表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
双面人生  作者: 名のないりんご
第二章 百鬼乱都編
PR
35/39

第34話 舞台の幕開け

祭りの最終日の夜。


ドリームメイトはビルのワンフロアを貸し切り、久しぶりに全員の声で満ちていた。


普段は各自が別々に動いているため、幹部全員が顔を揃えることは滅多にない。それだけで、空気が違った。


「というわけで、不良グループを壊滅させたと」


「たいしたことじゃねぇ。好き勝手してたから社会を教えてやっただけよ」


ジャックが酒を傾けながら笑った。


「祭りも楽しいけど、やっぱゲームの方がいいね」


ネロがコントローラーを操作しながら言う。膝の上には大量の菓子が積み上げられていた。


「今回はゆっくり羽を伸ばしたいのう」


リヴェルダが湯呑みを両手で包みながら静かに言った。


「主君も……モッモッ…ニ課の課長殿と共に戦えば、負け無しじゃ無いか? はむっ…」


「メリッサと組んだら頼もしいわね」


「いや、あの女は信用ならん」


ポーカーが静かに言い切った。


「まだ隠していることがある違いない」


「相変わらず辛口だね」


ネロが苦笑しながらコントローラーを動かす。


アルカナはソファの端で珈琲を飲みながら、その光景を眺めていた。


久しぶりに、全員が笑っている。


それだけで、十分だと思った。


「ん? あれ、おかしいな」


突然ネロの手が止まった。


「画面が……」


コントローラーを置いて、テレビを見つめる。


ゲームの画面が消えていた。


代わりに映し出されたのは、薄暗い和室の部屋で座っている見覚えのある男だった。


金色の着物。張り付いたような笑顔。


「……コイツは」


アルカナの声が、低くなった。


__________________


同じ瞬間、神京市の至る所で同じ映像が流れ始めた。


城下町の大通りに立ち並ぶビルの電光掲示板が、一斉に切り替わる。祭りの広告が消え、帝の顔が夜の街を照らした。


電車の中の小さな画面。

屋台で賑わう人々のスマートフォン。

居酒屋のテレビ。

コンビニの店内モニター。


神京市中の全ての画面に、同じ男が映っていた。


人々が足を止め、画面を見上げる。祭りの喧騒が、少しずつ静まっていった。


『ハハハッ』


帝は高らかに笑った。


『神京市の民よ、祭りを楽しんでおるか。朕もこの一週間、存分に楽しませてもらったぞ』


陽気な声だった。だが、その笑顔の奥に何かが潜んでいる。


『さて、ここで朕から知らせがある』


帝は一度だけ間を置いた。


『今夜から、この神京市は祭の舞台となる』


静寂が、街全体を包んだ。


『この祭りには四つの陣営に分ける。警察、ドリームメイト、朕の陣営、そして下市民。それぞれの陣営には代表を決めた。警察の代表は零位『メリッサ・フォート』、ドリームメイトの代表は零位『アルカナ』、朕の陣営の代表は、もちろん零位『帝』、朕である」


帝は指を一本立てた。


『ルールは簡単。その陣営の代表を倒せば、その陣営は脱落。最後まで残った陣営には、何でも一つ願いを叶えることができる』


『ただし、市民陣営には代表は無い。その代わり、朕が神京市に放った薬を飲んだ者は「魔式」が目覚める。その者たちは各陣営の代表を狙ってくるじゃろう』


帝はそこで、ふっと笑みを深めた。


『警察は「街」を守るために戦うがよい。ドリームメイトは「止める」ために動くがよい。市民は「己の願い」のために戦うがよい。そして朕は――』


一瞬だけ、笑顔が消えた。


『この街に、歴史に残る「災害」のために戦うとしよう。北に三ヶ所、南に三ヶ所我が部下を配置している。倒したければ来るが良い』


『では、百鬼の乱開幕である』


放送が、切れた。


__________________


特殊二課と三課が合流したオフィスに、沈黙が落ちていた。


鶴吉は腕を組んだまま、消えた画面を見つめていた。


「……想定より早かったな」


「どう動きますか」


瓜山が静かに問う。


「決まっておる」


メリッサはソファから立ち上がり、コートを羽織った。


「やるしかないよ。私達はね」


その声は、いつもより甲高かった。声変わりの薬がまだ残っているらしい。


メンバー全員が小さく吹き出した。


「……笑わないでくれぇ」


__________________


幹部たちが静かにアルカナを見ていた。


「どうする、ボス」


ジャックが問う。


アルカナはテレビの消えた画面を見つめたまま、静かに立ち上がった。


「決まってる」


コートを手に取り、幹部たちを見渡した。


ポーカーだけは、すでに銃弾を装填している。そしてアルカナに無言の合図を送った。


「ドリームメイトとして、とは行かないかもな。だが、帝の好きにはさせない」


誰も反論しなかった。


夜の神京市に、新たな戦いの幕が上がった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