23話 みんなの本気を見せてもらうよ
「ここが師匠の修行場所なんですか〜。」
「凄いですね。」
「うん。ヒッカくんはここで特訓してるの?」
「そうだね。基本、母さんと毎日。今日もしごかれたよ。」
「それは大変!お疲れ様。」
そんな会話を尻目にジェイクは少し離れた所に向かおうとしていた。
「ヒッカ。俺はあちらの方を借りる。」
「どうぞ。いってらっしゃい!」
手を上げてそれに応えるジェイク。
「さて、朝の続きをしようか。」
ライクたちに振り返るヒッカ。
「みんなの本気を見せてもらうよ。」
そう言って少し厳しい顔をしたヒッカ。
「朝も言ったけど、俺はジェイクさんの旅について行く。今回は近場でそんなに長期間ではないけど、危険な目に遭ったり魔獣との戦闘が予見される。活動資金集めのためにも複数の魔物を討伐しなければいけないかもしれない。」
ヒッカはゆっくりと構えをとった。
「だから、見せてもらうよ。一人ずつ俺に攻撃してきて。そこでの魔力の使い方や呪文の種類・精度から旅に連れて行けるかどうかを俺が決める。旅の間は自分の身は自分で守れそうと思ったら連れて行くよ。もしくはそれ以外にも『何か戦力として欲しい。』と言う風に思えたら、それはそれで同行をお願いしたい。」
「…。」
「…。今の言い方は少しキツイかもしれない。けど、道中どんなことがあるかも分からない。昨日だって俺とジェイクさんが来なければ君たちも危なかった。」
「それは…分かってるっス。」
「うん。なら始めようか。誰から来る?」
「俺っス!」
間髪入れずにラッフェルが答えた。
「俺は今はまだ自己強化と【ファイアボール】しか使えないっス。だけど、この剣で一流の冒険者になって見せるっス!」
「いいね。俺と同じだ。」
ヒッカも腰に帯刀している剣を引き抜いた。
「いつでも来い!」
「望むところっス!どぉりゃああああ!」
ガキン!と言う重い金属音が響いた。
(思い切りは良い。まだまだ身体強化のレベルは低そうだけど、それを補うだけの筋力や体力、身体操作の技術がある。)
キン!キン!と小君良い金属の打ち合う音が木霊する。ヒッカは魔法士ではあるが、父親から剣の手ほどきを受けているので一通りの技術は理解している。弟のローグとも稽古もしており、試合と言う形にはなるが剣の扱いの心得はあった。加えて母との魔法士の特訓もあり、ヒッカは魔力の使い方にも長けていた。ヒッカは自分でも知らないうちに、身体強化魔法は並の冒険者よりも高いレベルにまで研ぎ澄まされていた。
一方のラッフェルは筋力トレーニングで作った体に魔力でブーストすることを覚え始めたレベルだった。
(剣の使い方は上手そうだ。だけど魔力の使い方はまだなのかな?ムラが大きいし、込めている魔力は剣の表面を伝わせてるだけっぽい…なっ!)
ヒッカはラッフェルを剣で弾き飛ばして距離をとり、【ガストシュート】の構えをとった。
「行くよ。【ガストシュート】」
ヒッカは風魔法でラッフェルに攻撃を加えた。
「!!!」
ラッフェルは咄嗟に防御の構えをとったが、ヒッカの風魔法で思わず剣を吹っ飛ばされてしまった。
「っ!」
「どうする?まだ終わってないよ。」
「はい!」
走りながら剣を拾い上げ、再びヒッカに向かって行く。その目からは迷いは見られなかった。
「はっ!やっ!はっ!それっ!」
ラッフェルの性格と同じく、どこまでも真っ直ぐなその太刀筋を見切るのは容易だった。
「当たらなくても!まだ!!」
剣の勢いは止まることを知らない。一方のヒッカもまるでダンスを踊っているかのように躱し続けている。
「これでぇええーー!」
雄叫びと共に振り下ろされたラッフェルの剣をヒッカは真っ直ぐに受け止めた。
「なっ!」
ラッフェルが一瞬怯んだ隙にヒッカは風属性を左拳に纏い、ラッフェルの腹部を突いた。ラッフェルは何が起こったのかを理解できなかった。気づけばヒッカから数メートル離れた場所に仰向けに倒れていた。
「まだ!終われない!」
ラッフェルはまだ剣を握ったままだった。
(真正面からが無理なら…!)
