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71話 そんなこと信じられないな

ジェイクが発言した『俺たちは強いぞ!』と言う言葉に、少年は目を輝かせた。

「おじさんたちにお願いなんだ!悪者をやっつけて!!」

ジェイクは間髪入れずに答えた。

「ああ。やっつけよう。そのためにも詳しく話を聞かせてくれないか。」

「いいよ!あのね。」


パン!

少年が言葉を続けようとしたところ、母親らしき人から平手打ちを受けてしまった。たまらず泣き出す少年。

(そんな…。)

少年はそのまま手を引かれ、家の中に入ってしまった。ゴトゴトと扉の内側から音がする。鍵をかけられてしまったのだろう。これでは話を聞けそうにない。


気付けば他の町人も姿を消し始めていた。

「…どう、しましょうか?」

「こうなってしまってはな…。仕方ない。他に聞けそうな人を探すか。」

周りを見渡すジェイク。だが誰もかれもが見て見ぬふりをしている。苛立ちを見せるジェイクと目が合った女性は軽く悲鳴をあげ、いそいそと背を向けてしまった。


静寂が辺りを支配する。

「くっ。」

「困りましたね。」

「あの人たち、いったいなんなんスかね?あの態度。」

ラッフェルは憤慨した様子だ。

「確かに気になるね。」

「うん。それにあのおじいさんが言っていた『悪魔』って何なの?」

「分からんな。もし本当に悪魔が出現していれば、ギルドの方にも何かしらの情報が出ているはずだ。だが、ヒュージアル都市ではその様な話は聞かなかった。」

「では『悪魔』ではないと言うことなんですか?」

おずおずと質問するフィリー。

「…。」

それに対してジェイクは口を開かなかった。代わりにヒッカが答える。

「可能性の話だと思う。仮に『悪魔』だったとしたら、ジェイクさんの言うとおり周辺にも情報伝達される。と、思う。それが無いってことは、『悪魔』ではないか、『悪魔』が出現したのがここ最近の話なのか。あるいは…。」

ふいにヒッカはジェイクから殺気を感じた。

「…ヒッカさん?」

「ん?ああ。あるいは、『悪魔』ではないナニカかな。」

「その『悪魔』じゃないナニカって?」

「俺の勘なんだけど、魔獣ではないと思うんだ。もし本当に魔獣なら、あのお爺さんも『魔獣』って言うと思うんだ。」

「ってことは魔物なんスかね?」

「その可能性もあるけど、それならやっぱり同じ様に『魔物』って言うと思うんだよね。例えばゴーレムだと、実物は見たことなくても知識として知ってる人は多いと思うんだ。」

「なるほど〜。」

ライクも感心した様に頷く。

「だけど魔物だったら腑に落ちない点があるんだ。」

「腑に落ちない点…?それって??」

「それは、町の被害状況だよ。」

「被害っスか?」

「そうなんだ。確かに町は色んなところを壊されたりしているけど、魔物相手にしては被害が少なすぎるんだ。魔物も種類が多いから一概には言えないけど、例えばドラゴンが相手なら村一つくらいなら簡単に消される。」

「…。」

「それに何より、お爺さんが『悪魔の手下』って言ってたことだ。手下ってことは仲間がいたってことじゃないかな?」

「仲間っスか…。」

「うん。俺は複数のナニカがこの町に攻めてきたんじゃないかなって思う。」

「そんな…ひどい。」

「今の段階では想像でしかないから、もっと見て回る方がいいかもね。」

ヒッカはジェイクを横目で見た。ジェイクはさっきから押し黙ったままだ。

(どうするべきか…。)

ヒッカは町の景観を改めて見回した。そこで奇妙な感覚にとらわれた。確かに色々と壊されてはいるが、いずれも建物としての形は残されていた。

(何でこんな中途半端なことをしたんだ?何が目的なんだろう。)

ヒッカは町の端の方に建てられた物見やぐらを見た。そのやぐらは土台の方が少し焦げてはいるが、その他の破損は見受けられなかった。

(ん?)

不意に何かの影が見えた。その影は足元の何かを拾い上げ、こちらに投げてきた。

「っ…!」

咄嗟にヒッカは【ガストシュート】でそれを迎撃した。何かの正体は石ころだったのだろう。辺りに石の破片が散らばる。致命傷にはならずとも、無防備な部分に当たっていれば、それなりの怪我は免れない。

「誰だ!」

ジェイクが叫ぶ。それと同時にヒッカも瞬時に魔力を纏い、物見やぐらに飛んでいった。



「うわっ!てめぇ驚かせやがって!ガキのナリをして一体何者なんだ?何故こんなことをする!?」

物見やぐらにいたのは一人の青年だった。急に飛んできたヒッカに敵意を向けている。

「あなた方に危害を加えるつもりはありません。俺たちは通りすがりの冒険者です。話を聞かせてください。」

ヒッカは努めて冷静に質問をした。

「そんなこと信じられないな。」

「本当ですよ。これが証拠です。」

ヒッカは冒険者ライセンスを取り出した。

「ふん!そんなものが一体何だってんだ!?」

(ダメか。ジェイクさんの冒険者ライセンスでもダメだったんだから、そりゃそうか。他に何かないか。)

「お前らもアイツの仲間なんだろう?やっさと煮るなり焼くなり好きにしろ!」

青年はこちらの話を聞こうともしない。ヒッカは困り果てた。

(話くらい聞いてくれよ…。ん?)

青年の服の下から包帯が見え隠れする。よく見ると頭にも包帯を巻いているようだ。革帽子の下から赤黒く染まった布が見える。

「怪我してるんじゃないですか?」

「…だったらどうした?」

「見せてください。」

ヒッカは強引に青年の体に触れた。

「いて!何しやがる!」

青年は思わず拳を振り上げ、ヒッカに殴りかかろうとした。が、その拳は振り下ろされることはなかった。

(…コイツ、何て魔力なんだ!?)

青年がヒッカの魔力量に気圧されている間に、ヒッカは【キュアブリーズ】を発動した。

(何っ!?痛みが、引いていく?)

再びヒッカは【キュアブリーズ】を発動する。

「怪我、これで治ったと思います。大丈夫ですか?」

(…確かに痛みは引いている。)

青年が包帯を解いた。傷口は塞がり、痛みは癒えていた。

「何があったか分かりませんが、俺たちは本当に危害を加えるつもりはありません。でも、あなた方に不安を感じさせる様なので俺たちはここから退きます。」

ヒッカが青年に背を向け、今まさに飛び立とうとしたところだった。

「待ってくれ!お願いだ!!」

「?」

「さっきはすまなかった。お前を信用するから話を聞いてくれ。」

「分かりました。それなら、みんなも一緒に良いですか?」

「構わない。お仲間にも上がってきてもらえるか?」

「ありがとう。俺、ヒッカって言います。」

「ヒッカか。俺はケビンだ。」

二人は握手を交わした。


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