剥がすのは容易では無さそうだ。
「可哀想に…。」
先生と呼ばれた人物がアーシェに回復魔法をかける。完全に痛みを解消できる訳ではないが、何もしないよりはマシだ。
「アーシェさん!頑張ってください。私たちも頑張ります。」
額に汗を浮かべるフィリーが言う。
「あの少年は『治癒魔法』とか言っておったが、本当に大丈夫なのかな?」
先生はライクに尋ねた。
「大丈夫だと思います。ヒッカくんはいつだって、困難を乗り越えて来た人ですから。きっと今回も何とかしてくれます。ヒッカくんは私たちのヒーローなんです。」
「ヒーロー…、か。」
「ええ!」
「…それは心強いの。」
先生は独り言のように呟いた。
その頃、ヒッカは…。
「ついた!」
高速で空を突っ切るヒッカが向かっていたのは、例の泉だった。
「…。」
持って来た皮袋一杯に水を汲むと、そのままUターンしてオーズィエルの町へと急いだ。
途中、ラッフェルが泉に向かっているのが見えた。
(ラッフェル、頼んだよ。)
「…すまない。俺は外で風に当たってくる。」
ジェイクは生気のない顔でフラフラと部屋から出ていった。
「あやつは大丈夫なのかの?」
「…分かりませんっ!」
「大丈夫?少し休も?」
「私は大丈夫です。それに、ヒッカさんならきっとすぐ帰って来ますよ。それまで…は、全力です…!」
「そう…だね!」
シーツを用意したケビンは落ち着きがない様子だ。
「なあ、俺にできることはあるか…?」
「大丈夫です。」
「任せてください。」
二人の返事にケビンはただ頷くしかなかった。
そこへ…。
「ただいま!」
「ヒッカくん!」
ヒッカが慌ただしく部屋に入ってきた。
「ありがとう!フィリー。ライク。かなり包帯とってくれたみたいだね。後は…。」
「お前さん、一体どこに行ってたのかの?」
「ここに来る時に見つけた泉です。そうだ。この水を入れる入れ物を貸してください。」
「泉だと?本当にあんなところまで?」
「詳しい話は後でします。だから!」
「おお。すまんかった。おーい。瓶を持って来てくれんか?」
程なくして助手が瓶を抱えて持って来た。
「ありがとうございます。」
ヒッカは瓶の中に水を入れた。
「これでいいか。」
ヒッカは目を瞑り、大きく深呼吸した。ヒッカの魔力が高まっているのは誰の目にも明らかだった。
ヒッカは心の中で自分と対話していた。
(俺ならできる。できるさ。できるはずだ!)
(…。)
(そうさ。俺が…必ず。)
ヒッカの頬に涙が伝う。
「んん〜?」
「え?これって…。」
ライクとフィリーはヒッカに違和感を覚えた。傍目にはヒッカはいつもと変わらない。穏やかな魔力、困難に立ち向かう言動は普段からよく見るものだ。
ただ一つ、ヒッカの纏う魔法が水属性であることを除いては。
(まだだ…!もっと、もっと!!)
ヒッカは魔力をさらに増大させる。
「…すごい。」
「行くぞ。」
ヒッカは両手に魔力を集中させた。目で視認できるまでに魔力を高め、その魔力をアーシェに差し出した。
水色に光る拳ほどの大きさの魔力がアーシェの体に吸い込まれていく。
「いたっ…い。いた…。…。」
少しの時を挟み、アーシェは叫ばなくなった。代わりに先生は慌てふためいた。
「お前さん!?一体何をした!!」
「大丈夫です。今アーシェさんは眠っているだけです。今のうちに…。」
「眠っている?」
「はい。いくら治癒魔法とて万全ではないです。なので、先に眠ってもらいました。」
「そんなことが…。」
「次は火傷部分だ。俺が残りの包帯を全部取るから、合図したら二人はすぐシーツを被せるようにして。」
「わ、分かったわ。」
「うん。じゃ、いくよ。」
再びヒッカは魔力を高めた。
「【ヒーリング】」
今度は発動した魔法を瓶の中の水に入れた。水は薄い青色に光っているように見えた。
「…。」
ヒッカはその水で患部を手早く拭き、皮膚にへばりついた包帯を次々と取り払った。
「これで全部かな。シーツをかけてあげて。」
「うん!」
「はい!」
アーシェの体は白いシーツに覆われた。
ヒッカはそのシーツの上から水を染み込ませた。アーシェは起きる様子はない。
「大丈夫、俺が必ず助けるから。」
ヒッカは独り言を呟いていた。
瓶の水はなくなってしまったが、準備を終えたヒッカはアーシェの手を取り再び【ヒーリング】を発動した。ヒッカの込める魔力に比例して、濡れたシーツが乾き始めた。
ヒッカが軽くシーツをめくったところ、火傷跡は薄皮で覆われていた。比較的傷が浅かったところは、よく見ないと分からないくらいに回復していた。
(まずはこれでいいか。でももう水がない。ラッフェル、早く帰って来てくれ。)
「ヒッカさん!すごいです!火傷治っちゃってますよ!」
フィリーが興奮した様子で喋り出した。
「ん…んん。」
あまりの声の大きさにアーシェが目覚めたようだ。
「あ!アーシェさん目が覚めたみたいだよ!」ライクも気分が高揚しているようだ。
「先生…?それにあなたたちは…?」
「待って!まだ傷が塞がって…。」
ヒッカは、アーシェが起き上がるのを止めようとしたが間に合わなかった。起き上がったアーシェからシーツがずり落ち、そして露わになる胸の膨らみ…。
「あわわぶっ!」
今度は鼻血を出したヒッカが昏倒する番だった。
ここまでお目通しいただきありがとうございます!
ちょっとでもいいなと思ったら、ブックマーク登録や評価ポチっといただけると嬉しいです。
よろしくお願いいたします!




