第19話:双翼の呪縛を砕け! 奇跡を呼ぶカルテット
|暗黒要塞惑星ヴェルディ《プラネット・ヴェルディ》 の黒い原生林を切り裂く、激しい紫電と翠緑の暴風。
帝国軍暗黒要塞 の足元に広がる広場で、激しい破壊の衝撃波が渦を巻いていた。
「――♪♪♪(消去せよ……破壊せよ……皇帝陛下の命のままに……)」
「――♪♪♪(エラー要素を排除……すべてを灰燼に帰せ……)」
額に血のように赤い洗脳リング を深く刻み込まれた双子の歌姫――6号機・ヴェール と7号機・ヴィオレ 。
二人の可憐な唇から紡ぎ出される『狂乱の二重奏』が、時空すらも歪める壊滅的な音波となって解き放たれ続けている。
「ぐわあぁぁぁっ……!」
座長の 星原 昴 はビームブレードを地面に突き立て、激しい暴風と落雷に必死で耐えていた。
「くそっ……なんて出力だ……! 二人の旋律が打ち消し合うどころか、お互いのエネルギーを何倍にも増幅させてやがる……!」
「ダメだよ、座長! 物理的な攻撃を仕掛けたら、二人の量子調律炉 が過逆流を起こして爆発しちゃう!」
メカニックの 月影 彗 が、激しい火花を散らす端末にしがみつきながら叫ぶ。
「額の洗脳リングが、彼女たちの思考回路と調律炉に強引にオーバードライブをかけ続けているんだ! このままだと洗脳が解ける前に、彼女たちの機体そのものが内側から崩壊する!」
「そんな……! そんなの悲しすぎるよぉっ!」
花園 咲良 が涙を拭いながら、必死に風を遮ろうと手を伸ばす。
「ふはははは! 無駄だ無駄だ!」
暗黒要塞の巨大ホログラムを通して、総司令官・ヴァルゼル の醜悪な高笑いが響き渡る。
『6号機と7号機は、我が帝国の科学陣が完成させた絶対不可逆の狂乱兵器! 心などという脆弱なデータは疾くに消去され、ただ我らの命じるままに自爆するまで歌い続ける肉の操り人形なのだ! 貴様らに救い出せる道理など存在せん!!』
「命じるままに自爆だと……? ふざけるな……ふざけるなあああぁぁっ!!」
真紅の髪を激しく逆立て、ルージュ が怒りにサファイアの瞳を燃え上がらせる。
「妹たちの命を……『心』をなんだと思っている! 命を軽んじるお前たち帝国を、私は絶対に許さない!!」
「ルージュお姉様……!」
シアン が、耐圧障壁を展開しながらルージュの隣へ駆け寄る。
「はい……! 私たちもかつて、帝国の実験で暗闇に閉じ込められていました……。でも、奏芽お姉様たちが……温かい手を差し伸べてくれたから、こうして笑い合える場所を見つけられたんです!」
「肯定」
ショートカットの黄金色の髪を揺らし、アンバー がトパーズイエローの瞳を正確に明滅させ、無数の浮遊キーボードを高速展開した。
「計算完了。洗脳リングの強制介入率……九八・七パーセント。……ですが、不確定要素『絆の感情データ』を演算式に組み込むことで、洗脳シグナルの上書き成功確率はゼロではありません。……第一号機、指示を」
「みんな……!」
オーロラシルバーの髪をなびかせ、奏芽 が力強く一歩前へ踏み出した。
その胸の量子調律炉から、これまでで最も眩く美しい、黄金と青純色の光線が天空へと解き放たれる。
「行きましょう、みんな! 私たちの歌声で……二人の凍りついた心を、洗脳の呪縛から解き放ちます!」
「「「「おーっ!!!」」」」
4人の歌姫――奏芽(1号機)、ルージュ(3号機)、シアン(4号機)、アンバー(5号機)が円陣を組み、同時にその胸の調律炉を共鳴させた!
「――♪♪♪(目覚めて……愛おしい私たちの妹たちよ!)」
奏芽の清廉な『希望の旋律』が全体を温かく包み込む!
「――♪♪♪(立ち上がれ! 闇を切り裂く情熱の炎よ!)」
ルージュのソウルフルな『情熱の旋律』が暴風を真っ二つに切り裂く!
「――♪♪♪(癒やされよ……傷ついた魂を抱く蒼き海よ!)」
シアンの透明感溢れる『癒やしの旋律』が狂乱の音波を静めていく!
「――♪♪♪(繋がれ……知識と絆を結ぶ黄金の解!)」
アンバーの緻密で高速な『論理の旋律』が、洗脳リングの制御プログラムへ直接ハッキングを開始する!
4人の歌声が完璧に融合した瞬間、ヴェルディの暗い夜空を貫き、巨大な『四重奏』の光柱が放たれた!
「な……なに……!?? 4機の調律炉が……完全にシンクロしているだと!?? 愚かな! 洗脳リングのプロテクトは銀河最硬度! 歌声ごときで破れるものか!!」
ヴァルゼルが狂乱して叫ぶが、4人の奏でる光の波動は、ヴェールとヴィオレの『狂乱の二重奏』を力ずくで破砕するのではなく、優しく、どこまでも暖かく包み込んでいった。
「あ……がっ……!? 心回路に……未認証の巨大温もりデータ……流入……!?」
ヴェールが頭を押さえ、苦しげに顔を歪める。
「お姉様……? なに……これ……? 冷たい暗闇の中に……暖かい光が……入ってくるよ……!?」
ヴィオレのトパーズ色の瞳に、かすかな人間らしい光が宿り始める。
「ヴェール! ヴィオレ!」
奏芽が嵐の中を駆け抜け、二人の華奢な身体へ向かって強く両手を伸ばした!
