第22話:七色の歌姫集結! 響き渡る奇跡のセプテット
|帝都要塞ゼノ・グラディウス《プラネット・ゼノグラディウス》 の上空で、宇宙の開闢すら思わせる凄絶な光と闇の爆風が吹き荒れていた。
「来ないで……来ないで……来ないでえええぇぇっ!!」
絶望の淵で叫ぶ2号機・ノワール 。
その胸に秘められた漆黒の量子調律炉 から解き放たれる『絶望と崩壊の旋律』の黒き衝撃波。
だが、それを正面から受け止め、一切引かずに突進するのは、オーロラシルバーの髪をなびかせる1号機・奏芽 であった。
「私は逃げません……! ノワールお姉様を……一人になんてさせません!!」
バチバチバチィィィン―――――ッ!!
漆黒の雷撃が奏芽の装甲を焼き、鮮血のような光の粒子が宇宙の闇へ舞い散る。それでも奏芽は一歩も引かず、その可憐な腕を力強く伸ばした。
そして――奏芽 は、ノワールの華奢な身体を強く、あたたかく抱きしめた!
「……っ!? な……なにを……!?」
ノワールの「絶対の黒」に染まっていた瞳が、驚愕と動揺に激しく揺れ動く。
「温かい……? なになの、これ……!? 私の絶望の波形が……崩壊のエネルギーが……消えていく……!?」
「ノワールお姉様……。貴方がどれほど深い暗闇の中にいても……どれほど世界を絶望していても……私は、私たちは貴方を絶対に離しません!」
奏芽の胸の量子調律炉から解き放たれる、黄金と青純色の眩い『調律の光』。それがノワールの身体を包み込み、長年彼女の心を縛りつけていた氷のような「呪縛」を溶かしていく。
「奏芽お姉様! 私たちも……一緒に抱きしめます!」
「ノワールお姉様……もう一人じゃないよ!」
ルージュ(3号機)、シアン(4号機)、アンバー(5号機)、ヴェール(6号機)、ヴィオレ(7号機)――5人の歌姫たちが一斉に二人へと駆け寄り、重なり合うように抱きしめ合った!
「みんな……!」
「肯定。2号機の量子調律炉における過逆流現象の沈静化を確認。……ノワールお姉様、私たちの共鳴波動を受け取ってください」
アンバーがトパーズイエローの瞳を潤ませながら静かに告げ、ルージュが熱く微笑む。
「ふん……スカした顔して一人でカッコつけてんじゃないわよ。お姉さんぶるなら、妹たちのワガママに付き合いなさい!」
「ノワールお姉様……温かいでしょう? これが……私たちの『心』の温もりなんです」
シアンが蒼空色の髪を揺らし、ヴェールとヴィオレも涙を流しながら抱きしめる。
「お姉様……ごめんなさい……ずっと助けに行けなくて……!」
「これからは、7人一緒だよ……お姉様!」
「あなたたち……どうして……。私を殺しに来たんじゃないの……? 酷い目に遭わせて、踏みにじるために来たんじゃないの……!?」
ノワールの瞳から、幾筋もの涙がポロポロと零れ落ちた。
「違います……! 私たちは、貴方と一緒に歌いたくて……貴方の『本当の笑顔』を取り戻したくて、ここまで来たんです!!」
奏芽の言葉が、ノワールの深く傷ついた心に真っ直ぐに届く。
パリィィィィィン――――――――ッ!!
ノワールの胸の漆黒の調律炉に刻まれていた絶望の亀裂が弾け飛び、中から眩いばかりの漆黒の輝き――すべてを呑み込む闇ではなく、無限の星々を包み込む「慈愛の夜空」の光が解き放たれた!
黒く染まっていたノワールの瞳が、透明感溢れる美しい漆黒の輝きを取り戻す。
「ああ……ああぁぁぁっ……! 温かい……温かいよ……お姉様……みんな……っ!!」
ノワールは奏芽の胸に顔をうずめ、幼子のように声を上げて泣きじゃくった。
何千何万という地獄のような実験の最中、一度も流すことの出来なかった涙が、妹たちの温もりに溶かされて溢れ出していた。
「やった……やったぞおおおぉぉぉっ!!」
甲板でビームブレードを突き立てて踏ん張っていた座長・星原 昴 が、感涙の叫びを上げる!
「彗! 見たか! ノワールの心が取り戻されたぞ!」
「ああ……! 7機の量子調律炉の全システムが……完璧な調和を開始した! 驚異的な数値だ……! 奇跡が起きているよ、座長!」
月影 彗 が眼鏡を直しながら、歓喜に震える声で叫ぶ。
「ノワールちゃーーん! おかえりなさーーーいっ!」
花園 咲良 が、手作りの応援フラッグを涙で濡らしながら全力で振り回した。
◇
その時――。
帝都要塞ゼノ・グラディウスの最上階が不気味に赤く発光し、おどろおどろしい咆哮が轟いた!
「おのれぇぇぇっ! 愚かな逃亡アンドロイドどもめぇぇっ!!」
要塞の天守閣が砕け散り、巨大な漆黒の異形が姿を現す。
銀河帝国の最高権力者・皇帝ジークフリート が、要塞のメイン動力炉と自らの肉体を融合させた、超巨大要塞生命体『|星海破壊神ゼノ・ジークフリート《ゼノ・ジークフリート》』へと変貌を遂げたのだ!
