第23話 黒い狂犬
ジャックとゴンザの戦いは、激烈だった。
ゴンザの巨腕が振り下ろされるたびに、地面が抉れ、粉塵が舞い上がった。
「ガハハッ! どうした? 避けてばかりじゃないか!!」
「うるせぇ野郎だ」
ジャックは表情を変えず、ゴンザの拳の真横をすり抜けた。
そのまま腹に渾身の拳を叩き込む。拳の威力は細い体からは考えられないほどの威力だった。
「ごぶっ……!」
巨体が、僅かによろめいた。
「中々硬いな」
「ガハハッ! 効かん効かん! 俺の身体はテラー様に改造してもらったんだ! 生半可な攻撃じゃ効いたうちに入らん!!」
ジャックは拳を解き、ゴンザを見上げた。
「改造、か」
「そうだ! お前らみたいな半端者とは違う! 俺は選ばれた存在だ!!」
「選ばれた、ね」
ジャックは首を鳴らした。
「お前、自分で強くなったわけじゃないのか」
「あぁ? なんだと」
「他人に改造してもらって、それで強いと思ってるのか」
ゴンザの目に、怒りが灯った。
「……舐めた口を叩くな!!」
巨腕が連続して振り下ろされる。
左、右、また左。ジャックは紙一重で躱しながら、反撃の拳をゴンザの脇腹に叩き込み続けた。
だが、ゴンザは倒れない。
「ガハハッ! どうした!? さっきから同じ攻撃ばかりじゃないか! もう限界か!!」
ゴンザの拳がジャックの腹を捉えた。
吹き飛び、壁に激突する。
壁にヒビが入り、ジャックは膝をついた。
「……黒い犬!」
後方で戦闘を見ていたミナが思わず声を上げる。
ジャックはゆっくりと立ち上がり、口元の血を拭った。
「……ちっ、誰が黒犬だ。そんなたいそうなことで話もねぇのに」
「もう終わりか?」
「終わり?」
ジャックはゴンザに向き直り、口から血をプッと吐く。
「いい拳くれたお礼にちょっとだけ見せてやるよ」
空気が変わった。
ジャックの全身から、異質な魔素が滲み出し始めた。
抑えていた何かが、解放されていくような感覚。
「本物の獣を」
ゴンザの愉悦が、恐怖に変わった瞬間だった。
__________________
その瞬間を、ミナは息を呑んで見ていた。
ジャックから放たれる魔素が、ゴンザのそれとは比べ物にならない密度で膨れ上がっていく。
「……なんだ、あれ」
改造で力を得たゴンザの魔素が、ジャックの魔素の前で揺らいでいた。
「ハ……ハハッ……! 面白い……!!」
ゴンザは笑う。だが、その目に一瞬だけ、確かな動揺が宿っていた。
ジャックは静かに拳を構え直した。
夜風が止んだ。
「いくぜ、魔式「狂戦士」(バーサーカー)」




