58話
エスパーたちはサーシャを先頭に歩いていた。
「大丈夫か?」
黒川が顔色の悪いサーシャを気にして声をかける。
「大丈夫です。ガイドたちを探さないと」
サーシャは前を向いて歩き続けた。
その後ろを歩いていたレイは、片手で目元を覆い、こめかみを押さえていた。
それに気づいたヒロが声をかける。
「おい、どうした?」
「さっきから頭が痛いというか……重いんだよな」
「珍しいな」
「なんか……忘れちゃいけないものがあった気がして……」
「なんだよ、それ。さっき力吸われておかしくなったか?」
「そんなんじゃねーよ」
二人の会話を聞いていたアランも、自身の中にある違和感に気づき始めていた。
何か大切なものを忘れている。
そんな感覚が胸の奥で渦巻いていた。
しばらく森の中を歩くと、岩の洞窟が地下へ向かって大きく口を開けているのが見えてきた。
「ここです。この入口までは追えたのですが、先が感じ取れません」
「珍しいな。サーシャが追えないなんて」
アランが洞窟を見つめながら言う。
「早くオルンを見つけないと」
湊はオルネアのことが心配で焦りを隠せずにいた。
橘も落ち着いているように見えるが、内心では不安でいっぱいだった。
一行が洞窟へ入った、その時。
突然、地面がガタガタと揺れ始めた。
足元が大きく揺れ、洞窟の壁や天井から細かな石が落ちてくる。
「危ない!」
橘が咄嗟に声を上げる。
大きな岩が落下してきた。
橘はすぐに防御膜を張り、湊と神崎を包み込む。
次の瞬間、洞窟の入口付近で突如爆発が起こった。
轟音が響き渡り、土煙が一気に舞い上がる。
爆発によって岩が崩れ、入口が塞がれた。
「皆、大丈夫か!」
黒川が声をかける。
橘の防御膜によって守られていた湊と神崎は無事だった。
「橘さん、ありがとうございます」
神崎が礼を言う。
「あっぶねー。助かったよ」
湊も安堵したように息を吐く。
「いいえ。間に合ってよかったです」
その一方、爆発で揺れた際にレイは飛んできた石に頭をぶつけていた。
頭を押さえ、その場にしゃがみ込む。
普段のレイなら避けられないことなどないのに、先ほどから続いていた頭痛によって判断が鈍っていた。
そんなレイを見たヒロが咄嗟に腕を取り、安全な場所へ瞬間移動させた。
「大丈夫か?」
「……」
しかし、レイは一点を見つめたまま動かない。
「レイ!しっかりしろ!」
ヒロがもう一度強く呼びかける。
「……思い出した……」
レイが小さく呟く。
「忘れちゃいけないもの……」
「はぁ? 今それかよ」
ヒロは呆れたように言う。
爆発時、サーシャも黒川に助けられていた。
「危ない!」
黒川が咄嗟にサーシャを引き寄せ、瞬間移動で避けた。
「怪我はないか?」
「はい。ありがとうございます」
黒川は辺りを見回した。
「皆、無事か?」
その声に、皆が集まってくる。
「レイ、大丈夫か?」
額から血を流していたレイに黒川が声をかける。
「ちょっと当たって切れただけなんで、大丈夫です」
「頭を打ってるんだ。無理はするな」
「はい」
その時、ヒロが辺りを見回した。
「あれ? アランさんは?」
「アラン!」
黒川が大声で呼んでみる。
しかし、返事はなかった。
「爆発に巻き込まれたんでしょうか……」
神崎が心配そうに入口へ目を向ける。
「あいつがそんなことあるわけない」
黒川が静かに答える。
「ですね。アランさんなら大丈夫だと思います」
ヒロも頷いた。
「また一人消えたな。なるべく離れないように行動しよう」
黒川が皆に声をかけ、先を目指して歩き出した。
レイはサーシャの隣に並んだ。
「大丈夫ですか?」
サーシャも心配そうに声をかける。
「ああ。なあ、サーシャ」
「どうしました?」
「なんでサーシャは、かからなかったんだ?」
サーシャは驚いたようにレイへ目を向けると二人の視線が重なった。
「……思い出したんですか?」
サーシャが小声で尋ねる。
「さっき頭を打った時に」
「そうなんですね。おそらくですが……私の能力と似てるのでかからなかったんだと思います」
「そうか……」
レイは小さく呟く。
胸の奥を締め付けられるような思いを抱えていた。
また一花に辛い思いをさせてしまった。
酷いことを言い、冷たい態度をとった。
その事実を思い出し、レイは後悔の気持ちでいっぱいだった。
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その頃、アランは一人暗闇の中に立っていた。
爆発が起きた瞬間、咄嗟に砂煙から目を守るように目を閉じた。
やがてゆっくり目を開けると、辺りは暗闇に包まれていた。
「黒川! ヒロ!」
声を上げてみるが返事はなかった。
アランは腕につけているライトを点け、辺りを見回した。
そこには誰の姿もなく、人の気配すら感じられなかった。
「今度は俺が一人か……」
アランは周囲を見渡した。
ここがどこなのか、どちらへ進めばいいのかも分からない。
少し考えたあと、目を閉じた。
僅かな風の流れを探る。
「こっちか……」
微かに感じる風の方へ進むことにする。
暗闇の中、アランは一人静かに歩き始めた。




