39話 この先に今回の目標がいるの?
「そろそろか。ここからは歩いていくぞ。」
ジェイクの声を合図に各々荷物を持ち、馬車から降りた。
「空気が焦げている…?」
「お前もそう感じるか。俺たちの獲物は意外と近いかもしれない。各自、警戒を怠るなよ。」
ジェイクが発破をかける。まずはジェイクとラッフェルが先頭に並び歩き始めた。少し離れてヒッカ、その後にライクとフィリーが並ぶ。
「ねえヒッカくん。あそこって今日の魔獣がやったのかな?」
「あれは…?」
ヒッカはライクが指差す方向に目をやった。木が根元から薙ぎ倒されており、周囲には焦げ後もあった。
「かもしれないね。それにしても…すごい力だな。本当にホース種なのかな?」
ヒッカは前を行くジェイクに声をかけた。ヒッカとジェイクの見解は一致していた。
「俺、見てきましょうか?」
「だめだ。単独行動は危険だ。まだ近くにいるかもしれない。それに今回の相手は、お前に分が悪い可能性が高い。」
「…。」
「全員で行くぞ。離れるなよ。」
五人は周囲を警戒しながら、ライクの指し示した方向を向き歩き始めた。だんだんと近づくにつれ、少しずつその全貌が見えてきた。
「こいつは…。」
「まるで大きな巨人が歩いたみたいです。」
フィリーがそう表現するのも無理はない。倒壊している大木の裏には、何かに薙ぎ払われたように木が薙ぎ倒され、道ができてきた。
「この先に今回の目標がいるの?」
「だとしても、だ。これは…。」
「もしかしたらこの近くにいるのかも。まだ暖かい。」
当初の大木を調べていたヒッカが言う。ジェイクも剣に手をかけ周囲を警戒している。
不意にザザザーと風が吹く。
「…!」
ヒッカが風上の方に目を向ける。が、そこには何も見えなかった。
(…気のせいか?)
「このまま風上に向かって行くぞ。」
小声でそう告げるジェイクに、みなは目で合図した。誰しもが言葉を発せずに歩く。
それに真っ先気付いたのはヒッカだった。ほぼ同時にラッフェルも感じたようだ。ヒッカはジェイクの鞘をクイクイと引っ張る。驚いた表情で振り返るジェイクに、ヒッカはジェスチャーで伝える。
ジェイクがヒッカの示した方向に目を向ける。そこには大型のホース種が見える。動いていないところを見ると、こちらに気づいていないのか。
「アイツが今回の標的ですか?新種じゃなくて、ランドホースかブラックホースっぽい感じですね。」
小声で話すヒッカにジェイクも小声で返す。
「確かにそうだな。俺とラッフェルはこのまま気付かれないように接近するぞ。ヒッカはライクとフィリーを連れて三人で離れてついてきてくれ。そしていざとなったらヒッカは空から追跡してくれ。」
「…。」
コクリと頷くヒッカたち。
「了解っス!」
小声でも元気に答えたのはラッフェルだけだった。
ジェイクとラッフェルは身を屈めて近づく。
「アイツ動かないっスね。」
「…妙だな。」
「?」
「もう少し近づくぞ。それまでは何とも言えん。」
「っス!」
ホース種の全体が見えるほどに近づいた頃、ジェイクの違和感は確信に変わった。
「お前たちも来い!」
そう大声でヒッカたちに呼びかけた。
「これって…。」
「死んでいるだろうな。所々に焼けこげたような痕があることからも、コイツが標的の炎を扱うホース種のようだな。」
キン!と音を立ててジェイクは鞘に剣を仕舞う。
「え!?もう倒したんですか?」
「いや、俺たちが着いた時にはこの状態だった。死因は分からんが、外傷による衰弱か…。あるいは、何らかの理由で自身の炎を制御できなかった可能性がある。」
「そんなことあるんですか?それにコイツは恐らくランドホースです。炎を使うなんて聞いたことないです。それに仮に炎を使うとしても、自分の炎で自滅するとも考え辛い…。」
「…。」
「ともかく、コイツの魔力核を回収しますね。」
解体用のナイフで手早く魔力核を取り出すヒッカ。
「なんだこれ?ジェイクさん。コイツ殆ど魔力を使い切ってます。ほら。」
そうしてジェイクに魔力核を差し出すヒッカ。魔力核はくすんだ灰色をしており、ヒビも入っていた。
「何だ…これは…。」
ジェイクが魔力核を観察しようと日にかざした。
「ねえ、あれ…。」
「どうし…っ!」
ヒッカはすぐに臨戦態勢に入った!ライクが指差した方向には炎を纏うベアー種が見える。そして、そのベアー種はこちらを真っ直ぐに見つめている。
「お前たちは下がっていろ。」
すぐさまヒッカの前に立つジェイク。
「これもお前に預けておく。」
ジェイクから渡された魔力核をヒッカは荷物袋に入れた。
「ジェイクさん!俺も!」
ヒッカがジェイクに並ぼうとしたところを制される。
「落ち着け!来るまでに話したとおりのフォーメーションで行くぞ。それにお前はライクたちを守る役割もある。」
「…はい。すみません。」
「ラッフェル。お前は俺の後を…!」
ジェイクが言い終わる前にそのベアー種は火炎弾を打ち出してきた!
