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波の音が消える前に  作者: 音香(Otoca )


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59話

オルネアと玲央は手首につけたライトを頼りに洞窟の中を進んでいた。


「こっちで合ってたのかな?」


オルネアが不安そうに呟く。


「どうですかね。俺たちにもエスパーの力があればよかったですね……」


「ほんとだよね。あっ、そうだ」


オルネアは空間ポーチからナイフを取り出すと、太ももに装着した。


「アランに貰っといてよかった!」


「俺も付けときます」


玲央もナイフを取り出し足に装着する。


二人が再び歩き出すと、突然目の前に白い雲のような魔物が現れた。


「なにこれ!?」


「気をつけてください!この雲みたいなやつは、触ると毒で皮膚がただれます。オルネアさんはこいつの動きを見ててください」


「わかった!」


玲央は急いで辺りを見回す。


すると、近くに木の棒が落ちているのを見つけた。


玲央はそれを拾い、空間ポーチからアルコールを取り出して木の棒にかける。


その後、ライターで火をつけると魔物へ向かって投げた。


「行きましょう!」


玲央がオルネアの手を引き、魔物の横を通り過ぎる。


魔物は火に焼かれると、白い煙となって消えていった。


「さっきのあれ、全然動かなかったね」


「はい。あれは他の魔物と違って、ほとんど動かないんです。でも知らずに触ったりすると、肌がただれて悲惨な状態になるんです。あと近くに寄ると胞子を吐き出したりするので燃やさないと危険なんです」


「よく知ってるね……」


オルネアが感心したように言う。


「悠にいろいろ教えてもらったので」


「そうなんだ。橘さんとは長いの?」


「パートナーになったのは8年前くらいです。兄のような、恋人のような……不思議な関係です」


「不思議って?」


「うーん。一緒に暮らしてるし、精神的なパートナーでもあるんですけど、お互いに恋愛対象は女性なので、粘膜ガイディングはしないって感じです」


「そうなの?てっきり付き合ってるんだと思ってた」


「よく言われます。お互いに、ちょうどいい距離感なんです」


二人は歩きながら、お互いのパートナーについていろいろと話をした。


しかし、どれだけ歩いても洞窟の終わりは見えてこない。


「疲れたね……」


「この辺で休憩しましょう」


二人は壁にもたれかかり、その場に座った。


「もう足が棒だよ……」


オルネアが疲れた様子で呟いた。


「結構歩きましたね。ずっと薄暗いので時計がなかったら時間の感覚もなくなりそうですね」


「早く見つけてくれないかな……」


オルネアがぼそっと呟いた。


「大丈夫です! 必ず合流できますよ!」


玲央が励ますように声をかける。


「今は疲れと不安で弱気になってるだけです。少し眠っていいですよ。俺、起きてますんで」


「玲央くんだって疲れてるのに……」


「エスパーの皆さんとは比べ物にならないですけど、一応男なんで。俺の方が体力ありますから」


「ごめんね。ありがとう」


オルネアは優しく声をかけると、目を瞑った。


疲れのせいですぐに眠りへ落ちていく。


玲央はオルネアが眠ったのを確認すると、空間ポーチからひざかけを取り出し、そっとオルネアに掛けた。


玲央もまた、内心では不安でいっぱいだった。


このまま皆と会えなかったら。


食料や水が尽きたらどうしよう。


もし強い魔物に襲われたら、自分たちではまず助からないだろう。


そんな不安が次々と頭をよぎる。


それでも玲央はオルネアを起こさないよう静かに座り、薄暗い洞窟の中でぼんやりと前を見つめていた。



ーーーー


一花とクロは洞窟の中を歩き続けていた。


しばらく進んだところで道が行き止まりになった。


「行き止まり……」


一花は辺りをライトで照らしてみる。


「えっ……道ないよ……」


『上だな』


クロは崖を見上げていた。


ゴツゴツした岩肌の上部に穴が空いてるのが見えた。


「ここ登るの?無理だよ……」


『それ以外に道はないぞ』


「こんなの落ちたら死んじゃうじゃん」


穴の位置は建物だと二、三階くらいの高さだった。


一花は散々迷った挙げ句、仕方なく目の前の崖を登ることにした。


「怖い……」


『下を見るな。頑張れあと少しだぞ』


一花の弱音にクロが励ます。


崖を登りきった一花が息を切らしながら腕をさする。


「はぁ……腕が限界……」


『大した高さじゃないだろう』


「クロは軽々登ってるからそうかもしれないけど、人間は違うの! 事務所のジムで鍛えとけばよかった……」


『そんな過去のことばかり言っても意味ないだろ。先を急ぐぞ』


クロは尻尾を揺らしながら、さっさと先へ歩いていく。


「待ってよ、クロ……」


一花は慌ててクロの後を追った。


その後も頑張って歩き続けていたが、とうとう一花の体力も限界に近づいていた。


「少し休ませて……」


そう言うと、一花は壁にもたれかかって座り込む。


空間ポーチから水を取り出し、一気に半分以上を飲んだ。


「クロも飲む?」


一花はペットボトルの蓋に水を入れようとすると、クロが口を開け上を向いた。


「このまま口に水入れるの?」


『今は二人しかいないんだからいいだろ。早くしろ』


一花は戸惑いながら、クロの口へゆっくりと水を流し込む。


クロはゴクッと音を立てて水を飲んだ。


一花はオルネアたちが作ってくれたサンドイッチを取り出して食べ始めた。


少し硬めのパンにハムと野菜、チーズが挟んである。


「美味しかった」


空腹を満たすように食べ終えると、新しいペットボトルを開けて水を飲んだ。


フーっと息を吐き目の前の壁を眺めた。


少し休んだ後、一花は再び立ち上がった。


「早く合流しないとね」


「ニャー」


クロが鳴く。


「この道、どこまで続いてるんだろう。さっきより狭くなってるし……」


先へ進むほど、道幅は徐々に狭くなっていた。


二人がしばらく歩いていると、やがて三叉路にぶつかった。


「どっちに行けばいいんだろう……」


一花は困ってクロへ目を向ける。


しかし、クロは尻尾を揺らしているだけで、どの道へ進むべきか教えてはくれなかった。


「うーん……」


一つは一花の歩いてきた道。


残る二つに分かれた道を見つめる。


どっちの道を選べばいいのか決められず、途方に暮れていた。

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