64話
オルネアと玲央は階段に腰を下ろし、伊織は扉の近くに座っていた。
痺れを切らした伊織が口を開いた。
「いつまで待つんだ?」
「もう少しだけ待ってください」
玲央が答える。
「もう一時間くらい経つけど」
オルネアと玲央は顔を見合わせた。
二人ともこのまま待つべきなのか、それとも先へ進むべきなのか、どうしていいのか決められずにいた。
その時、地面がカタカタと小刻みに揺れ小石が落ちてくる。
玲央とオルネアは同時に立ち上がり、階段の上を見上げた。
不安な面持ちで見上げていると、微かに階段を下りてくる足音が聞こえた。
「悠!」
「湊!」
二人が声を上げる。
その声に橘と湊が反応した。
二人は階段を一段ずつ降りずに能力を使ってピョンピョンと身軽に階下まで降りてくる。
「玲央!」
「オルン!」
互いの姿を確認した瞬間、橘と湊はそれぞれのパートナーを強く抱きしめた。
橘は玲央の頬を両手で包み込む。
「怪我はないか?」
「大丈夫だよ」
「良かった……無事で」
橘は安心したように息を吐いた。
その隣では湊もオルネアを強く抱きしめていた。
「オルンごめん。怖い思いさせて」
「ううん。来てくれてありがとう……」
オルネアの瞳には安堵から涙が滲んでいた。
あとから黒川たちも階段を下りてきた。
黒川は扉の前に座っている伊織に気づき足を止める。
「君はエスパーか?」
伊織は立ち上がり黒川に頭を下げた。
「お疲れ様です。管理局所属エスパーの伊織大和です」
「他の仲間はどうした?」
「彼らは魔物に襲われて……そのあとバラバラになったので詳しくは分からないです。俺も意識が薄れそうになったところを彼女たちに助けてもらったんです」
伊織が説明する。
「そうか……」
「あの……迷惑じゃなければ同行させてもらえないですか?」
黒川はじっと伊織を観察していた。
「分かった」
「ありがとうございます!」
伊織が頭を下げた。
話してる様子をみて、オルネアが声をかけた。
「あの……黒川さん」
黒川がオルネアへ目を向ける。
「皆、体調が悪そうなのでガイディングさせてください」
「そうだな。頼む」
オルネアはすぐにサーシャとレイのもとへ向かい、ガイディングを始める。
玲央も橘と神崎のガイディングを始めた。
サーシャとレイのガイディングが終わり、オルネアは湊とヒロに声をかける。
「二人はいいの?」
「俺はまだいい」
ヒロが答える。
「オルンが大変になっちゃうから俺もまだいいよ」
湊もそう答えた。
「平気なのに……」
オルネアは心配そうに二人と話していた。
玲央は橘と神崎のガイディングを終えると黒川のもとへ近づいていく。
「黒川さん、身体大丈夫ですか?……限界近いですよね」
「……ああ」
黒川は自分の状態を確認するように僅かに息を吐いた。
「俺では少ししかガイディングできないかもしれませんがやらせてください」
「悪いな。よろしく頼む」
黒川は玲央へ手を差し出した。
玲央がガイディングを始めると、黒川は玲央に負担をかけないよう調整していた。
玲央の力ではすべてを浄化することはできない。
だからこそ、無理をさせないように少量ずつ毒素を流していく。
しばらくして黒川はゆっくりと息を吐いた。
「ありがとう。少し楽になったよ」
「すみません……俺では力不足で……」
玲央が申し訳なさそうにする。
「ガイディングしてもらえるだけで助かるよ」
黒川はそう言うと、玲央の頭をぽんっと優しく撫でた。
玲央は少し驚いたように顔を上げ、それから小さく笑顔を見せた。
皆の体調が整ったところで伊織が声をかける。
「どうしますか? あと二人、待ちますか?」
「……いや。我々はこれで全員だ」
黒川が答える。
「そうですか……。それなら扉を開けてみますか?」
黒川は目の前にある大きな扉を見上げた。
「入ろう」
一行は扉の前に立ち、ゆっくりと扉を開けた。
大きな石造りの扉は重く、ヒロ、レイ、神崎、伊織の四人が力を合わせて押し開ける。
扉を開くと黒川が先頭に立ち、ゆっくりと中へ入っていく。
「神殿?」
中はまるで古い神殿のような造りになっていた。
高い天井に広々とした石造りの空間。
一行は周囲を警戒しながら、次々と中へ入っていく。
そして最後の一人が中へ入った瞬間。
ゴゴゴゴゴ……。
大きな音を立てて、扉がゆっくりと閉まっていく。
「……!」
オルネアたちは一斉に振り返る。
完全に閉ざされた扉をただ見つめるしかなかった。