ラッフェルも負けじと炎属性の魔力をたぎらせる。それは昨日よりも大きな闘気となってラッフェルを包み込んだ。それはヒッカも気づいた。
(纏う魔力は良くなってる。あとはどこまで来るんだ?)
ラッフェルは左手に剣を持ち替えた。そして右手には火の玉が浮かんでいる。
「【ファイアボール】!」
昨日よりも一回り大きな火炎玉がヒッカに向けられた。が…。
ヒッカはラッフェルの魔法を見ても動じなかった。それどころか、ヒッカが纏っていたローブで火炎玉を受け止めた。
「そうこなくっちゃ!」
ラッフェルは【ファイアボール】をさらに連発した。複数の火炎玉がヒッカに向かって行く。
「【ガストシュート】」
ヒッカも風魔法で応戦し、ラッフェルの火炎玉を全て撃ち落とした。
「まだかかる?」
ライクが待ちくたびれた表情でヒッカに尋ねた。無理もない。ヒッカとラッフェルの一騎打ちは悠に一時間経過していたのだ。
「そうだね。思ったより時間かけてたね。ごめん。ラッフェル。一旦交代だ。」
「俺はまだ…やれるっス!」
肩で息をするラッフェルが反論する。
「いや、まだライクとフィリーがいるしね。続きはその後だ。」
「はぁ。はぁ。了解っス!」
ラッフェルは大人しく引き下がり、剣を置いて座り込んだ。
「さて、次は誰が相手だい?」
「私が相手よ。ヒッカくん。」
「よし!来い!」
ヒッカは距離をとったうえで構えた。
「私はまだ水術士だけど、できるってとこを見せてあげるわ!」
「それは頼もしい。」
ライクの魔力が高まりを見せる。
(すごいな。実は魔法士クラスはあるのかもしれない。)
「行くわよ!【ハイドロジャベリン】」
打ち出された水槍をヒッカはあえてマントで受けた。バシュッと弾ける水槍。耐魔のマントの上からでも確かに伝わる衝撃。そして水魔法でありながらのこの威力。
一般的に水属性は防御・回復を得意とする属性だ。にも関わらず十分な攻撃力を持つライク。ライクがどのようにしてこの魔法を習得したのかは分からない。
だが、炎属性に対してカウンター足りうるこの魔法をヒッカはこれからの戦いに必要だろうと考えた。
「やるわね!ヒッカくん。これならどうかな?」
先ほどよりも二回りほど大きい水槍が生成される。
(…これは!)
「ええい!」
ライクから放たれたその水魔法はヒッカに真っ直ぐに向かってきた。
一瞬、避けるべきと考えたがヒッカは二発目も受け止めることを決めた。
マントを巻き込み体に固定し、魔力を一気に解放する!
ドッゴォ!と言う衝撃音と共にヒッカの体は宙に浮いた。
(ちゃんと構えてなかったら危なかったかも。)
着地しながらヒッカは思った。
「すごいね!今の受け止められちゃうなんて思ってなかった!」
ライクが賛辞の言葉を贈る。だがそれはヒッカも同じだった。
「俺も驚いたよ。まさか水属性でこんな攻撃力が出せるなんて。」
ヒッカはライクを正式にパーティーメンバーに加えることを決めた。
「ライク。君にこのパーティーに入ってもらいたい。ついてきてくれないか?」
「えっ?ってことは合格!?」
無言で頷くヒッカ。
「やったー!ついて行くからよろしく。炎属性の魔獣は私に任せてね。」
「ああ。任せるよ。俺の風魔法だと炎属性相手には分が悪いからね。」
風属性は炎属性に相性が悪い。一般的に炎属性に対抗するには無属性で力押しするかするか、炎属性より優位属性である水魔法をぶつけると言うものだった。
「では次は私の番ですね。」
フィリーが立ち上がった。
「私もライクさんと同じく水魔法を使います。よろしくお願いします。」
フィリーがペコっとお辞儀した。
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