第21話:漆黒を切り裂く絆! 涙の破砕と奇跡の兆し
帝都要塞・ゼノグラディウス の直上で吹き荒れる、全宇宙の光を呑み込む漆黒の重力波。
銀河帝国の最高権力者・皇帝ジークフリート の根城たる漆黒の要塞の上空で、時空そのものが激しく悲鳴を上げていた。
「消えなさい……消えなさい……消えなさいっ!!」
夜の闇よりも深く、一切の生命の輝きを拒絶する「絶対の黒」の瞳。2号機・ノワール が放つ『絶望と崩壊の旋律』は、幾重にも重なる重力波の断層となって空間を削り取り、スターライト号の甲板を激しく打ち据えていた。
バチバチバチィィィン―――――ッ!!
「ぐあぁぁぁっ……あぁぁぁっ!!」
座長の 星原 昴 はビームブレードを前に突き立て、全身の筋肉を激しくきしませながら衝撃に耐えていたが、足元の金属甲板が耐えかねてひび割れ、鮮血を散らして膝をつく。
「座長っ! 戻ってください、これ以上は身体が分子レベルで崩壊します!」
メカニックの 月影 彗 が、激しい火花と煙を噴き上げるメインコンソールにしがみつきながら悲痛な叫びを上げた。
「ダメだ……! ここで引き下がったら……奏芽が……奏芽が一人になっちまうだろぉぉっ!!」
血を吐きながらも、昴は歯を食いしばり、必死に前を見据えた。
その視線の先では、オーロラシルバーの髪を激しく散らし、ドレスをズタズタに引き裂かれた奏芽 (1号機)が、激しい漆黒の雷撃を全身に浴びながらも、一歩、また一歩とノワールへ向かって歩みを進めていた。
「なぜ……諦めないの……!?」
ノワールの冷酷だった声に、微かな歪みと焦燥が混じり始める。
「あなたも……他の出来損ないたちも……理解しているはずよ! 私たちの内に秘められた量子調律炉 は、帝国が宇宙を統制し、生命を蹂躙するための殺戮兵器として作られた! 絆? 希望? 笑顔? そんな温かな幻想など、最初から私たちには与えられていなかったのよ!!」
ノワールが広げた漆黒の翼――崩壊の音波展開翼 から、さらに巨大な崩壊の光柱が放たれる!
「私は……地下の暗闇で知ったのよ! 何千何万という致死実験の最中、救いを求めて叫んでも、誰も……神すらも助けてはくれなかった! 世界そのものが悪意に満ちているなら、すべてをこの手で消し去るのが唯一の『救い』なのよ!!」
「いいえ……! いいえ、ノワールお姉様!!」
奏芽の可憐な唇から、吐血とともに叫びが迸った。
「貴方が暗闇の中で一人絶望していたとき……私たちがそばに居られなくて、ごめんなさい……! 貴方の悲鳴に……気づいてあげられなくて、本当にごめんなさい……!!」
奏芽の目から、大粒の黄金色の涙が溢れ出し、宇宙の闇へと弾けていく。
「でも……! でも、世界は悪意だけじゃない! 私を助けてくれた昴さんが……咲良様が……彗さんが……そして私を信じてくれた妹たちが教えてくれたんです! 人の心には……どんな暗闇をも照らし出す、温かい光があることを!!」
「戯言を……ッ!!」
ノワールが両手を振りかざし、最大出力の漆黒の衝撃波を解き放つ!
だが、その瞬間――奏芽の前に、5つの眩い光の壁が割り込んだ!
「そうは……させるかああぁぁっ!!」
真紅の髪を熱気でなびかせ、ルージュ (3号機)が背中のスラスターを限界突破させて跳躍! 灼熱の『熱線槍』で漆黒の雷撃を斜めに受け流す!
「ルージュお姉様! 私も……一緒です!」
シアン (4号機)が蒼空色の髪を大きく揺らし、広大な『蒼き防護障壁』を展開して衝撃を中和する!
