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27話 この件、俺に明日の朝まで預からせてくれないか?

(ラッフェル自身はきっと正式に魔法を教わったことがないタイプなんだろう。)

ヒッカはそう分析している。ラッフェルは炎属性魔法を習得しているようだが、威力は低く牽制程度にしかならないものだ。

感覚で魔法を使えるようになっているのであろうフィリーの魔法を見て、恐らく我流で習得したのだろう。

(確かに牽制も一定の効果はあると思うが、分業して他の魔法使いが牽制した方が効果的になるのでは?)

まだある。それは自己強化魔法についてだ。ラッフェルの自己強化魔法にしても魔力圧縮比が低いのだろう。魔法発動時の魔力ロスや自己強化のムラっけが見られる。そのムラっけが魔力消費を抑えるなどの意図して行われているのならまだしも、単純に習熟の未熟さからくるものと思われる。

(ローグと一緒に特訓させるか?いや、ある程度の座学もいるよな…。となると、やはり短期集中で学ばせるか?だがそれには旅に連れて行くしかないか。となるとそれなりの実力がいる。)

そこまで行って、ヒッカは自分の考えがループしていることに気づいた。

(うーん。)

ヒッカは考えが出ないまま、天を仰いだ。そして、気付けばガルダスの家の前に来ていた。

(ガルダスなら何かいい意見くれるかもしれない。明日には発つんだから今日のうちに挨拶しておこうか。)



「よお。ヒッカ。どうしたんだ?改まって。」

ガルダスはいつもの調子でヒッカを家に招き入れた。

「それがさ。俺明日からしばらく旅に出るんだ。」

「いきなりだな。どこに行くんだ?」

「ここから東の方に向かって行く感じかな。母さんからお使いでヒルビルド山の方に行ってきたんだけど、そこですごい人に会ってね。その人の旅について行くことになった。」

「へえ。その人、すごい人?」

「ああ。すごい人だ。元聖騎士らしいんだけど、片手で剣をブンブン振り回すわ、高位クラスの魔法も使えるっぽいし。何なんだよあの人?って感じだよ。」

そうやってヒッカはガルダスに、ことの経緯を話した。


「なるほどなぁ。荒削りの若者を勉強させるために連れて行きたいが、そいつが実力が伴ってないと困るって話か?いや、俺たちも十分若者だぞ。」

「茶化すなよ。で、前半は合ってるが後半は少し違うかな。旅はいい経験だから連れてってあげたい。が、それには本人の能力が追いついていないような気がしててね。下手に怪我して冒険者生命に関わることになるかもしれない。最悪の場合はもっと酷いことも考えられる。」

それを聞いたガルダスは声をあげて笑った。

「ははっ。相変わらずの心配性だな。」

「それはそうだろう。ジェイクさんや俺だって常に周りを見て戦えるわけじゃない。本人は立派な冒険者になって、妹に良くしてやりたいみたいなんだ。けど、お金を稼ぐ方法は他にもあるだろ?」

「ヒッカ。お前の言うことは分かる。旅の道中が危険だってこともな。だがみんな、それを分かった上で付いてくるんだろ?だったら好きにさせてやればいいんじゃないか?それに、そいつが何かあってもそれは天命って奴だよ。」

「それは無責任じゃないか?」

「じゃあ逆に聞くけど、お前自身はどうなんだ?兄妹を離れ離れにさせても平気なのか?離れ離れになることで、妹の方が逆に危険になることだってあるだろ?」


確かにそうだ。それはヒッカも分かっている。だからこそ、自分がフィリーを守らなければと考えていた。と同時に、フィリーもラッフェルも守ることは現実問題厳しいとも理解している。それ故にラッフェルの自衛力を厳しく審査してしまった面があるのは事実だ。

「…。」

「…。」

「確かに否定はしない。けど。」

「けど?」

「俺では二人をまとめて守るのは難しい。それは分かってる。それだけにラッフェルには自分で戦える力を持ってて欲しいんだ。」

「うん。」

「だから…。つまり…。」

「俺はアリだと思うけどね。ヒッカの考え方。ヒッカの考え方は低リスクだと思う。逆にラッフェル?だっけ。そいつの考えはリスクが高い。」

「…。」

「けど、それは今見ただけの話だろ?そいつには光るものもあったんだろ?意外と化けるかもしれないぞ。」

「確かにな。」

「ま、俺が偉そうに言っても仕方ないけどさ。その元聖騎士の人にももう一度意見を聞いてみたらどうだ?」

「そうだな。ありがとうガルダス。」

「いいって事よ。俺とお前の仲じゃねぇか。」

そうしてヒッカとガルダスは笑い合った。

「じゃあ俺はそろそろ行くよ。」

「おう!元気に帰ってこいよ!俺だって負けてられねぇからな!」

二人は固い握手を交わした。



「どうしたヒッカ?」

ジェイクはぶっきらぼうに答えた。

「明日出発じゃないですか?その事でうちの家族がご馳走作ってるんでジェイクさんもどうかな?って思って来ました。」

「ご馳走か。確かにお前の家でいいもの食べさせてもらってるからな。だが本当にいいのか?」

「はい!祖父母と妹も来てるので紹介したいです。それにライクたちも待ってます。」

「これまた勢ぞろいだな。」

ジェイクは少し顔を綻ばせた。

「そう言えば旅に連れて行くのは誰にするんだ?」

ヒッカは少し目線を逸らしながら答えた。

「ライクとフィリーです。あの二人は俺たちの旅に必要な力を持っていると感じました。後衛二人は俺が中衛に入って護衛します。」

「そう来たか。だがラッフェル落選とは意外だったな。意外といいもの持ってると思ってたし、それに何より、アイツはお前に懐いてるしな。」

少し意外な顔つきでジェイクが答える。ヒッカは少し沈んだ表情で答えた。

「確かにラッフェルは光るものを持ってます。ただ、俺はそれ以上にラッフェルの危うさを感じました。ラッフェルにはもっと自衛力を持っていて欲しい。それが足りないと感じましたし、俺ではライクたちを守りながらラッフェルまでは手が回らないです。」

「そうか。お前はそう言う判断なのか。」

「…。」

こくりと頷くヒッカ。

「この件、俺に明日の朝まで預からせてくれないか?」

ジェイクが意外な提案をする。

「俺が奴と話してみる。出発まではまだ少し時間もあるしな。」

「ジェイクさんのパーティーですからね。そこはお任せします。」

「うむ。ではお前の家に向かうか。連れて行ってくれるか?」

(ジェイクさんは後半日で一体何をするんだろう?)

ヒッカはそう思いながらも【エアライド】でジェイクと共に家に向かった。ジェイクはまだ出会って数日の付き合いだ。口数もそんなに多い方ではない。だが、少なくとの発せられるその言葉に無策なことや悪意はない。そうヒッカは感じていた。

「…。」

不意にジェイクの横顔を見た。どこまでも真っ直ぐに前を見つめるジェイク。

「…?どうした?」

「あ、いえ。なんでもないです。」

ヒッカは咄嗟に答えた。何となく、重苦しい雰囲気を感じた。


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