「!!」
バシュ!とジェイクが盾で軌道を逸らす。
「まずいな。本当に炎を使うだなんて。」
ジェイクの顔に焦りが見える。
「コイツは大物だ…!油断するなよっ!」
ヒッカたちに指示しながら追撃の火炎弾も軌道を逸らせる。
「頼んだぞ!」
ジェイクは突進してくるベアー種を迎え撃つ。だがすれ違い様の斬撃は、大したダメージにはならなかったようだ。身体中からたぎる炎が、まるでジェイクの魔力と打ち消しあう鎧のようになっている。加えて、分厚い毛皮が攻撃されることを阻んだ。
「ラッフェル!無理するな!行けると思った時だけ行け!ここでお前が倒れる訳にはいかないはずだ!」
「了解っス!」
ラッフェルも攻撃の機会を伺っているが、ベアー種とジェイクの攻撃の応酬の中に割って入れないでいる。
「いけ!【ファイアボール】」
ラッフェルが放った【ファイアボール】はベアー種の炎の壁に阻まれ、霧散した。ベアー種は【ファイアボール】に見向きもしなかった。
「ダメか。」
「私、やってみるよ!」
「私もです!」
ライクとフィリーが魔力を高め始めている。
「任せるよ!二人は魔法に集中して。俺が二人を守る!」
「「…。」」
二人の魔力がさらに高まる。
「ジェイクさん!こっちに誘導してください!とっておきのをぶちかましますから!」
「ああ!そうは言ってもっ…なっ!」
「グォオオオ!」
炎を纏った爪による攻撃の破壊力は凄まじかった。大木をまるで紙を切り裂くが如く薙ぎ倒して行く。
「…なんてヤツだ!」
「やあー!!」
ベアー種の真後ろからラッフェルが攻勢に出た。フレイムソードにかつてないほどの魔力を込め、思い切りよく振り下ろした。
ザス!と僅かだがベアー種に斬撃を加えた。赤黒い血が一瞬吹き出す。
「よっ!」
深追いせず素早く剣を抜き、後退するラッフェル。
「今だ!フィリー!ライク!」
その声を合図にジェイクも後退する。
「はい!」
高められたフィリーの魔力が水を呼び寄せ、ベアー種の頭上に大きな水玉を作った。
「【ウォーターボム】!」
ベアー種の全身を包み込むように大量の水がベアー種を襲う。
「続いて私ね!」
ライクも右手に集中させた魔力をベアー種に向けて振り抜いた!
「【ハイドロジャベリン】!」
巨大な水の槍がベアー種に深々と突き刺さる。
「ギャウ!」
悲痛な声をあげ、倒れ込むベアー種。
「よし!」「やったー!」「やりましたね。」
三人はとっさの連携攻撃に手応えを感じていた。
ここまでお目通しいただきありがとうございます!
ちょっとでもいいなと思ったら、ブックマーク登録や評価ポチっといただけると嬉しいです。
よろしくお願いいたします!