「計算完了……! 1号機の生存確率を最大化するため、全エネルギーを防御に偏向!」
アンバー (5号機)がトパーズイエローの瞳を激しく明滅させ、無数のホログラムシールドを幾重にも展開!
「ノワールお姉様……! 私たちの本当の歌声を聴いてください!」
「冷たい暗闇なんて……私たちが吹き飛ばしてみせます!」
6号機・ヴェール と7号機・ヴィオレ も、胸の調律炉を全力で共鳴させ、翠緑と深紫の防護波を重ね合わせた!
「みんな……!」
奏芽が息を呑む。
「奏芽お姉様……一人で背負わないでください!」
ルージュがサファイアの瞳を燃え上がらせ、血の滲む唇でニッと笑った。
「ノワールがどれほどの絶望を背負っていようと関係ない! 私たちが……6人の歌姫の絆が、ノワールの絶望すらも抱きしめてやるんだ!」
「肯定。6機の調律炉の共鳴による理論出力……ノワールの崩壊エネルギーに拮抗、あるいは上回る可能性が存在します」
アンバーが力強く告げ、シアン、ヴェール、ヴィオレも固く頷いた。
「咲良も……咲良も応援するよーーーーっ!!」
甲板の安全な退避エリアから、花園 咲良 が手作りのフラッグを全力で振りかざす!
「ノワールちゃん! 咲良たちの船にはね、美味しいパフェも、温かいオムライスも、みんなの笑顔もいっぱいあるんだよ! 暗いところで一人で泣いてないで、咲良たちの家族になってよーーっ!!」
「咲良……」
昴がビームブレードを支えにして立ち上がり、満身創痍の身体でノワールを見据えた。
「聞いただろ、ノワール! これが俺たち『スターライト劇団』だ! 誰一人として見捨てない! お前がどれだけ世界を呪おうが、俺たちは何度でもお前を愛してやる!!」
「な……なにを……何を言っているの……!?」
ノワールの絶対の黒に染まっていた瞳が、激しく動揺に揺れた。
(温かい……? 家族……? この者たちは……なぜ、私に壊されそうになりながら……そんな目で私を見るの……!? なぜ……逃げないの……!?)
「ノワールお姉様……!」
5人の妹たちが切り開いた光の道を駆け抜け、奏芽がついにノワールの目の前へと躍り出た!
奏芽の胸に秘められた量子調律炉が、限界を超えた神々しいまでの光線――『希望の輝き』を全方位に放つ!
「歌いましょう……ノワールお姉様! 私たちと一緒に……銀河で一番温かい、希望の旋律を!!」
奏芽が両手を広げ、ノワールの華奢な身体を抱きしめるべく飛び込んだ!
「来ないで……来ないでえええぇぇっ!!」
ノワールが叫び、全エネルギーを集中させた極大の『絶望の咆哮』を放つ!
しかし、奏芽は退かない! 5人の歌姫の歌声が、昴の熱い叫びが、咲良の笑顔が、彗のサポートが、奏芽の背中を力強く押し続けていた!
「――♪♪♪(響け……世界を照らす調律の歌よ!)」
ドカアァァァァン――――――――ッ!!!
絶対の「暗黒」と、七色の「希望」が正面から激突し、帝都ゼノ・グラディウスの上空に、宇宙創世を思わせる超巨大な光と闇の爆発が巻き起こった!
光と闇の渦のなかで、ノワールの胸の漆黒の調律炉に、ついに一筋の「亀裂」が入る――。
失われた絆を取り戻し、7人の歌姫がひとつになる奇跡の瞬間は、すぐそこまで迫っていた!
最後までお読みいただきありがとうございました!
「面白かった」「続きが気になる!」と思っていただけたら、
下にある評価(★★★★★)やブックマーク登録をしていただけると、執筆の大きな励みになります!
感想や一言コメントもお待ちしております。