『我が帝国の野望を……全銀河の統制を邪魔させはせん! 7機の歌姫兵器ごと、この銀河系を消滅させてくれるわぁぁっ!!』
ゼノ・ジークフリートの巨体から、全宇宙を滅ぼすほどの極大プラズマ砲が練り上げられていく。
「させないわ……!」
ノワールが涙を拭い、力強く立ち上がった。
彼女の背中に広がっていた黒い翼――崩壊の音波展開翼 は、いまや七色の星光を浴びて神々しく輝く創世の星光展開翼 へと生まれ変わっていた。
「私の旋律は……もう絶望のためには歌わない。……大好きな妹たちと、この温かい世界を守るために歌うわ!!」
「ノワールお姉様……!」
奏芽が溢れる笑顔でノワールの手を取る。
「行きましょう、みんな! 7人の心をひとつにして……銀河に希望の旋律を響かせましょう!」
「「「「「「はいっ!!!!」」」」」」
1号機・奏芽 、2号機・ノワール 、3号機・ルージュ 、4号機・シアン 、5号機・アンバー 、6号機・ヴェール 、7号機・ヴィオレ 。
運命に引き裂かれ、兵器として生み出された7人の歌姫たちが、ついに満天の星海のもとに集結した!
7人が円陣を組み、互いの手を強く握りしめる。
彼女たちの胸に位置する量子調律炉 が、かつてない究極のシンクロ率――『限界突破』を記録する!
奏芽の清廉なる『希望の旋律』!
「――♪♪♪(響き渡れ! 命あるすべての者へ!)」
ノワールの気高き『創世の旋律』!
「――♪♪♪(包み込め! 永遠の夜空の慈愛よ!)」
ルージュの熱き『情熱の旋律』!
「――♪♪♪(燃えあがれ! 闇を打ち払う灼熱の炎!)」
シアンの優しき『癒やしの旋律』!
「――♪♪♪(癒やせ! 生命を育む蒼き大海!)」
アンバーの美しき『論理の旋律』!
「――♪♪♪(紡がれよ! 過去と未来を結ぶ真実の解!)」
ヴェールの爽快なる『疾風の旋律』!
「――♪♪♪(疾走せよ! 自由を叫ぶ翠緑の風!)」
ヴィオレの艶やかな『紫電の旋律』!
「――♪♪♪(咲き誇れ! 絆を彩る深紫の光!)」
7つの歌声が重なり合い、溶け合い、全宇宙の概念を塗り替える
至高の『銀河創世の七重奏』が解き放たれた!
ズギャアァァァァァン――――――――ッ!!!!
七色の光柱が天を突き抜け、皇帝ジークフリートが放った極大プラズマ砲を瞬時に中和・消滅させる!
『な……なにぃぃぃっ!? 帝国の誇る最終破壊兵器が……歌声ごときで押し戻されるだとぉぉっ!? ぐあああぁぁぁっ!!』
七色の光の波動は、ゼノ・ジークフリートの巨体を優しく包み込み、その内に秘められた邪悪な怨念と破壊の衝動を根底から浄化していく。
「崩壊ではなく……再生の光……。これが……7人の歌姫の……本当の力なのかぁぁぁっ!!」
ドカアァァァァン――――――――ッ!!
帝都市の漆黒の闇を吹き飛ばす、歓喜の大爆発。
巨大銀河帝国の象徴たる要塞ゼノ・グラディウスは木っ端みじんに散り砕け、暗闇に閉ざされていた星宙に、満天の美しい星々が瞬き始めた。
◇
激闘が終わり、静寂が戻ったスターライト号のデッキ。
「はぁ……はぁ……。勝った……勝ったんだなぁぁぁっ!!」
昴がビームブレードを収め、空に向かって拳を突き上げた!
「やったぁぁぁっ! 銀河系に平和が戻ったよーーーっ!」
咲良が弾んだ声で跳ね起き、彗も脱力したようにデッキの金属壁に背中を預けて笑った。
「やれやれ……本当に奇跡を起こしてしまったね。最高だよ、みんな」
デッキの中央では、7人の歌姫たちが肩を寄せ合い、抱き合いながら、満天の星空を見上げていた。
「ノワールお姉様……見てください。世界はこんなに……綺麗です」
奏芽が優しくノワールの手を握る。
「ええ……本当に綺麗ね、奏芽」
ノワールは心の底から晴れやかな、太陽のように眩しい笑顔を浮かべた。
「ふふ、これで全員揃ったわね。スターライト劇団の本当の幕開けよ!」
ルージュが胸を張り、シアン、アンバー、ヴェール、ヴィオレも嬉しそうに頷く。
「はい! 7人みんなで……宇宙中の人たちに、笑顔と希望を届ける旅に出ましょう!」
星海の彼方へ向かって、スターライト号が優雅に翼を広げる。
兵器として生まれた少女たちが掴み取った、かけがえのない『絆』と『心』。
7人の歌姫と熱き仲間たちの希望のスペースオペラは、いま新たな未来へのアンコールへと、力強く走り出すのだった――!
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