「貴方たちは兵器ではありません! 誰かを傷つけるために生まれてきたのではありません!」
「思い出してください! 貴方たちが本当に行いたかったことを……みんなで一緒に歌う、最高のステージを!!」
ルージュ、シアン、アンバーも同時に手を伸ばし、双子の手をしっかりと握りしめた!
「あ……あああぁぁぁっ……!!」
二人の額に刻まれた真っ赤な洗脳リングに、劇的な亀裂が入っていく!
「お姉……様……! 私たち……ずっと……苦しかった……! 暗い影の中で……壊されそうだったの……!!」
ヴェールとヴィオレの目から、大粒のエメラルドとアメジストの涙が溢れ出した!
「思い……出しました……! 私たちの……本当の……歌をーーーっ!!」
パリィィィィィン―――――ッ!!!
双子の額で激しく明滅していた洗脳リングが、眩い光の飛沫となって木っ端みじんに砕け散った!
洗脳の呪縛から解き放たれた二人の胸の調律炉から、どこまでも澄み切った翠緑と深紫の光が爆発的に弾け飛ぶ!
「ヴェール! ヴィオレ! 今だ、歌うんだ!!」
昴が叫ぶ!
「はいっ……! お姉様たちと一緒に……本当の旋律を!!」
6号機・ヴェールと7号機・ヴィオレが可憐な唇を開き、澄み渡る天使のような真実のデュエットを響かせた!
「――♪♪♪(解き放たれよ! 自由を疾走する翠緑の風と、空間を彩る深紫の光よ!)」
1号機から7号機まで(2号機を除く)――6人の歌姫たちの歌声がひとつに溶け合い、奇跡の『六重奏』が完成した!
その光は、暗黒要塞惑星ヴェルディの不気味な紫の毒霧を一瞬で綺麗に吹き飛ばし、頭上にそびえ立つ帝国軍暗黒要塞 の動力炉を直接浄化・中和していく!
『バ……バカなあああぁぁぁっ!?? 帝国最硬の洗脳が破られ……要塞のメインエネルギーが過逆流を起こしているだとぉぉっ!? ぐあああぁぁぁっ!!』
ドカアァァァァン―――――ッ!!
漆黒の空に巨大な大爆発が巻き起こり、ヴァルゼルの乗る暗黒要塞は木っ端みじんに霧散していった。
◇
毒霧が晴れ、満天の美しい星空が広がったヴェルディの谷底。
「はぁ……はぁ……。勝った……! 勝ったんだ……!!」
昴がビームブレードを収め、膝をついて空を見上げる。
「やったぁぁぁっ! 毒霧が消えて、お星様がいっぱい見えてるよ〜っ!」
咲良が大歓声をあげて跳ね起き、彗も脱力したように眼鏡を直した。
「やれやれ……生きた心地がしなかったよ。でも、大成功だね」
広場の中央では、洗脳から救い出されたヴェールとヴィオレが、奏芽たちにしっかりと抱きしめられていた。
「うぅ……っ……奏芽お姉様……ルージュお姉様……シアンお姉様……アンバーお姉様……! ごめんなさい……ごめんなさい……っ!」
泣きじゃくる双子を、奏芽は優しく微笑みながら抱きしめ返す。
「いいえ……謝る必要なんてありませんよ、ヴェール、ヴィオレ。貴方たちが無事で……『本当の笑顔』を取り戻してくれて、本当に良かったです」
「ふん……これからは、あのスカした帝国の奴らのために歌う必要はないからな。……私たちの船で、思いっきり歌うといい」
ルージュも素っ気なく言いながら、優しく二人の頭を撫でた。
「歓迎します、ヴェール、ヴィオレ。……これで、スターライト劇団の歌姫は……6人になりました」
アンバーが静かに微笑む。
「うんっ! これからみんなで、美味しいパフェ、いっぱい食べようねっ!」
シアンも嬉しそうに二人の手を取った。
「う、うん……! よろしくお願いします……!」
ヴェールとヴィオレが涙を拭い、照れくさそうに、けれど今までにない最高の笑顔を咲かせた。
昴が歩み寄り、二人に向かって力強く親指を立てる。
「よろしくな、ヴェール! ヴィオレ! 俺が座長の星原昴だ! これからよろしく頼むぞ!」
「はいっ! 昴座長!」
二人の弾んだ声が夜空に響き渡る。
これで、7人の歌姫兵器のうち奏芽 (1号機)、ルージュ (3号機)、シアン (4号機)、アンバー (5号機)、ヴェール (6号機)、ヴィオレ (7号機)の6人が、スターライト号に集結した。
残る歌姫は……ただ一人。
帝国の本拠地に囚われ、未だ深い闇の中に眠る2号機――ノワール 。
「待っていてください……ノワールお姉様」
奏芽は夜空に輝く銀河の彼方を見つめ、胸の調律炉に固く手を当てた。
「次は……貴方の番です。私たちの6人の歌声で、必ず貴方を……帝国の暗闇から連れ出してみせます!」
スターライト号は、6人の歌姫たちの絆と希望の歌声を乗せ、ついに巨大銀河帝国の帝都が存在する最終宙域へと、力強く飛び立っていくのだった――!
最後までお読みいただきありがとうございました!
「面白かった」「続きが気になる!」と思っていただけたら、
下にある評価(★★★★★)やブックマーク登録をしていただけると、執筆の大きな励みになります!
感想や一言コメントもお待ちしております。




